96 / 236
suggestio veri, suggestio falsi
duodecim
しおりを挟む
少し怖いような表情で自分を見つめる斎に、天弥は小首を傾げながら声をかけた。
「悪い、少し考え事をしていた」
そう答えると斎は、天弥を強く抱きしめる。
「明日は休みだよな?」
斎の中では一週間分の日時がないため、改めて今度の土曜日が休日だということを確かめる。
「はい」
「なら明日、何か美味いものでも食いに行くか?」
天弥の返事に、斎はすぐに言葉を返す。だが、天弥はすぐに返事を出来ずに考え込む。退院したばかりで、大丈夫なのだろうかという不安はあるが、一緒に居たいという感情もあり、大きく揺れ動く。
「大丈夫ですか?」
不安が入り混じった声で、天弥が尋ねた。
「身体なら大丈夫だ」
心配そうな視線を向ける天弥に向かって答えた。
「なんなら確認するか?」
そう言うと斎は、天弥を抱きかかえたまま器用に片手でパジャマのボタンを外し始める。それを見て、天弥は顔を赤くし俯く。同性同士、体育の着替えなどで見慣れているはずだが、なぜか斎だと恥ずかしいと感じてしまう。
真っ赤な顔をして俯いてしまった天弥を見て、その耳元に唇を寄せた。吐息が耳にかかり、天弥の鼓動が速まる。
「やりにくいから、天弥が脱がせてくれるか?」
そう囁かれた言葉に、天弥はさらに耳まで赤くして慌てて顔を上げた。だが、まともに斎の顔を見ることが出来ずに、すぐに目を伏せる。伏せた視線の先に、はだけた斎の胸元があり、更に目のやり場に困り、思わず目を閉じた。
「天弥」
促すような声が天弥の耳に響き、息苦しくなるほど体温が上がり、心臓が大きな音を立てて脈打った。ゆっくりと目を開け、戸惑いながら手を斎の胸元へと動かす。いつも抱きついているはずなのに、今は恥じらいで思考がまともに働かず、身体の動きもぎこちない。
天弥はゆっくりと手を伸ばし、目の前のボタンへと指先が触れたとたん、慌ててその手を引っ込めた。その戸惑い、恥らう仕種に斎は激しく劣情をそそられる。
斎はメガネを外すと天弥の顎に手をやり、その顔を上げさせる。お互いの視線が絡むと同時に、二人の唇が重なり合う。すぐに天弥の腕が斎の身体に回された。
焦らすかのように、斎はゆっくりと天弥を求める。いつもとは違うもどかしさに、天弥は自ら快楽を求め、斎を欲しがる。すぐに斎の唇が離れ、天弥は物足りなさが残る表情と、潤んだ瞳で斎を見つめた。
「どうした?」
天弥の求めているものを理解していながら、わざと尋ねる。斎の問いに天弥は、困惑と欲情が入り混じった表情を浮かべた。
斎は、天弥が自ら自分を求めるようにと、中途半端な快楽を与えた。天弥の中に、自分の存在を刻み込みたかったのだ。
聞き取れないような微かな声で、天弥は何かを呟くと俯いてしまった。
「聞こえない」
斎はそう言い、天弥の顔を自分へと向けさせる。羞恥の表情と共に、今にも涙がこぼれそうな瞳が向けられた。
「……キス……、して下さい……」
今にも消え入りそうな声で、天弥が懇願する。その泣き出しそうな表情に、快楽に喘ぐ時は、こんな感じなのだろうかと、更なる劣情を唆られた。
「欲しいなら、自分からしてみろ」
「悪い、少し考え事をしていた」
そう答えると斎は、天弥を強く抱きしめる。
「明日は休みだよな?」
斎の中では一週間分の日時がないため、改めて今度の土曜日が休日だということを確かめる。
「はい」
「なら明日、何か美味いものでも食いに行くか?」
天弥の返事に、斎はすぐに言葉を返す。だが、天弥はすぐに返事を出来ずに考え込む。退院したばかりで、大丈夫なのだろうかという不安はあるが、一緒に居たいという感情もあり、大きく揺れ動く。
「大丈夫ですか?」
不安が入り混じった声で、天弥が尋ねた。
「身体なら大丈夫だ」
心配そうな視線を向ける天弥に向かって答えた。
「なんなら確認するか?」
そう言うと斎は、天弥を抱きかかえたまま器用に片手でパジャマのボタンを外し始める。それを見て、天弥は顔を赤くし俯く。同性同士、体育の着替えなどで見慣れているはずだが、なぜか斎だと恥ずかしいと感じてしまう。
真っ赤な顔をして俯いてしまった天弥を見て、その耳元に唇を寄せた。吐息が耳にかかり、天弥の鼓動が速まる。
「やりにくいから、天弥が脱がせてくれるか?」
そう囁かれた言葉に、天弥はさらに耳まで赤くして慌てて顔を上げた。だが、まともに斎の顔を見ることが出来ずに、すぐに目を伏せる。伏せた視線の先に、はだけた斎の胸元があり、更に目のやり場に困り、思わず目を閉じた。
「天弥」
促すような声が天弥の耳に響き、息苦しくなるほど体温が上がり、心臓が大きな音を立てて脈打った。ゆっくりと目を開け、戸惑いながら手を斎の胸元へと動かす。いつも抱きついているはずなのに、今は恥じらいで思考がまともに働かず、身体の動きもぎこちない。
天弥はゆっくりと手を伸ばし、目の前のボタンへと指先が触れたとたん、慌ててその手を引っ込めた。その戸惑い、恥らう仕種に斎は激しく劣情をそそられる。
斎はメガネを外すと天弥の顎に手をやり、その顔を上げさせる。お互いの視線が絡むと同時に、二人の唇が重なり合う。すぐに天弥の腕が斎の身体に回された。
焦らすかのように、斎はゆっくりと天弥を求める。いつもとは違うもどかしさに、天弥は自ら快楽を求め、斎を欲しがる。すぐに斎の唇が離れ、天弥は物足りなさが残る表情と、潤んだ瞳で斎を見つめた。
「どうした?」
天弥の求めているものを理解していながら、わざと尋ねる。斎の問いに天弥は、困惑と欲情が入り混じった表情を浮かべた。
斎は、天弥が自ら自分を求めるようにと、中途半端な快楽を与えた。天弥の中に、自分の存在を刻み込みたかったのだ。
聞き取れないような微かな声で、天弥は何かを呟くと俯いてしまった。
「聞こえない」
斎はそう言い、天弥の顔を自分へと向けさせる。羞恥の表情と共に、今にも涙がこぼれそうな瞳が向けられた。
「……キス……、して下さい……」
今にも消え入りそうな声で、天弥が懇願する。その泣き出しそうな表情に、快楽に喘ぐ時は、こんな感じなのだろうかと、更なる劣情を唆られた。
「欲しいなら、自分からしてみろ」
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
甘いマスクは、イチゴジャムがお好き
猫宮乾
ホラー
人間の顔面にはり付いて、その者に成り代わる〝マスク〟という存在を、見つけて排除するのが仕事の特殊捜査局の、梓藤冬親の日常です。※サクサク人が死にます。【完結済】
岬ノ村の因習
めにははを
ホラー
某県某所。
山々に囲われた陸の孤島『岬ノ村』では、五年に一度の豊穣の儀が行われようとしていた。
村人達は全国各地から生贄を集めて『みさかえ様』に捧げる。
それは終わらない惨劇の始まりとなった。
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
【完結】わたしの娘を返してっ!
月白ヤトヒコ
ホラー
妻と離縁した。
学生時代に一目惚れをして、自ら望んだ妻だった。
病弱だった、妹のように可愛がっていたイトコが亡くなったりと不幸なことはあったが、彼女と結婚できた。
しかし、妻は子供が生まれると、段々おかしくなって行った。
妻も娘を可愛がっていた筈なのに――――
病弱な娘を育てるうち、育児ノイローゼになったのか、段々と娘に当たり散らすようになった。そんな妻に耐え切れず、俺は妻と別れることにした。
それから何年も経ち、妻の残した日記を読むと――――
俺が悪かったっ!?
だから、頼むからっ……
俺の娘を返してくれっ!?
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
女装とメス調教をさせられ、担任だった教師の亡くなった奥さんの代わりをさせられる元教え子の男
湊戸アサギリ
BL
また女装メス調教です。見ていただきありがとうございます。
何も知らない息子視点です。今回はエロ無しです。他の作品もよろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる