apocalypsis

さくら

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suggestio veri, suggestio falsi

decem

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 さらに手がかりを求めて、詳しく状況を思い出す。あの場に居たのは、三人だった。もし他に人物が居たとしても、分かり難い状況だったため断言は出来ないが、おそらく他に人は居なかったと思われる。
 バイアキーが現れた時のサイラスの反応は、予期していた出来事という感じではなかった。おそらく、予想外の出来事だったとするのなら、あの時の召喚はサイラスの背後とは関連がないと考えてよいのかと思う。
 それならば、誰がどうやってあれを召喚したのか。その時の状況を更に細かく思い出す。バイアキーが現れた時、冷たい風が吹き荒れる中、サイラスが髪一筋も乱すことなく立っていた。召喚をする様子もなく、そのような暇もなかったはずだ。だとすれば、可能性があるのは絢子だと思われる人物になる。あの不思議な風といい、六年前と変わらぬ姿など、あまりにも謎が多すぎる。
 あの時、彼女は何をしていたか細かく記憶を探る。そして、力なく地面に座り込む姿を記憶の中から探り出した。座り込んでいる間、何かをしていなかったかと記憶を遡っていく。サイラスに腕を掴まれ崩れ落ちた後、何かを呟いていた。何を呟いていたのか、必死に思い出そうとするが、あまりにも小さな声だったため、聞き取れておらず内容までは解らなかった。
 可能性としては、バイアキーを召喚する呪文であるが、それだけで召喚が叶うはずもなく、手詰まりになってしまった思考を中断した。
「Ia! Ia! Hastur! Hastur cf'ayak 'vulgtmm, 'vulgtmm, 'vulgtmm! Ai! Ai! Hastur!」
 試しにとハスターへ捧げる呪文を口にしてみる。もちろん何も起こる筈はなく、自分の行動を馬鹿らしいと思う。
 サイラスが出て行った窓を見つめた。謎ばかりが増え、何一つ解りはしない状況なのだ。せめてサイラスが言ったとおり、彼が敵ではない事を祈るように望んだ。
 
 ベランダの窓を開け、サイラスは広いリビングへと入る。スニーカーを手に玄関へと向かうと、ドアに向かってそれを放り投げた。放物線を描くスニーカーの様子を確認する事もなく、すぐに背を向けると寝室へと向かう。
 広すぎるリビングに一人でいるのは、あまり好きではなかった。大画面でアニメを見る時ぐらいしか、そこに居ることは無い。本当なら、羽角と共に住むはずだった。そう思いながら寝室のドアを開け、部屋へと入る。
 日本へ行くと決まった時、一緒だと思っていた。だが、行くつもりはないと言われ、一人で来る羽目になってしまったのだ。ベッドへ倒れこみながら、羽角の事を考える。
 羽角は日本語を使わない、日本の事も何も話さない。最初は日本人だとは思いもしなかった。格闘技を習い始め、その師匠が日本人だった事や、日本のアニメにのめり込んだため、日本語を覚えた。そして初めて、不思議な名前が日本語なのだと知った。
 何も話さない羽角に、何も聞かなかった。役に立ちたくて、今の世界に足を踏み入れた。その時、自分が日本で何をしたかを初めて語ってくれた。そして、これから行なう事も総て聞いた。
 おそらく、それでこの世界に足を踏み入れるのを、止めさせようとしたのだと思う。だが、羽角は初めて世界が光に満ちていると教えてくれた。自分にとってその存在は総てであり、望むことは叶えたいと思う。
 出来る事なら、天弥になりたかった。それが、唯一自分が望むことだ。だが、斎との恋愛は勘弁だと思う。
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