apocalypsis

さくら

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emitte lucem et veritatem

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 輸血後GVHD、ドナーのリンパ球が、受血者を非自己と認識し、その体内で増殖、拒絶反応をしめすことがある。これは、新鮮血による全血輸血を行なった場合に、生じる確立が上がる。そして、男性、近親者間での輸血の場合さらに発症しやすくなる。発症すると死亡率は90%以上であり、有効な治療法は確立されていない。
「意識が戻ったとき、最初に見るのがたかみくんの泣き顔だと、斎も悲しくなるわよ」
 神楽の言葉に頷き、天弥は無理やり笑顔を作ろうとするが、上手くいかない。
「何か、飲み物を買ってくるわね」
 天弥の様子に、少しでも気分転換になればと考え、神楽は病室を後にした。
 涙で滲む視界で、天弥は斎を見る。斎を直に感じたくて、ゆっくりと手を伸ばす。だが、自分には触れる資格はないように思え、寸前でその手が止まる。
 意識が戻ったら、何も気がつかないような自分は、もう呆れられてしまうのかもしれない。斎が身を挺するような価値など、自分にはないのだ。
 それでも斎を感じたくて、静かにその髪の先に触れる。どう思われようとも、天弥にとって斎は全てであり、求めずには要られない存在であった。
 もう少し、そう欲が湧き上がり、斎の髪を指に絡める。すぐに更なる欲が湧いて出て、頬に向かっておそるおそる手を伸ばした。微かに、指先が触れた。指先から熱が伝わる。堪えきれずに、さらに手を伸ばし、その熱を鮮明に感じられるよう、しっかりと触れる。
「先生……」
 斎に呼びかけるが、何の反応も無い。だが、手に伝わる熱が存在をより鮮やかなものとしてくれる。それは天弥にとって斎の無事を明確にしてくれるものであり、少しだけではあるが、心の中に潜む不安を和らげてくれた。
「たかみくん」
 名前を呼ばれ、慌ててその手を引っ込めると、声がした方へと視線を移す。目の前に、ジュースの缶を差し出している神楽の姿があった。
「ありがとうございます」
 礼を言い、それを受け取った。冷えた缶の感触が、先ほどまで感じていた斎の熱を奪っていった。
 どこからか調達してきた椅子を天弥のすぐ横に置き、神楽も腰掛ける。天弥へと視線を向け、その姿を見つめた。斎が、自分を犠牲にしてでも守った相手であり、泣き腫らした顔さえ、美しいと思える少年。斎は、特に相手の外見にはこだわらないが、ノーマルの斎が同性を恋愛対象としたのは、この容姿が要因である事は大きいと思われる。
 純真で素直なその性格は、確かに斎の好みではあるが、それだけで同性を恋愛相手に選べるものではない。
 天弥を見ていると、一つ年上の友人と重なる。もちろん、容姿は比べるまでもないほどの差があるが、性格や雰囲気などがよく似ているのだ。
 今までの人生の大半と言ってもよい十一年という年月を、斎は絢子に囚われていた。絢子だけを一途に想い、その総てを差し出した。病弱な絢子の為に医者になるのだと、最高学府の理科Ⅲ類に合格してみせたのだ。だが、斎が二十歳の時、絢子が死んだと聞かされ、医者になることをあっさりと捨て、進学振り分けで教育学部へと文転してしまった。教師になるのが夢だった絢子の為に、斎は教師になる道を選んだ。
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