apocalypsis

さくら

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emitte lucem et veritatem

undecim

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 すでに生徒も教師もほとんど姿を見かけなくなった放課後、斎と共に車がある駐車場へと向かう途中、天弥は変な歪みを感じた。なんと表現してよいのか分からないが、嫌な感覚に思わず斎のスーツの裾を掴み、足を止めた。それに引かれ、同じく足を止めた斎が振り返る。
「どうした?」
 問いかけに、天弥はその顔を見上げた。自分でもよく分からないこの感覚を、どう伝えればよいのか悩む。
「天弥?」
 何か様子の違う天弥に、斎は少し首を傾げた。その斎の背後に、いつのまにか人影があることに、天弥が気付く。天弥の視線が自身の背後に向けられていることに気がつき、それを辿り振り向く。
 先ほどまでは、確かに誰もいなかった。天弥へ視線を移している僅かの間に、どうやって現れたのか、そう考えながら斎は見慣れたその姿を見つめた。
「なぜ?」
 静かに口を開き、絢子は天弥を見つめた。斎は思わず、自分の背後へと天弥の姿を隠す。
「斎くん、なぜ私じゃないの? なぜそんな怖い子なの?」
 怖い? 絢子の言葉に、何が怖いのだろうか考える。
「あれから六年経っている。俺は今、天弥が好きなんだ」
 絢子が怖いと言った意味は分からないが、とりあえず今の自分の気持ちを伝える。その言葉に天弥は、不謹慎だとは思いつつも嬉しさが込み上げてきた。それとは対照的に、絢子の表情が変わる。
「そんなのいや!」
 搾り出すような絢子の叫びと共に、風が吹き荒れた。何かの動きを感じ、斎は反射的に腕を上げた瞬間、激しい裂傷を負う。それを皮切りに、全身多数の細かい裂傷を受け、そこから流れ出す血液が赤い筋となりまるで絹糸のように風と共に飛ばされる。
 斎は絢子に背を向けると、天弥の身体を覆うように抱きしめた。
「先生?」
 斎の背後で、その背中を見ていた天弥には状況が理解できずに、その顔を見上げようとした。
「動くな」
 すぐに斎は天弥の後頭部を手で掴むと、自分の身体へと押し付けた。何が起きているのか理解できず、天弥は斎の言葉に従う。
 この状況はどういうことなのか、斎は頭の中で整理し始める。人間の皮膚というものは、案外丈夫なものなのだ。それを裂傷させる程の気圧差は、この程度の旋風で生じるものではない。それともこれは、自分の理解の範疇を超えた現象だとでもいうのだろうか。
 大きな痛みが背中を走り、思考を中断させた。どうすれば、天弥を無事にこの場から非難させられるのかを考えようとするも、痛みと出血で意識が混濁し始め、思考が纏まらなくなる。
 背中に激しい痛みを再び感じた時、その横を何かが駆け抜けるのを感じた。霞んだ視界にも鮮やかに映える金の髪を最後に、意識が途絶える。
「Are you all right?」
 サイラスの言葉と共に、辺りに吹き荒れていた風が一気に収まる。
「先生?」
 意識が無くなり、崩れ落ちる斎を支えきれずに、天弥はその身体を抱え込もうとしたが支えきれず倒れこむように膝を付いた。
 斎の背中に回した手に、生温かく滑る感触がし、天弥は自分の手を見る。
「なに……これ……」
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