apocalypsis

さくら

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emitte lucem et veritatem

septem

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 サイラスの回し蹴りを、なんとか右腕で受け止めるが、スピードと重さの乗った蹴りは、あっさりとガードごと斎をふき飛ばす。
 サイラスの蹴りで体勢を崩し、よろけた身体を次の攻撃に備えてすぐに立て直す。だがサイラスは、攻撃する様子も見せずに余裕でその場に立ち尽くしていた。あれで終わりだというのならありがたいと思うが、表情を見る限り、それは無いだろうと判断する。むしろもっと楽しみたいという感じだ。
「顔面は禁止なんだ」
 いきなりの顔面への攻撃から、サイラスが自分と同じフルコンタクトの空手ではない事を判断する。そして相手の出方を探るように、話しかけた。
「知っとるで、せやけど、俺には関係あらへんし」
 その返事で、確信する。
「総合格闘技……、NHBか?」
 サイラスの口角が上がり、挑戦的な笑みを浮かべた。
「そうや」
 最悪だと心のなかでため息を吐く。No Holds Barred、略してNHB、いわゆる禁じ手無しの意味で、投げ技や固め技を使われたら、打撃系格闘技はかなり不利になる。
「せんせー、鈍っとるんとちゃう?」
 サイラスの言葉を聞きながら、斎は呼吸を整える。
「だから、ブランクがあると言っただろ」
 おそらく無傷というのは無理だと考える。六年前なら、何とかなったかもしれないが、それでも勝てたかどうかは分からない。身体能力もスピードも、格段の差がある相手なのだ。
 サイラスと距離を取りながら構え、相手の動きに集中する。互いに僅かずつ距離を縮め相手の出方を見る。高まる緊張の中、斎は正拳を繰り出す。すぐにサイラスもそれに応えるように拳を繰り出し正拳突きを受け流す。互いに繰り出される拳の中、斎はサイラスのわき腹をめがけて膝蹴りを出すが、右足を引き軽くかわされる。そのままサイラスは左腕を引くと踏み込みと共に、勢いよく斎にめがけて裏拳を繰り出した。斎はかろうじてそれを両腕で受け止める。
 互いに距離を取り合い、斎がサイラスに向かって前蹴りを繰り出した瞬間、辺りに不似合いな音楽が流れ始めた。
「あ、ちょー待っとってや」
 斎の蹴りを軽くかわしたサイラスは、携帯を取り出す。そこからは、軽快な音楽に可愛い声の歌声という何かのアニメソングが聞こえてきた。斎は思わずその場に固まる。
「Hello」
 通話を始めたサイラスを、呆気にとられながら斎はただ見つめることしか出来なかった。
「そんなん、そっちのミスやろ。知るか! こっちは今、御神本 斎と交渉中なんや」
 何かもめている様子から、何かあったのだろうかと、サイラスの様子や言動を注意深く伺う。
「なんで俺の仕事、増やすんや!」
 不機嫌極まりない様子でそう言い捨てるとサイラスは、携帯のボタンを押し通話を終えた。
「あー、先生、悪いんやけど仕事が入ったんで、また今度っちゅうことで」
 言い終わると同時に、サイラスは走り出した。
「ほな、またなー」
「おい、ちょっと待て!」
 その後ろ姿に向かって声をかけ、後を追いかけようとするも、すでにその姿は無く、諦め辺りを見回した。すぐにベンチを見つけ、そこへと向かう。
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