apocalypsis

さくら

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emitte lucem et veritatem

tres

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 そしてなぜ、花乃はここまで天弥を避けるのかと考える。以前、言っていた花乃の言葉を思い出す。本を手に入れてから、人が変わったようになることがある。そう言っていた。自宅では、頻繁にあの天弥が現れているという事なのだろうか、思考を巡らしながら天弥を見つめる。
「天弥、昨日の夜は何をしていた?」
 直接その事に触れるのを避け、間接的に尋ねてはみたが、いきなりの質問にかえって疑問をもたれるのではと、斎は危惧する。
「え? えっと、ちゃんと勉強してました」
 マグカップを両手で抱えるように持ちながら、天弥が答える。斎の問いを、真面目に勉強していたのかを聞かれたと判断したのだ。
「そうか」
 斎の言葉に天弥は、何か安心したような表情を浮かべた。そして、マグカップを机の上に置くと、弁当を膝の上で広げ始める。
 その返事と様子でが何も判断ができず、やはり直接尋ねようと、斎は思いたつ。
「そういえば、記憶が飛んでいるとかいうのは、どうなった?」
 天弥の手が止まる。同じくサイラスの手も止まり、天弥を見た。
「一昨日の夜、ありました……」
 重い口を開くように答える。それを聞き、斎は驚きの視線を向けた。
「なんで言わないんだ?」
 思わず声を荒げ、天弥に問いただす。
「あ……、ごめんなさい。夜だったから、迷惑かと思って……」
 本当は、斎には知られたくなかった。自分の変なところを知られれば、愛想をつかされると不安になるからだ。
「……よくあるのか?」
 少し迷いながら、斎が尋ねる。それに対し、天弥は小さく首を横に振った。
「先生に話してからは、一昨日の夜だけです」
 天弥の答えに、斎は複雑な表情を浮かべる。心を奪われた相手に会いたいと願うが、それが叶わぬ状況に苛立ちを覚える。
「なにかあったら、すぐに連絡しろ。分かったか?」
 少し語気を荒く言われ、斎を怒らせたと思いながら、天弥は力なく頷いた。
「とりあえず、食うか」
 さらに落ち込んだ様子の天弥に向かって声をかけた。サイラスは、その二人の様子を見ながら、なぜ自分はここに居るのだろうかと考える。理由は簡単に推測できる。斎は情報が欲しいのだろう。
 サイラスは、自分の弁当のおかずを天弥に食べさせている斎を見た。箸で天弥の口へとおかずを運ぶさまを見て、ヒナ鳥に餌を与える親鳥みたいだと思う。
 おそらく、十二年前に二人が出会ったのは偶然だったはずだ。だが、今の状況を見ていると、その出会いからして運命だったのだとも思える。天弥はともかく、斎はその出会いで人生が変わってしまったのは間違いないのだ。その結果、二人は再び出会う事になったのだから、やはり運命というものはあるのかもしれない。
 今度は、天弥が弁当のおかずを斎に向かって差し出した。本当に、なぜ自分はここに居るのかと、再度サイラスは考える。
「天弥、俺それがええ」
 天弥の弁当の中にあるミートボールを指差し、サイラスが訴えた。
「はい」
 すぐに天弥は弁当をサイラスに向かって差し出す。差し出された弁当を、サイラスはジッと見つめる。
「俺、箸もフォークもないんやけど」
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