apocalypsis

さくら

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quaecunque sunt vera

viginti unus

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 天弥は椅子に座り、机の上に広げた参考書を見ると、そのまま上半身を投げ出すように突っ伏した。帰宅後、勉強をしようと思ったのだが、斎との夕食で食べすぎてしまい、満腹で何もする気が起きなくなってしまったのだ。
 少し休んでからと思い、ゆっくりと瞼を閉じた。薄れ行く意識の中で斎の姿が思い浮かび、慌てて上体を起こした。自分の体温が上がり、鼓動が早くなっているのがよく分かる。
 ここ最近、寝ても覚めても斎の事ばかりを考えている自分に、少し戸惑う。こんなにも、自分の総てを捉える相手は初めてだった。
 今まで何度か、誘われるままに女の子とデートのようなものはした事がある。それは手を握る事も無かったようなもので、みな一度きりで終わり、その後には続かなかった。自分でも特に何とかしようとは思いもしなかったし、そう思える相手も今までいなかった。
 男に誘われた事もあるが、それらは総て断った。どのような相手であれ、同性をそのような対象として見ることは考えもしなかった。
 なぜ、斎に心惹かれたのかは分からない。自分でも変だと思いはしたが、それよりも斎への思慕が勝っていた。
 上半身を起こすと静かに自分の身体に腕を回す。斎に抱きしめられる感覚を思い出し、自分の中に湧き上がる感情に身を任せる。これが斎の腕ならそう考えただけで、身体中の血が騒ぎ出すような感覚に襲われる。
 そしてその感覚に溺れ、斎が欲しいと望む。斎を想いながら、静かに指で唇に触れ何度もその感触を思い出す。
「せん……せ……」
 思わず、斎を切なく呼ぶ声が漏れる。それが合図であるかのように、部屋の窓ガラスが大きく音を立てて揺れた。慌てて窓へと視線を向けて立ち上がる。
 ゆっくりと、窓へ向けて足を踏み出す。カーテンを掴むと静かに開け、外を覗き込んだ。見下ろした視線の先に人影を見つけ、それを確認しようとした。
 人影はゆっくりと顔を上げ、天弥を見上げる。その姿に、放課後に見かけた女性だと理解する。
 窓の外を見つめる天弥の表情が変わった。すぐに窓に背を向け、部屋の外へと向かう。部屋を出ると真っ直ぐに玄関へ足を向けた。
 外へ出ると、まだ少し肌寒い空気が身体を取り巻く。すぐに、部屋を見上げる人影を見つけ、その足を止めた。
「こんばんは」
 天弥の声に驚き、目の前の女性は視線を声がした方へ恐る恐る向ける。
「僕に何か用事でもありますか?」
 目の前の妖美な姿に、女性は恐怖を感じその場で立ちすくむ。天弥は構わず足を踏み出し、女性へと近づいた。
「あなた……何?」
 震える声で、女性が尋ねる。その様子に、天弥は面白そうに笑みを浮かべる。
「出来損ないの貴女には解りませんか? 北河絢子さん」
 名を呼ばれ、絢子は思わず後退る。構わず天弥はその距離を縮めていく。
「いえ、北河絢子さんだったもの、といった方が正確ですね」
 絢子の背中が塀にぶつかり、その動きが止まる。
「あなた……怖い……何なの……?」
 恐怖を浮かべながら震える絢子に向かって天弥は手を伸ばし、その肩を押さえつけた。
「貴女が知りたいのは、僕の正体ですか?」
 すぐ間近で妖艶な美貌が、艶冶な笑みを浮かべる。
「それとも、別の何かですか?」
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