apocalypsis

さくら

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quaecunque sunt vera

decem

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 さすがに、この年で弁当はもういいと言ったのだが、父親のを作るついでだと毎日持たされている。
「僕もです」
 少しでも斎と同じという状況が嬉しくて、天弥は喜びを隠せずにいた。それを誤魔化すかのようにうつむき弁当を広げる。
 斎は手にした煙草を灰皿に押し付けると、天弥を見ながら昨夜の少年の事を思い出す。暗がりの中ではあったが、天弥とそう変わらない年代だという事は分かった。
 あの少年の正体に加え、昨夜いきなり現れた存在と謎が増えてしまった”アレ”は、本当に少年が口にした通りの存在なのか判断に苦しむ。
 少年は”アレ”を、バイアキーと呼んだ。それは、風を象徴する旧支配者ハスターの眷属の名前であり、創作の中の存在である。
「はい」
 天弥の声で我に返り、意識を声の主へと向けた。目の前に、なぜか玉子焼きが差し出されている状況に考え込む。
「違いました? ずっと見てるから、食べたいのかと思ったんですけど……」
 小首を傾げながら自分を見つめるその姿が可愛すぎて、湧き上がる邪な気持ちを誤魔化すように差し出された玉子焼きを口にする。それを見て天弥は嬉しそうに微笑んだ。
「これ、ものすごく甘くないか?」
 玉子の味も、出汁の味も殆どせず、恐ろしいほどの甘さが口の中に広がった。
「美味しくないですか?」
 少し不安そうな天弥の表情を見て、美味しいとか以前の問題だと思うが、それを口には出さなかった。
「いや」
 返事を聞き、天弥は再び笑みを浮かべる。
「良かった。僕も花乃も甘いのが好きだから、お母さんいつも甘いのを作ってくれるんです」
 嬉しそうにそう言うと、食事を続けた。斎もそれに続き、箸を動かしながら視線を何とはなしに窓へと向ける。
 ふと、風が木の葉を揺らす様子が視界に映る。昨夜は妙な風が吹いた。手の甲と頬の傷跡も、風の中で付いたものだ。手の甲についている薄い傷跡に目をやる。そして今朝、これらを見た天弥が少し泣き出しそうな顔をしたのを思い出した。その表情は斎の理性を飛ばしそうになり、頭の中でゲーデルの不完全性定理の第一不完全性定理を示す議論を必死で繰り返していた。それが役に立たなくなった頃、第二不完全性定理を示す議論に切り替え、何度も繰り返していた。
「先生?」
 自分を呼ぶ声に反応し、意識を思考から戻そうと軽く頭を振った。
「あー悪い。考え事をしていた」
 不安と戸惑いが入り混じったような表情を浮かべる天弥に向かい、少し意地悪そうな表情をする。
「聞きたいか?」
 考え込む表情をした後、天弥は躊躇いがちに頷いた。その様子を確認すると、天弥の耳に唇を寄せる。思わぬ行動に、天弥の鼓動は早くなり大きな音を立て始めた。体温も上がり出し、どう対応して良いか分からず硬く目を瞑った。
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