apocalypsis

さくら

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quaecunque sunt vera

unus

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 神楽は、休日に外出した事を後悔していた。人が多く、五月とはいえ日差しも暑い。その中を小さな子供を連れて歩くのは大変だったりする。だが、引き返すことは選択せずひなの手を引きながら歩く。
 昨日、あれから斎たちはどうなったのか気になって仕方がないため、今日も実家を尋ねる事にした。斎に何か言われそうだが、そんな事は関係ないと、自身に言い含める。夫の慶一は今日も接待ゴルフで家にはいないため、特にすることもなく、娘との散歩がてら実家へ向かうことにした。
 暑さは吹き飛ばすように、昨日の出来事を思い出す。インターフォンが鳴り玄関を開けると、そこには驚く程の美少女が立っていた。マニッシュな服装やショートの髪も可愛く似合っていたが、レースやリボンのかわいい服に長い髪の姿の方が、より一層似合うだろうと残念に思ってしまった。
 見た目の年齢から、すぐに斎の生徒だということは理解できた。そして、なぜこの子が一人でここに来たのかも、簡単に予想が出来てしまったのだ。弟は顔だけは良いため、それに騙された可愛そうな女子生徒なのだろうと、思わず同情をしてしまったのだ。
 男の子だったのは少し残念ではあったが、斎が本気で好きだというのならそれでも良いと思った。
 ここ四年ほどは斎も落ち着いていたが、それ以前は酷い有様だった。二年ほどの間、ろくに大学にも行かず、言い寄ってくる女の子を片っ端から相手にしている状態という乱れた生活をおくっていたのだ。また、その頃に戻ったのではないかと、少し懸念を抱いてしまった。
 神楽は、赤信号の横断歩道で足を止めた。行きかう車の向こうに、ふと見覚えのある姿を見つける。それは、昔の友人の姿であった。一つ年上の彼女は、六年前と変わらぬ姿で微笑み、神楽へと視線を向けた。
「絢子……?」
 思わず友人の名前を呟いた。その瞬間、信号が変わり人々が動き出す。そして、その場に立ち尽くし改めて先程見た人影を探すが、人込みに紛れ探し出すことが出来なかった。
 今日は、五月にしては暑い日のはずだ。なのに、身体は急速に寒さに囚われ震えだす。
 絢子は、六年前に死んだはずだ。いや、直接それを確認したわけではないが、そう聞かされた。通夜も葬式も、身内だけで済ませたと後から知らされたのだ。だが、最後の一年間の殆どを病院で過ごしていた絢子の姿は、それを納得させるのに十分なものであった。
 先程見かけたのはよく似た他人なのだと、思わず自分に言い聞かせる。絢子の死について疑問はある。だがそれを確認したくとも、死を知らされた後すぐに、彼女の両親は姿を消してしまったのだ。あの時は、娘の死を悲しんで、思い出の多い地から離れたかったのだろうと、勝手に思い納得をしてしまった。
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