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(さっき馬車の中で仮眠をとっておいて本当によかった、さすがに仕事終わりにこんなはるばる遠くまで来て重労働。身体が持たないところだったわ)
そう一人噛み締めながら、事務所内に残っておられた職員の方に用件を告げました。「ドジを踏んでしまって大事な書類を郵送してしまったから探させて欲しい」と正直に。
・・・・・・もちろん良い顔はされません。まあそれくらいは想定内です。必死に頭を下げて、どうにか倉庫内のコンテナの中を検める許可を出していただけました。横でマーリンも「こちらの完全な過失でこのようなことをお願いするのは~」などと珍しくいっぱしの大人のような物言いをしていたのが、少し新鮮でした。
案内されたコンテナは、我が家の玄関ホールくらいの規模です。大体膝を抱えてうずくまった大人が一人すっぽり隠れるくらいの大きさのコンテナが、ざっと見た感じ50個ほどつみあげられていました。
「・・・・・・これで全部か。手当たり次第にいけば、一時間くらいで全て見つけられそう」
そう言った私の後ろで、鍵を開けてくださった職員の方が仁王立ちでぴしゃりと言い放ちました。
「いえ。これで全部ではありません。個人様からお預かりした荷物のいくらかは既に船に搭載済みです。ここにあるのはほんの一部。しかし船の中のコンテナはさすがに開封許可は出せません。この中をちゃっちゃと探したら、早く出て行ってくださいな」
そんな嫌な言い方しなくてもいいのに・・・・・・、という思いが心を掠めましたが、無理を通そうとしているのはこちら。ぐっとこらえます。
この倉庫に一時保管されているのは、私の実家のあるローレル地方と、その隣に位置するセンチェール地方宛ての荷物だそうです。どちらもとても長閑な田舎町です。そもそもの郵便量自体は大したことないはずです。
(とはいえ、両方の地方宛ての荷物を合わせるとさすがにそこそこな量ね・・・・・・)
見渡す限りのグレーの箱たちを見ていると、気が遠くなりそうです。ですが、今は一分一秒でも惜しい時。ボーっとはしていれませんよね。
「さあて、やりますかね!」
そう言って、私は持参した鞄の中から作業着を取り出します。
「はい」
マーリンに突き出すと、彼は怪訝な表情でそれを受け取りました。
「これは・・・・・・」
「タンスの奥で眠っていた運動用の服ですよ。こうなるのを見越して持ってきました。私ったら本当になんて出来る婚約者♪さあ、早く着替えてちゃっちゃと探しますよ!」
袖まくりをして一足先にコンテナの山へと踏み出します。手前にあった箱の蓋を開け、みっちり詰まった手紙や小包を取り出していきます。
「当たり前ながら、どれも似たような色と形の荷物ばかりですねえ・・・・・・。マーリン、あなたどんな包みにファイル入れたんですか?」
「そんなの覚えてない。無心で手当たり次第にやったから」
がっくりくる返答です。宛名を一件一件見ていくしかありません。次第に身体の節々がビリビリと痺れてきました。これは厄介。手足や腰、目の疲れとの勝負です。
(こんなことならやっぱりジョセフさんにちょっと手伝ってもらえば・・・・・・、いや、そんな恥さらしなことはできませんね)
そう一人噛み締めながら、事務所内に残っておられた職員の方に用件を告げました。「ドジを踏んでしまって大事な書類を郵送してしまったから探させて欲しい」と正直に。
・・・・・・もちろん良い顔はされません。まあそれくらいは想定内です。必死に頭を下げて、どうにか倉庫内のコンテナの中を検める許可を出していただけました。横でマーリンも「こちらの完全な過失でこのようなことをお願いするのは~」などと珍しくいっぱしの大人のような物言いをしていたのが、少し新鮮でした。
案内されたコンテナは、我が家の玄関ホールくらいの規模です。大体膝を抱えてうずくまった大人が一人すっぽり隠れるくらいの大きさのコンテナが、ざっと見た感じ50個ほどつみあげられていました。
「・・・・・・これで全部か。手当たり次第にいけば、一時間くらいで全て見つけられそう」
そう言った私の後ろで、鍵を開けてくださった職員の方が仁王立ちでぴしゃりと言い放ちました。
「いえ。これで全部ではありません。個人様からお預かりした荷物のいくらかは既に船に搭載済みです。ここにあるのはほんの一部。しかし船の中のコンテナはさすがに開封許可は出せません。この中をちゃっちゃと探したら、早く出て行ってくださいな」
そんな嫌な言い方しなくてもいいのに・・・・・・、という思いが心を掠めましたが、無理を通そうとしているのはこちら。ぐっとこらえます。
この倉庫に一時保管されているのは、私の実家のあるローレル地方と、その隣に位置するセンチェール地方宛ての荷物だそうです。どちらもとても長閑な田舎町です。そもそもの郵便量自体は大したことないはずです。
(とはいえ、両方の地方宛ての荷物を合わせるとさすがにそこそこな量ね・・・・・・)
見渡す限りのグレーの箱たちを見ていると、気が遠くなりそうです。ですが、今は一分一秒でも惜しい時。ボーっとはしていれませんよね。
「さあて、やりますかね!」
そう言って、私は持参した鞄の中から作業着を取り出します。
「はい」
マーリンに突き出すと、彼は怪訝な表情でそれを受け取りました。
「これは・・・・・・」
「タンスの奥で眠っていた運動用の服ですよ。こうなるのを見越して持ってきました。私ったら本当になんて出来る婚約者♪さあ、早く着替えてちゃっちゃと探しますよ!」
袖まくりをして一足先にコンテナの山へと踏み出します。手前にあった箱の蓋を開け、みっちり詰まった手紙や小包を取り出していきます。
「当たり前ながら、どれも似たような色と形の荷物ばかりですねえ・・・・・・。マーリン、あなたどんな包みにファイル入れたんですか?」
「そんなの覚えてない。無心で手当たり次第にやったから」
がっくりくる返答です。宛名を一件一件見ていくしかありません。次第に身体の節々がビリビリと痺れてきました。これは厄介。手足や腰、目の疲れとの勝負です。
(こんなことならやっぱりジョセフさんにちょっと手伝ってもらえば・・・・・・、いや、そんな恥さらしなことはできませんね)
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