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第25章 大奮闘
第189話 過去の真相と反省
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アッシュ兄ちゃんの所へ向かっていたら、ちょうど目の前に兄ちゃんを見掛けたので······ある事を思い付いた。
そして、「アッシュ副隊長」と低い声で呼び止め、「っ! レックス」「今お時間宜しいでしょうか?」と言い終わった直後に兄ちゃんを睨んだ。
「あ、ああ」と答えて僕を自分の執務室に誘導し「それで、何の用だ?」と尋ねた。
「······アッシュ副隊長」とまたその呼び方で呼んだら「レックス、まだ怒ってるのか?」と聞いてきたので、「やっぱり、突然変な呼ばれ方されたら動揺してしまいますよね?」「あ、ああ。そうだな」
「なら、あの時の僕の気持ちも分かったはずだよね?」「あの時?」「初めて騎士団からの依頼を受けて、野営地に着いた時の事だよ」「······あっ」ようやく思い出した。
あの時、レックスが野営地に着いて団長達のいるテントに向かっていた時、ーーおーい! こっちだ、レックス君!ーーと叫んでいた事を。
「まさかお前、あの時の仕返しのためにああ呼んだのか?」と兄ちゃんは僕を見てきたので、「······うん!」とにこやかな顔をして答えてやった。
「お、お前なぁ」「······でも、まだ父さんの事許した訳じゃ無いから」「っ! あれは、確かに今となっては俺も悪かったって反省してるよ。まさかこうも周りにまで影響が出るなんて思わなかったから」
「許してはいないけど、もう怒ってはいないから大丈夫だよ」「大丈夫って」「だって······その事をいつまでも引きずってたら、前と同じ過ちを繰り返す事になるから」
「前とって?」「実はさっきもその事でジャックと部屋で揉めて、殴られた拍子にベッドの角に頭をぶつけて気絶したんだ」「っ! だ、大丈夫なのか!?」
「うん。その時前世のある時期の出来事が頭の中で蘇って、ようやく分かったんだ。······僕を刺した人物と、その理由がね!」
「っ! ホ、ホントか!? 本当に分かったのか!」僕は無言で頷き、事の真相を話し始めた。
「まず、僕をあの時刺したのは十中八九間違いなく、マーシュだよ!」先ほど頭に浮かんだ最後の映像で、倒れながら刺した人物の顔を確認したらマーシュで間違いなかった。
「マ、マーシュが!? でも、何で?」「多分、前の時にも今回と似たような事が起こったからだと思うよ」「似たような事?」
「うん。前の時もある日突然魔物達が僕らの領土の町や村を襲い出して、僕らがその討伐に向かったりしてたんだ」あの時、僕も何度か魔物退治の遠征に出動していた場面を思い出していた。
「そんなある日、兄ちゃんとアリスが同じ所へ出動する事があって、その際······今回の父さん同様アリスが怪我を負ったんだ」「何だって!」「しかも、その時も今回同様僕は兄ちゃんからじゃなくて他の人が話しているのを聞いてその事を知ったんだよ」(っ!)流石にその事を聞いてアッシュはとても驚いた。
「当然その時も後で兄ちゃんに詰め寄ったんだ。『どうして教えてくれなかったんだよ!』ってね。だけど兄ちゃんは明確な理由を言わなかったんだ。それで僕は兄ちゃんに反発心を覚えたんだ」「······」最初の映像がまさにその場面であった。
「暫くしてからアリスのお見舞いに行ったんだけど、そこで大きな出来事が起こったんだ」「大きな、出来事?」黙って頷いた。
「お見舞いに行った時、兄ちゃんの話題も出たんだけど、その時アリスは兄ちゃんは悪くないだとか、兄ちゃんを許してやってくれだとか兄ちゃんを擁護するような事ばかり言ってきたんだ。それで流石にアリスと言い争いになっちゃって、その時アリスにこんな事を言っちゃったんだ」「な、何て······言ったんだ?」「『君の顔なんて二度と見たくないし、もう話し掛けてこないでくれ!』ってさ」
「なっ!? そんなこと言ったのかお前!」「うん。さっきそう言ったという事もハッキリ思い出したんだ。その後は本当にアリスはもちろん、兄ちゃんとも全然話したりしてないと思うし、魔王軍と戦う連合軍への参加も僕が1人で勝手に決めたはずだから」
「そ、そこまでの関係になってたのか? 俺達」「うん。そして、その僕とアリスとのやり取りを偶然かどうかはわからないけど、医務室近くの廊下でマーシュが聞いていたんだ」2つ目の映像の最後に見えた人物は、間違いなくマーシュであったに違いない。
「それからマーシュは僕に怒りを覚えて恨むようになったんだと思うんだ」「ど、どうしてマーシュがお前を?」
「そりゃあもちらん前々からアリスに好意を寄せてて、そんなアリスを僕が悲しい思いにさせたからだと思うよ」「そ、それだけで、お前を刺したってのか?」
「じゃあ兄ちゃん。もしお姉ちゃんに兄ちゃん以上に好きな人が現れて、兄ちゃんがお姉ちゃんの事を思って自分が身を引いたとするよ」「お、おう」
「その後その人がお姉ちゃんに酷い言葉を吐き捨てて別れて、その事をお姉ちゃんがずっと引きずって悲しい表情を浮かべているのを見たら、どう思う?」「そりゃあ、その男の事を許せねぇって思うだろうな」
「だよね。下手をしたら、何かしてやりたいと思ってもおかしくはないよね?」「ま、まぁ、そりゃあ······って、まさか!?」「うん。そのまさかにまでマーシュはなって、あの魔王軍との決戦の場で実行したんだよ」「なっ!?」
「あの時一人きりになっていた僕を見掛けて、僕がいなくなればアリスが悲しい思いをし続ける事もなくなるだろうと考えて······後ろから刺したんだと思うんだ」「······ウソ、だろ?」
「多分、さっき思い出した出来事と、そこから推測出来る事を合わせて考えたら、今説明した事が前世で起こった真相だと思うんだ」
僕の話を聞き、全てその通りだと思ってしまい、兄ちゃんは暫く黙って身動きひとつ取る事が出来なかった。
「その上で今回の出来事を振り返ったら、前の出来事と同じ様な事ばかりが起こってるんだよ」「同じ様な事?」
「まず父さんが怪我をしたっていうのがアリスが怪我をした事と同じだし、その事を兄ちゃんが教えてくれなかったのも一緒でしょ?」「······」
「その後間接的にジェシーが、直接的にジャックが僕を説得しようとした事はアリスが兄ちゃんを擁護しようとした事と似ているでしょ?」「た、確かに」
「だからもしあのままジャックの説得を拒み続けていたら、きっと今回はジャックに刺される事になっていた可能性が大きかったんだよ」それを聞いてアッシュは再び黙ってしまった。
そして、「······レックス」「ん?」「じゃあ、前の時にお前が刺されたのは、俺に原因があったって事なのか?」「······かも、しれない」「っ!」
「もし兄ちゃんがアリスの怪我の事を教えてくれてたら、違った未来になってたかもしれない······」それを聞いてまた黙ってしまった。
暫くして「すまん! レックス!」突然立ち上がり頭を下げて謝ってきた。
「兄ちゃん」「今更謝ったところでどうにもならないかもしれないが、少なくとも今回おじさんの事を言わなかったのは本当に俺の判断ミスだった! 本当にすまない!」と謝罪したのだった。
「もう良いよ、兄ちゃん」「でも」「今回は最悪となる展開を未然に防げたんだし、父さんだって命に関わる大怪我じゃなかったんでしょ?」
「あ、ああ」「なら問題ないだろうし。それに······」「それに?」「もしかしたらこの間に行ってた僕の行為が、これまでのように必要な事だったかもしれないんだから」「レックス」
そこで僕はニコリと笑って「じゃあこの後ジェシーの所に寄ってから、団長に頼まれた所を見回ってくるよ」「あ、ああ。頼んだよ」と兄ちゃんに言われた後ドアの前まで進んだ。
そしてそこで後ろを振り向き、ニヤ顔をしながら「じゃあね、"アッシュ副隊長殿"」と言った。
それを聞いた兄ちゃんは「お、お前······やっぱりまだ根に持ってるだろ!」と僕に激しく言ってきたのに対し「冗談だって兄ちゃん。じゃあね!」と軽く言って部屋を出て行った。
「ったく。······レックス、本当に、本当にありがとな」こうしてレックスとアッシュの関係は修復され、再び2人の運命が大きく変化したのだった······。
騎士団本部を出てお城に向かった僕はジェシーの部屋の前に着き、コンッ、コンッ!「ジェシー、入って良いかい?」「っ! 良いわよ、レックス」ドアを開けた直後、「グフッ!」ベアーズが久しぶりに猛スピードで腹に突進して来たのだ。余りにも突然の事だったので、その衝撃に耐えきれず僕は後ろに倒れた。
「レックス!」流石にジェシーも驚き僕の下に駆け寄って来た。
「だ、大丈夫?」「うん。大丈夫」「ベアーズ!」今回はジェシーもベアーズを叱ったが、当のベアーズは僕の体の上に乗ったまま僕を見て唸り続けていた。
「良いんだよ、ジェシー。今回はこうされても仕方がないんだから。な、ベアーズ?」とベアーズに問いかけた。
するとベアーズは僕が元の状態に戻った事を認識し、ようやく唸りを止めて今度は僕の顔を舐め続けたのだった。
「ベアーズ?」流石に状況をすぐには飲み込めず、ジェシーはベアーズの行動に疑問を感じていた。
取り敢えず話を進めるためにベアーズを抱いて舐めるのを止めさせ、体を起こしたところで「ジェシー、実は君にまだ話してない事があるんだ」「え?」取り敢えずジェシーの部屋に入った。
そして僕は運命の洞窟とその中の水晶玉の事。その水晶玉に自分を殺す可能性のある人物を尋ねたら、最初はマーシュとライアンとネールの顔が映し出され、ダークエルフ達との戦争の後にはジャックとライアンとネールの顔が映し出された事。さらに、先ほどアッシュにも話した過去の真相をそれぞれ伝えたのだった。
「······そ、それじゃあ」「うん。もしジャックの説得を拒んでいたら、前の人生でマーシュに刺されたように、今度はジャックに刺されていたかもしれなかったんだ」流石に驚く事を聞きすぎてジェシーはそれ以上言葉が出なかった。
「ジェシー。君にもお礼を言わないといけないんだ」「え?」「僕の事ジャックに相談してくれたんだよね?」「うん。昨日お姉様の部屋で見掛けた時の様子がおかしかったから······」
「その事でさっきジャックに怒られたんだ」「怒られた?」「うん。恋人なら何でも言い合うもののはずなのに直接言わないでジャックに言わせるなんて、恋人でいる意味がないじゃないかって言ったら、『アイツがどんな気持ちで俺に相談してきたか分かるか』なんて言われたんだよ」
「っ!」それを聞いてジェシーも自分がとんでもない事をジャックに頼んでしまった事に今気付いたのだった。
「ジャックにそう言っておいて、自分も色々大事な事をジェシーに話していないんだから、ジャックに言う資格なんて無いのにね」「······レックス」
そこまで聞いてジェシーはたまらずレックスに抱き付いた。
「そんなこと無いわ! 私だってレックスに話してない事が色々あるんだから。私の方こそ、直接聞かないで他人を使ってごめんなさい!」「良いんだよジェシー。しょうがないよ」「レックス」
そこまで言い合って見つめあったところでレックスはニコリと笑ってあげ、ジェシーもそれに返すように笑顔を作ったのであった。
「それじゃあ、団長に頼まれた所を見回ってくるよ」「うん!」「行こう、ベアーズ!」とベアーズに呼び掛けたら、今日は素直に付いてきたのだった。
そしてドアの所まで来たところで「レックス!」とジェシーが呼び止め、僕が振り返ったら微笑んで「行ってらっしゃい」と言われたので、僕は頷き「行ってきます!」と言って部屋を出て、ウッディに乗って目的の場所へ向かったのだった。
その際ふと(そういえば、今朝の部屋でのジャックのやり取りや、さっきジェシーの部屋を出ていく時の光景って、前に導きの玉が見せてくれた予知夢の内容そのものだったような······。やっぱりあの玉には予知夢を見せてくれる効果も備わっているんだ)と思ったのだった······。
そして、「アッシュ副隊長」と低い声で呼び止め、「っ! レックス」「今お時間宜しいでしょうか?」と言い終わった直後に兄ちゃんを睨んだ。
「あ、ああ」と答えて僕を自分の執務室に誘導し「それで、何の用だ?」と尋ねた。
「······アッシュ副隊長」とまたその呼び方で呼んだら「レックス、まだ怒ってるのか?」と聞いてきたので、「やっぱり、突然変な呼ばれ方されたら動揺してしまいますよね?」「あ、ああ。そうだな」
「なら、あの時の僕の気持ちも分かったはずだよね?」「あの時?」「初めて騎士団からの依頼を受けて、野営地に着いた時の事だよ」「······あっ」ようやく思い出した。
あの時、レックスが野営地に着いて団長達のいるテントに向かっていた時、ーーおーい! こっちだ、レックス君!ーーと叫んでいた事を。
「まさかお前、あの時の仕返しのためにああ呼んだのか?」と兄ちゃんは僕を見てきたので、「······うん!」とにこやかな顔をして答えてやった。
「お、お前なぁ」「······でも、まだ父さんの事許した訳じゃ無いから」「っ! あれは、確かに今となっては俺も悪かったって反省してるよ。まさかこうも周りにまで影響が出るなんて思わなかったから」
「許してはいないけど、もう怒ってはいないから大丈夫だよ」「大丈夫って」「だって······その事をいつまでも引きずってたら、前と同じ過ちを繰り返す事になるから」
「前とって?」「実はさっきもその事でジャックと部屋で揉めて、殴られた拍子にベッドの角に頭をぶつけて気絶したんだ」「っ! だ、大丈夫なのか!?」
「うん。その時前世のある時期の出来事が頭の中で蘇って、ようやく分かったんだ。······僕を刺した人物と、その理由がね!」
「っ! ホ、ホントか!? 本当に分かったのか!」僕は無言で頷き、事の真相を話し始めた。
「まず、僕をあの時刺したのは十中八九間違いなく、マーシュだよ!」先ほど頭に浮かんだ最後の映像で、倒れながら刺した人物の顔を確認したらマーシュで間違いなかった。
「マ、マーシュが!? でも、何で?」「多分、前の時にも今回と似たような事が起こったからだと思うよ」「似たような事?」
「うん。前の時もある日突然魔物達が僕らの領土の町や村を襲い出して、僕らがその討伐に向かったりしてたんだ」あの時、僕も何度か魔物退治の遠征に出動していた場面を思い出していた。
「そんなある日、兄ちゃんとアリスが同じ所へ出動する事があって、その際······今回の父さん同様アリスが怪我を負ったんだ」「何だって!」「しかも、その時も今回同様僕は兄ちゃんからじゃなくて他の人が話しているのを聞いてその事を知ったんだよ」(っ!)流石にその事を聞いてアッシュはとても驚いた。
「当然その時も後で兄ちゃんに詰め寄ったんだ。『どうして教えてくれなかったんだよ!』ってね。だけど兄ちゃんは明確な理由を言わなかったんだ。それで僕は兄ちゃんに反発心を覚えたんだ」「······」最初の映像がまさにその場面であった。
「暫くしてからアリスのお見舞いに行ったんだけど、そこで大きな出来事が起こったんだ」「大きな、出来事?」黙って頷いた。
「お見舞いに行った時、兄ちゃんの話題も出たんだけど、その時アリスは兄ちゃんは悪くないだとか、兄ちゃんを許してやってくれだとか兄ちゃんを擁護するような事ばかり言ってきたんだ。それで流石にアリスと言い争いになっちゃって、その時アリスにこんな事を言っちゃったんだ」「な、何て······言ったんだ?」「『君の顔なんて二度と見たくないし、もう話し掛けてこないでくれ!』ってさ」
「なっ!? そんなこと言ったのかお前!」「うん。さっきそう言ったという事もハッキリ思い出したんだ。その後は本当にアリスはもちろん、兄ちゃんとも全然話したりしてないと思うし、魔王軍と戦う連合軍への参加も僕が1人で勝手に決めたはずだから」
「そ、そこまでの関係になってたのか? 俺達」「うん。そして、その僕とアリスとのやり取りを偶然かどうかはわからないけど、医務室近くの廊下でマーシュが聞いていたんだ」2つ目の映像の最後に見えた人物は、間違いなくマーシュであったに違いない。
「それからマーシュは僕に怒りを覚えて恨むようになったんだと思うんだ」「ど、どうしてマーシュがお前を?」
「そりゃあもちらん前々からアリスに好意を寄せてて、そんなアリスを僕が悲しい思いにさせたからだと思うよ」「そ、それだけで、お前を刺したってのか?」
「じゃあ兄ちゃん。もしお姉ちゃんに兄ちゃん以上に好きな人が現れて、兄ちゃんがお姉ちゃんの事を思って自分が身を引いたとするよ」「お、おう」
「その後その人がお姉ちゃんに酷い言葉を吐き捨てて別れて、その事をお姉ちゃんがずっと引きずって悲しい表情を浮かべているのを見たら、どう思う?」「そりゃあ、その男の事を許せねぇって思うだろうな」
「だよね。下手をしたら、何かしてやりたいと思ってもおかしくはないよね?」「ま、まぁ、そりゃあ······って、まさか!?」「うん。そのまさかにまでマーシュはなって、あの魔王軍との決戦の場で実行したんだよ」「なっ!?」
「あの時一人きりになっていた僕を見掛けて、僕がいなくなればアリスが悲しい思いをし続ける事もなくなるだろうと考えて······後ろから刺したんだと思うんだ」「······ウソ、だろ?」
「多分、さっき思い出した出来事と、そこから推測出来る事を合わせて考えたら、今説明した事が前世で起こった真相だと思うんだ」
僕の話を聞き、全てその通りだと思ってしまい、兄ちゃんは暫く黙って身動きひとつ取る事が出来なかった。
「その上で今回の出来事を振り返ったら、前の出来事と同じ様な事ばかりが起こってるんだよ」「同じ様な事?」
「まず父さんが怪我をしたっていうのがアリスが怪我をした事と同じだし、その事を兄ちゃんが教えてくれなかったのも一緒でしょ?」「······」
「その後間接的にジェシーが、直接的にジャックが僕を説得しようとした事はアリスが兄ちゃんを擁護しようとした事と似ているでしょ?」「た、確かに」
「だからもしあのままジャックの説得を拒み続けていたら、きっと今回はジャックに刺される事になっていた可能性が大きかったんだよ」それを聞いてアッシュは再び黙ってしまった。
そして、「······レックス」「ん?」「じゃあ、前の時にお前が刺されたのは、俺に原因があったって事なのか?」「······かも、しれない」「っ!」
「もし兄ちゃんがアリスの怪我の事を教えてくれてたら、違った未来になってたかもしれない······」それを聞いてまた黙ってしまった。
暫くして「すまん! レックス!」突然立ち上がり頭を下げて謝ってきた。
「兄ちゃん」「今更謝ったところでどうにもならないかもしれないが、少なくとも今回おじさんの事を言わなかったのは本当に俺の判断ミスだった! 本当にすまない!」と謝罪したのだった。
「もう良いよ、兄ちゃん」「でも」「今回は最悪となる展開を未然に防げたんだし、父さんだって命に関わる大怪我じゃなかったんでしょ?」
「あ、ああ」「なら問題ないだろうし。それに······」「それに?」「もしかしたらこの間に行ってた僕の行為が、これまでのように必要な事だったかもしれないんだから」「レックス」
そこで僕はニコリと笑って「じゃあこの後ジェシーの所に寄ってから、団長に頼まれた所を見回ってくるよ」「あ、ああ。頼んだよ」と兄ちゃんに言われた後ドアの前まで進んだ。
そしてそこで後ろを振り向き、ニヤ顔をしながら「じゃあね、"アッシュ副隊長殿"」と言った。
それを聞いた兄ちゃんは「お、お前······やっぱりまだ根に持ってるだろ!」と僕に激しく言ってきたのに対し「冗談だって兄ちゃん。じゃあね!」と軽く言って部屋を出て行った。
「ったく。······レックス、本当に、本当にありがとな」こうしてレックスとアッシュの関係は修復され、再び2人の運命が大きく変化したのだった······。
騎士団本部を出てお城に向かった僕はジェシーの部屋の前に着き、コンッ、コンッ!「ジェシー、入って良いかい?」「っ! 良いわよ、レックス」ドアを開けた直後、「グフッ!」ベアーズが久しぶりに猛スピードで腹に突進して来たのだ。余りにも突然の事だったので、その衝撃に耐えきれず僕は後ろに倒れた。
「レックス!」流石にジェシーも驚き僕の下に駆け寄って来た。
「だ、大丈夫?」「うん。大丈夫」「ベアーズ!」今回はジェシーもベアーズを叱ったが、当のベアーズは僕の体の上に乗ったまま僕を見て唸り続けていた。
「良いんだよ、ジェシー。今回はこうされても仕方がないんだから。な、ベアーズ?」とベアーズに問いかけた。
するとベアーズは僕が元の状態に戻った事を認識し、ようやく唸りを止めて今度は僕の顔を舐め続けたのだった。
「ベアーズ?」流石に状況をすぐには飲み込めず、ジェシーはベアーズの行動に疑問を感じていた。
取り敢えず話を進めるためにベアーズを抱いて舐めるのを止めさせ、体を起こしたところで「ジェシー、実は君にまだ話してない事があるんだ」「え?」取り敢えずジェシーの部屋に入った。
そして僕は運命の洞窟とその中の水晶玉の事。その水晶玉に自分を殺す可能性のある人物を尋ねたら、最初はマーシュとライアンとネールの顔が映し出され、ダークエルフ達との戦争の後にはジャックとライアンとネールの顔が映し出された事。さらに、先ほどアッシュにも話した過去の真相をそれぞれ伝えたのだった。
「······そ、それじゃあ」「うん。もしジャックの説得を拒んでいたら、前の人生でマーシュに刺されたように、今度はジャックに刺されていたかもしれなかったんだ」流石に驚く事を聞きすぎてジェシーはそれ以上言葉が出なかった。
「ジェシー。君にもお礼を言わないといけないんだ」「え?」「僕の事ジャックに相談してくれたんだよね?」「うん。昨日お姉様の部屋で見掛けた時の様子がおかしかったから······」
「その事でさっきジャックに怒られたんだ」「怒られた?」「うん。恋人なら何でも言い合うもののはずなのに直接言わないでジャックに言わせるなんて、恋人でいる意味がないじゃないかって言ったら、『アイツがどんな気持ちで俺に相談してきたか分かるか』なんて言われたんだよ」
「っ!」それを聞いてジェシーも自分がとんでもない事をジャックに頼んでしまった事に今気付いたのだった。
「ジャックにそう言っておいて、自分も色々大事な事をジェシーに話していないんだから、ジャックに言う資格なんて無いのにね」「······レックス」
そこまで聞いてジェシーはたまらずレックスに抱き付いた。
「そんなこと無いわ! 私だってレックスに話してない事が色々あるんだから。私の方こそ、直接聞かないで他人を使ってごめんなさい!」「良いんだよジェシー。しょうがないよ」「レックス」
そこまで言い合って見つめあったところでレックスはニコリと笑ってあげ、ジェシーもそれに返すように笑顔を作ったのであった。
「それじゃあ、団長に頼まれた所を見回ってくるよ」「うん!」「行こう、ベアーズ!」とベアーズに呼び掛けたら、今日は素直に付いてきたのだった。
そしてドアの所まで来たところで「レックス!」とジェシーが呼び止め、僕が振り返ったら微笑んで「行ってらっしゃい」と言われたので、僕は頷き「行ってきます!」と言って部屋を出て、ウッディに乗って目的の場所へ向かったのだった。
その際ふと(そういえば、今朝の部屋でのジャックのやり取りや、さっきジェシーの部屋を出ていく時の光景って、前に導きの玉が見せてくれた予知夢の内容そのものだったような······。やっぱりあの玉には予知夢を見せてくれる効果も備わっているんだ)と思ったのだった······。
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