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第5章 学校生活

第31話 図書室にて1

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 今日も授業はお休みで、アリスにも1日図書室で調べ物をすると伝えてあった事もあるので朝ご飯を食べてすぐ図書室へ向かった。

 図書室へ入りこちらもオリエンテーションの日に事前に見学して調べておいたので、すぐ目的の本が置かれていると思われる"鉱石・ストーン"分類の棚を目指した。

 棚に着いて取り敢えずということで、一番上の端から4、5冊手にして近くの席に座って1冊ずつ順番にパラパラとめくって見始めた。

 そう見ていって目的の"赤い石"が載っているページがないかどうか、赤い石の載っているページを見掛けたら、あの"運命の洞窟の水晶玉"に見せられた映像に映し出された形であるかを思い出しながら比較していった。

 そうして1冊見終わったら次の本に移り、持ってきた4、5冊の本を見終えたら棚に戻して次の4、5冊の本を持ってきて······の繰り返しを行った。

 流石に時間が経ってくると石の本ばかりで······飽きてきてしまったので、一番上の棚分を全部見終えたところで石の棚から離れた(それにしても、どれだけの本があるんだ?)。

 そして今教科の授業で勉強していることもあってこの国の歴史書の本が目に入ったので、その本を手に取ってまた近くの席に座って見だした。その本を見て内容にはまってしまって時間が経つのも忘れてしまった。

 そのうち「本当に熱心に読んでるわね」聞き慣れた声が聞こえたので目線を前に移すと、「あ、お姉ちゃん」メリッサお姉ちゃんが目の前にいた。今日はお姉ちゃんの図書室の担当日だったんだ。

「うん。本当は別の種類の本を見に来たんだけど飽きてきて、たまたまこの本を読み出したらこれにもはまり出しちゃって」

 そう言うとお姉ちゃんは笑顔になりながら「そう、でも本だけじゃなくて、”時間”も見ようね」と言われ「えっ?」と時間を見たら「あっ」12時を回っていて、周りを見たら誰もいなくなっていた。

「······」流石に言葉が出なかった。そんな僕を見てメリッサが「お昼食べに行こっか」と言ってきたので、「ハイ」と答え本を戻し図書室を出た。


 寄宿舎に戻って食堂でお昼ご飯を食べながら僕の調べている事について話したりした。

「それで、何を探していたの?」と聞かれ、たまたま持っていた不要の紙に水晶玉が見せた映像に映し出された石のシルエットを書き、「こんな形の赤い色をした石をね」と答えた。

「そうなんだ。分かった、私の方でももし見掛けたら教えてあげるわね」と言ってお姉ちゃんはその紙を閉まった。

(まぁ、これぐらいは大丈夫だろう)と思いながら僕も「うん。ありがとう」と答えた。

「でも」とお姉ちゃんは再び話し出し、「夢中になって調べるのも良いけど、数ページ見たら1度時計や周りを見るぐらいの気持ちは持とうか」と言われ、確かにと思い「ハイ」と答えた。

 そこでメリッサは一瞬笑って「午後からもまた図書室に戻って調べるの?」と聞いてきて「うん、そのつもり」と答えたら、「じゃあここでお別れね」と言った。「分かった」と僕も答えてご飯を食べ終えたら1人で図書室に戻った。

 それからは再び石の棚の本を持ち出してお姉ちゃんに言われた通り数ページ見たら時計や周りの雰囲気を見て再び本を見だすといった繰り返しを行った。

 そうして見ていった事でなぜか午前中に比べて集中し、かつ飽きる事なく石の本を見続ける事が出来た。

 そうして2、3段分の本を見終えたところで夕方の程よい時間になったので続きはまたとして図書室を出た。

 その後寄宿舎に着く直前辺りでアリスと、また兄ちゃんやお姉ちゃんと遭遇して後で全員で夕ご飯を一緒に食べる事にして一旦別れた。

 少しして食堂に行って兄ちゃんとお姉ちゃんがもういて、僕が来たすぐ後にアリスも来て4人で食べながら入学してからの授業などのこと、また昨日や今日の過ごし方について会話しながら食事を楽しんだ。


 部屋に戻ったところでこの1週間の成果などを頭の中で整理した。

(取り敢えず今の所クラスメイトの中にも、頻繁に会う事になりそうな人達の中にもあの水晶玉が映し出した3人はいなかった。つまり3人についてはまだまだ先だということだ。それなら······)そこまで思ってブーメランを手にとった。

(まず注意すべきは兄ちゃんが関わる”あの映像”だな)と思って目を瞑り、水晶玉が映し出した”エルフ族と学校の生徒と、ダークエルフと呼ばれている種族との戦闘の最中にダークエルフの1人が放った矢によって兄ちゃんが殺されるシーン”と、そのシーンで"僕がブーメランを放って矢を防ぐシーン"を思い出していた。

(確か前世でも入学して2ヶ月か3ヶ月ぐらい経ったところでエルフ族の生徒が慌ただしくしていたはずだから、きっと兄ちゃんの一件もその時に起こるはずだ。それを何としても阻止しないと······)と新たな決意をしてその日は眠りについた。


 そして、その予想通りの事態となるのであった······。
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