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第1章 転生

第10話 魔物との遭遇1

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 あのクマの親子との一件から僕らの周りの状況は前世の記憶と大きく変化した。 

 前世では父さんの一件がトラウマになったことで狩りにはしばらく行かなくなってたけど、今回は父さんとレオおじさんが行く時にはよく同行して狩りの事を教えてもらうようになり、またジョーおじさんが森に入って薬草などを摘んでくるようになった。

 前世ではその役目は母さんとアリスが担っていて時たま僕も同行していた。

 そして一番の違いは、いつも休憩している川で休んでいる僕の隣にはあの子グマが静かに眠っていた。

 あれ以来ここで休憩していると頻繁に僕の近くに寄って来てじゃれてくるようになり、帰ろうとするとそのまま後を付いてくるようになって、少し前からはとうとう村の中にまで付いてくるようになった。

 しかし村の皆も特に怖がったり追い出したりしようとする事もなく、僕がペットにした様に捉えている。

 また親のクマの方もジョーおじさんが薬草を取りに行った時には近くで見ている、というか見張っててくれている様で、最近どうやら他にも薬草などを取れる場所を教えてもらったと本人から聞かされた。

 本当に物凄い変わり様で心の中では毎日毎日驚いていた。


 そしてさらに年月は過ぎてファンタジック歴1094年。僕とアリスが8歳に、アッシュ兄ちゃんが9歳になったある日の事······。

「ヨッ、ホッ、ット」最近僕達3人で遊ぶ時は毎回森の中で遊んでいる。今日も森の中で鬼ごっこをすることになり、アッシュ兄ちゃんが鬼となったので僕は近くの木に登って素早く隣の木に移っているところであった。

 流石にこの動きを見て2人は唖然とした後「そりゃ反則だろ、レックス!」「そうよ、ズルイわよ!」と言ってきたので、「ゴメン、ゴメン。もうしないよ」と言って木から降りた。

「ったく、だけどいつの間にそんな動きが出来る様になったんだ?」「ハハハ、日頃の訓練のお陰さ」

 そう、あれからも体力づくりは欠かさずに行っており、特に8歳の誕生日に父さんから王都へ用事で出掛けた折に買ってきてくれた短剣をもらってからは、それを使って素早く斬りつけれるようにしたり、遠くの目的物に当てられるよう木などに目印を付けて投げ込んだりして様々な用途で使えれるようにしていた。1年後に訪れるであろうトロルの襲撃に備えて······。

 だけど、その前にも色々気を付けないといけない日があり今日がそのうちの1日だった。

「ねぇ、鬼ごっこもいいけどやっぱり普通に川までの競争にしましょうよ、いつものようにハンデ付きで」

「まぁ、それが一番か?」「ハハッ、そうだね」アリスがそう提案して僕達2人も賛同した。

 最近は大概が川までの片道もしくは往復の競争や川での魚釣りなどで時間を過ごしていた。

「じゃあ行くよ」アリスの合図で3人とも走り出す前の体制となり、「よーい、ドン!」と言ってまずアリスが走りだした。次に30秒ぐらい経って「よーい、ドン!」アッシュ兄ちゃんが走りだし、最後にその10秒ぐらい経って「ドン!」僕が走りだした。

 前世ではアッシュ兄ちゃんと僕の順番が逆だったと思ったけど、流石に今回は2、3回続けて僕の方が早く川に着いたこともあって僕が最後にスタートすることとなった。

 いつもこれぐらいのハンデを付けて良い勝負 (実のところ僕は毎回手加減を加えていた)となっていた。今日もいつもとほぼ変わらない感じでもう後少しというところでアッシュ兄ちゃんがアリスに追いつきそうになっていて、僕も2人の姿を捉えれるところまで迫っていた。

 このまま進んで最後に2人を抜いたり抜かなかったりして楽しんでいたけど、今日はそれが許されなかった。

 前世では最後尾だったアッシュ兄ちゃんが、今回は僕だけが"あいつ"を認識して急いで前の2人に追い付いて「2人とも!」と言って前の2人の腕を掴んだ。

「キャッ!」「何だ?」「しっ、静かに。(こっち!)」そう言いつつそのまますぐ近くの茂みに身を隠した。

「どうしたんだよ、レックス」「(あそこ)」アッシュ兄ちゃんが聞いてきたので僕がのいる方を指した。

 その方向を見た直後、「っ!!」2人は声も出せずに硬直した。そこには手に斧を持っていて僕らの身長の2倍以上で体のサイズもかなりデカイ全身緑色の魔物がいた。

「な、何あれ?」「わ、分かんない」2人が震えながら喋っている中、僕だけが落ち着いた雰囲気で「多分"オーク"って呼ばれている魔物だと思う」と答えた。

「な、何で知ってんだよ?」アッシュ兄ちゃんが聞いてきたので「前に父さんに教えてもらったことがあるんだ」と答えた。


 そう、だいぶ以前に僕が本格的に狩りを行うことにしてから少し経った夕食後に「レックス、お前も狩りを本気でやりだしたようだから1つだけ注意を言っとく」父さんがそう話し掛けてきた。

「何? 父さん」「初めて狩りに連れて行った時やその後にも何度か俺達は狩りのついでに魔物の監視も行なっていると話したことがあっただろう?」

「うん。覚えてるよ」「森で見掛ける魔物というのは主に2種類いてな。まず全身が緑色で斧を手に持っている”オーク”と呼ばれている奴。次に全身が濃い肌色で手に棍棒のようなモノを持っている”トロル”と呼ばれている奴だ。コイツらを見掛けた場合は3人ないし4人以上で行っていたらその人達に、それ未満で行っていたらすぐ村に戻って村長に報告するんだ。絶対に無茶な行動だけはするな」「分かった。覚えておくよ」と教えてもらった事があり、目の前の魔物はまさに聞いていたオークの特徴そのものだった。
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