Vegetables

Vegetables―スピンオフ―

あいつらの日常 ２

「拓～高速使おうぜ……」

「やだよ。下道のほうが楽しいもん」

　運転手の意思には逆らえず、オレはおとなしく助手席に身を沈めた。帰りは運転を変わろうと心に誓う。

　拓の運転はうまい。というかうまくないとあの車は運転できない。

　車高を下げているせいで、段差にまともに突っ込むと車を擦ってしまう。運転席からは見えない部分なので、ぶつかるかどうかの見極めが難しい。

　ちなみに段差には九十度で進入するとエアロパーツを割ってしまうから、斜めに角度をつけて入らないとダメなんだ。これはもうずっと前に拓からレクチャーされた。

「さとちゃんさ、最近あきちゃんとか遊んでる？」

「いいや。大体休み合わないしなぁ。多分千章も一人暮らしになってラブラブなんでない？」

「えぇ～？　あきちゃんがラブラブとかって想像できない～」

　拓がケラケラ笑った。確かに千章はパッと見、落ち着いて見えるもんな。見えるだけだけど・・・。

　あの千章に男の恋人ができるとは想像もしなかった。しかもご丁寧にがっつり隠してやがったんだ。

　ばれてからも何か聞こうとするたびに、逃げてしまわれる。その、いろいろと聞きてぇのに。千章にそういったら
「絶対にいやだ」と断言された。

「環は新婚だろ？　声かけれないって」

「確かにねぇ。はるちゃんご飯作ってるのかな？」

「週１は作ってるらしい……けどな」

　そういってオレも苦笑いする。美晴の料理の腕は全員身をもって思い知っている。環もある意味チャレンジャーだ。

　ってかあいつら双子は上手くいってそうだよな。オレもラブラブしてぇ……。

　びびって言えないけど。

「ねぇね、牛丼持ち帰りにしてマリーナで食べない？」

　拓の提案は願ったりだ。ひと気のないマリーナならその……都合いいだろう？　いろいろと……。

　オレ最近下心の塊かも……。