Vegetables

Vegetablesー３ー

ためらい ２

「乗って」

「ここで聞きます」

「そんなに警戒しなくても、取って食いやしないよ？」

　言っても無駄だと察して、俺は仕方なく木瀬さんの白いセダンに乗り込んだ。

「この辺でいっか」

　木瀬さんの車は、海水浴場の駐車場に停まった。もちろん真冬の海水浴場には人もおらず、営業中の一服なのか社用車らしき車がちらほらと停まっているだけだった。

「意外だね。こういうのが好みとは思わなかった」

　いきなりそういって、俺の全身に無遠慮な視線を向けてくる。この人は俺に絡みにきたのか？

「いつから一緒にいるの？」

「……木瀬さんには関係ないでしょう」

「律と一緒のこと言うんだ……気に入らないなぁ」

　律にも聞いたんだ。俺が帰った後、律となんの話をしたんだろう。

「俺になんの用ですか？」

「用なんかないよ。単にきみが気に入らないから絡んでやろうと思っただけ。だってさ、まったく不釣合いじゃないか」

　あからさまに馬鹿にされてさすがに腹が立った。

「用がないなら帰ります」

「ダメ。少なくともきみの休憩時間が終わるまでは付き合ってもらうよ？」

　ドアを開けようとした腕を掴まれ、引き戻された。そのまま近くまで引き寄せられる。

「よかったんだろ？」

　間近で顔をのぞかれ、笑みを浮かべて囁かれる。

「腕、離してください」

　動揺したら負ける。話に乗るな。

「質問に答えろよ――よかったか聞いてるんだ」

「…………」

「分からないのか？　律とのセックスのことだよ」

「なっ……！」

「やってないわけは、ないよな？」

　好戦的な態度に、頭にカッと血が昇った。なんの話をしようとしてるんだ。こんな話を店でしようとしてたんなら、どっかおかしい。