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第1章 脇役の舞台入り
第15話 「主人公と脇役の一騎打ち①」
しおりを挟む班別対抗戦は中断だ。
仲間の一人が酷いやられ方をしては黙って見過ごすわけにはいかない。
ほかの生徒には休戦を求め、事情を話しなんとかして納得してもらった。
中には聞く耳を持たない奴らもいたので軽く痛い目にあわせた。
クリスタルを壊せばいいものの限度を弁えずクラスメイトを傷つけた奴を放っておくことなんて出来ない、二次災害を招くまえに叩き潰さなければ。
俺の仲間に手を出した罪。
ドロシーを洗脳した罪。
その物差しで測れるとは思うなよヘリオス。
計画は単純だ。
生徒の中には対象の居場所を特定できる能力を持つ男がいた、名前はアラタ。
そいつの能力でヘリオスとドロシーの居場所を割り出し、これから経由する道を予想して皆で待ち伏せをする。
なにも知らずやってきた二人を囲み、ユキナには外界から完全に隔絶する結界を張ってもらう。
そして集まってくれた生徒たちには、結界が消えないよう魔力供給を任せる。
結界で逃走経路を失った二人のうち洗脳されたドロシーの方を押さえ込む。
彼女の力を行使されたら厄介だからだ。
計画通り、二人を結界に閉じ込めることに成功した。
まずはエミリアの魔術道具『魔力抵抗の鎖』でドロシーを拘束してもらい動けないようにする。
申し訳ないが多少の手荒な真似を許してほしい。
ドロシーのためでもあるのだから。
「エミリア! そのまま抑えていてくれ!」
「ええ、そうしておくわ」
魔術道具の効果を途切れさせないためにエミリアは杖を常に拘束しているドロシーの方に向けていなければならなかった。
鎖で体全体の動きを止められ、魔術をも封印されたドロシーはそれでもなおジタバタをしながら抵抗をしていた。
唸り声を上げ威嚇している。
「がるるるるっ!」
彼女らしくもない獰猛さだ、やはり洗脳されているのか。
呪いの鑑定能力を持っている奴がいたら即時解除できたかもしれないが、洗脳をかけた本人を倒すのがなにより手っ取り早い。
まだ状況を理解していないマヌケ面をしたヘリオスを睨みつける。
「どうしてこうなっているのか……お前が一番よく分かっているはずだ」
白々しく知らないフリで奴は乗り切ろうとしていた、コッチは全て知っているがな。
無関心な態度をとるはずがないドロシーが冷たい態度をとっていた謎もようやく解けた。
奴はドロシーの優しさに漬け込んで自分だけの物にしようとした。
だから彼女はコイツと同じ班になってしまったんだ。
同じ仲間だったライザは彼の行いに気づいたのかもしれない、だから口止めのために彼女を瀕死にして黙らせた。
辻褄が合う。
あまりにも簡単すぎる。
この男がその程度の人間だからかもしれない。
「いや……俺はなにも……」
「まだ罪を重ねるのか? この屑野郎っ!」
拳を握りしめ、全力で殴る。
鈍い音、飛び散る血。
防ぐこともできなかったヘリオスは軽々しく吹っ飛び、そのまま砂の地面の上へと倒れた。
まだだ、ライザの痛みはこんなものではない。
近くで動けないままのドロシーがなにやら叫んでいるようだが……安心してほしい。
彼女の方へと振り返り、爽やかに微笑む。
———この男を倒して、必ず救ってやるからな。
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