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第2章 主要人物として
第30話 「優しい味方」
しおりを挟む「彼女に告白をしてな。初めて会ったってのに、どこの馬の骨かも分かんねぇ奴の告白を承諾するわけがねぇよな。そこで彼女に頼んだ、また逢いたい———」
花束を持って王都に赴く。
そうなれば厳重な護衛も必要になるので大掛かりな移動は珍しいものではない。手間はかかるが上流貴族との人脈を持つことが出来るならとギルバートの意見を父親は尊重した。
それは決して彼の為ではない、家名の為であった。
しかし、エミリアのいる館に訪れるも何度も追い返されていた。周辺諸国の強化により機能が衰退していっている身分のせいだろうか。帰る頃には花は枯れてしまっていた。往復で一週間、水も与えていない薔薇がその原型を保てるはずがなかった。
現地のものを購入すれば良いと、誰しもがありきたりなプランをたてるだろう。
それでもギルバートは自身の屋敷にある庭園で、自分の育てた花を手渡ししたかったのだ。
何年も、何年も。
繰り返したある日、彼女は館にもう居ないと告げられる。
誉ある戦いへと身を投じたのだと———
「完全に想いは枯れきったよ。全部自分が行なっていた芝居でしかない。彼女のことを勝手に好きになって勝手に玉砕した……自業自得なんだよ」
それがリュートを嫌いになった理由。
俺と同じだ、けどギルバートは規模が違いすぎる。
親近感を抱くことが間違いかもしれない、それでも寄り添いたいと思った。
無言で彼の話に耳を傾ける。
「だからこそ最後までトコトン勝手にさせてもらいたい、あいつを憎んでいたい」
『俺はそういう人間だから』
直接口にはしていないが、そう言っているような気がした。
「ギルバートさんのように……アイツを憎んでいるかは分かりませんが、少なくても嫌いではあります。痛かったし苦しかった。後からもう訳が分からなくなって……」
あの日。
自分を悪として囲い、見覚えのない罪による断罪によって傷つき、痛い目にあって、堪えきれず涙を流した。
「死にたいと思った」
そんな時に寄り添ってくれたのがドロシーだった。駆け寄ってきている途中、リュートに捕まりなにかを言われていたが、彼女はそれも退けながら抱きしめに来てくれたのだ。
休み時間が終わった。
ギルバートと話をしていて彼が善人であることが分かった。容姿がたとえ恐ろしくても、その内面がそうだとは限らない。
去り際にも、
「俺はお前の味方だ。困ったときは頼ってくれ。背中はいつでも貸してやるからよ」
と言ってくれた。
とても心強く思った。
(あっ……昼ごはん食べ忘れちゃった)
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