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二人の男の子

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「あそこにいる人がそうなのね?」

私はモリーに尋ねた。

「うん。あの人がピカってしてるの、何度かみたことあるもん。」

「・・・あのさ、モリー。魔法使いが魔法使う事をピカっとしてるとか言う言い方、私以外に辞めた方がいいと思うよ?」

「なんで?」

「アホだと思われるから。」

私が昨夜うっかり召喚してしまった男たちは、あれから一度も目を覚ましていない。

どうしようか困っていると、モリーが他の魔法使いを知っていると言い出したので私たちはその男に会うため街に出ていた。

上下灰色のスウェットを着たその銀髪の男は俯き加減にゆっくりとこちらに近づいてきている。

私はその男の顔に見覚えがあった。

「あれ?廃品回収の人じゃん。」

「廃品回収?」

モリーは柱の影から飛び出すタイミングをうかがっている。

「ほら、私がいつもガラクタ買ってもらってる人。」

「え?マジ?」

私とモリーは待ち伏せていた路地裏から勢いよく飛び出した。

「おじさん!」

「おん?おー、どうしたネエちゃん。今日は回収日じゃないぞ。」

おじさんは驚いた様子もなく普段通り気だるそうにしている。

「いや、今日はちょっと違くて・・・。」

「おじさんってピカって出来る人だよね?」

おじさんと話をしようとすると、そこにモリーが割って入ってきた。

「ちょっと、モリー。」

「なんだ、ピカって。このネエちゃんはアホなのか?」

私はおじさんの身もふたもない一言に落ち込むモリーを慰めながら、改めておじさんに事の経緯を説明する事にした。

「いや、おじさんが魔法使いだって話を聞いて。ちょっと助けて欲しいな、と・・・。」

「助ける?助けるって一体何を?」

「この子がうっかり異世界から謎の男の子を二人召喚しちゃって。」

私が答えるより先にモリーがそう答えた。

「うっかり召喚しちゃった?なにアホな事言ってくれてんのよこのネエちゃん。」

「またアホっていわれた・・・。」

「モ、モリーはちょっと休んでていいから・・・。」

私は再び落ち込むモリーを慰めながら話を続けた。

「アホな事言ってるのはわかってるんだけど、でも本当の事なのよ。私もまさか魔法陣が発動するとは思わなくて・・・。」

「その話が本当だとして、なんで俺なんだよ?他に居ねえの?魔法使える奴。」

知ってるならアンタに頼む事はしないと、私は半ばヤケクソぎみに話を続けた。

「居ないからおじさんに頼んでんのよ。この街で魔法使いなんて、私かおじさん位のモンでしょ。知らないけど。」

「知らねえのかよ。ん?いや、でも待てよ?その魔法陣が発動した時って昨日か?昨日のいつだ?」

「え?時間はわからないけど、なんか満月がすっごい眩しかった時よ。」

「そうか、なるほどな。」

何かを思い浮かべた様子でおじさんは一人で腑に落ちているようだ。

「何よ、急に。」

「ネエちゃんはタイミングが悪かったんだな。」

「どうしてよ?」

私はおじさんに尋ねた。

「多分それはきっと、満月のせいさ。」

私にはおじさんの言ってる意味が分からなかった。

「俺たち魔法使いの間で語り継がれる月にまつわる伝承があってな。」

ニヤリと笑みを浮かべおじさんは続けた。

「何百年かに一度、青白く輝く満月が浮かぶ夜、とても不思議な出来事が世界のあちこちで起こるんだと。俺も詳しくは知らないが、嬢ちゃん達の身に起きた出来事はきっとそれのせいだ。」

「なにそれ?本当?」

「多分だけどな。」

昨日の夜の満月にそんな影響があるとは、随分と嘘臭い話だ・・・。

「まあ、ともあれだ。どこにいるんだ、その召喚した二人ってのは。」

「私の家よ。来てくれるの?」

「おう。俺も暇だしな。とりあえず見るだけ見てやるよ。そんな訳のわからん話でおじさんを家に招き入れて、エッチな事を企んでるって訳でもなさそうだしな。」

「・・・急に何言ってんの?」

おじさんが役に立つのかは分からなかったけど、他に頼れる人もいないので私たちはとりあえずそのおじさんを部屋に連れていく事にした。









一体なにが起こったのか?

目を覚ました僕は、僕の身になにが起こったのか全く理解が出来ないままでいた。

体は重く、意識はまだぼんやりとしている。

僕はとりあえず、あの時の事を思い返してみようと仰向けのまま思考を動かした。

あの時は・・・そうだ。満月が出ていた・・・今まで見たことが無いような、青白くて大きな満月が。

その日、僕は父さんと旅の仲間達と、ついに魔王城へと乗り込んだ。

敵の大軍を切り進みながら歩みを進めた僕達はそこで魔王と相まみえ、そして、お互いに大技を繰り出した父さんと魔王が相打ちに・・・。

その弾みで弾き飛ばされた僕は戦況を見失い、父さんよりも先に瀕死の魔王を見つけたんだ。

そして僕は魔王に跨り、最後の一撃を・・・。

でもその時、突然辺りが眩しくなって、僕は意識を失った。

あれは、あの光は一体なんだったんだろう?

それに意識を失う前、あの部屋には僕達の他にもう一人、誰かいたような気が・・・。

・・・というか、意外と結構覚えてたな。まあいいか。

そうだ。父さんはどうなったのだろうか?僕は思わず声を上げた。

「父さん!」

「お、起きたか。」

その聞き覚えのない声が聞こえた方に目をやると、そこには意識を失う瞬間にチラリと見えた、もう一人の男が立っていた。

僕はとっさに臨戦態勢を取ろうと飛び起きた。・・・が、体が重い。今にも吐きそうだ。

「ぐ、なんだこれは・・・。」

僕の様子を見かねてか、その男は言った。

「やめとけやめとけ。どうせ体も上手く動かんだろうが。俺もだから、そう身構えんなって。」

「どこなんだ、ここは一体・・・。」

「さてね。俺も知りたい。」

男は嘘をついている様子ではなさそうだ。

辺りを見渡してもとても先ほどまでいた魔王城とはまるで違う、どこかの部屋のようだった。

この場所は今までもまるで見たことがない、一風変わった部屋だ。

「他の者たちは、父さんたちはどこだ?」

「ここには俺たちしか居ないようだ。」

僕の質問に男はそう答えた。

「そんな・・・。こうしちゃいられない!早く父さんたちを探さないと!」

父さんたちはまだ魔王城に居るはずだ。

立ち上がろうとしたものの、やはり上手く力が入らず僕は立ち上がるにも精いっぱいだった。

「だから無理すんなって。」

男は相変わらず落ち着いた様子だ。

「魔王の仲間にこういう事言うのもなんだけど、君はどうしてそう落ち着いてられるんだよ。」

「ん?まあいい機会だと思ってな。」

男は軽く笑みすら浮かべている。

「いい機会?こんな状況でか?」

「ああ。こうやってのんびりするのも悪くない。せっかく親父と離れる事が出来たんだ。」

「君はさっきから何を言って・・・。まさか・・・。」

僕はその時ようやく気付いた。

どことなく魔王に似たオーラを放つその男・・・。

「君は、ひょっとして・・・。」

「何だ、今更気付いたのか。俺は・・・。」

その男が答えかけたその時、見知らぬ女の子たちが部屋に入ってきた。
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