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④ 紅茶とハムサンド
④
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さすが、料理の天才小学生。
っていうか、天才だなんて誰が最初に言い出したんだ。
水斗君のことだから、自分で言いふらしたんじゃないかな。
水斗君ならやりそうな気がする。
まあ、どうでもいいけど。
「っていうか菜乃のやつ、紅茶が好きだなんてずいぶん大人だな」
「えー、お母さんから買い物頼まれたとかじゃないの?」
「それは絶対違うよ」
「どうして言い切れるのよ?」
「……だって菜乃の母さん、去年死んじゃったから」
え……?
そ、そうだったんだ。
水斗君の表情から、笑いが消えた。目は真っ直ぐと前を向いている。
私もそれに合わせて、声が小さくなった。
「そ、そんなことが……」
「それ以来、菜乃は笑わなくなってな。気づいたら一匹狼になってた」
「だから、友達と一緒にいるところを見たことがなかったんだ」
「ああ。でも今日は笑ってるな。オレも久しぶりに見たわ、菜乃の笑顔」
あの店員のお姉さんと話している時は、すごく楽しそう。
菜乃ちゃんがイキイキしているところ、もっとたくさん見たいのにな。
本屋の前で、カフェの中にいる菜乃ちゃんを黙って見ていると、少し寒気がしてきた。
まだ夏のムシムシは残っているというのに……何この寒気。
「あ……」
その正体にわかった。
思わず声に出して反応してしまう。
すぐに水斗君が「どうかしたか?」と聞いてくる。
「水斗君、右から誰か来るのわかる?」
「右から? いや、誰も来ないだろ」
「だよね……」
「……もしかして?」
出てしまった。
今日は女の人の浮遊霊だ。
私のお母さんと同じくらいの年齢だと思われる。
浮遊霊がゆっくり歩いているのを目で追っていると、目の前のカフェで足を止めた。
店内をのぞいた後、カフェに入っていく。
っていうか、天才だなんて誰が最初に言い出したんだ。
水斗君のことだから、自分で言いふらしたんじゃないかな。
水斗君ならやりそうな気がする。
まあ、どうでもいいけど。
「っていうか菜乃のやつ、紅茶が好きだなんてずいぶん大人だな」
「えー、お母さんから買い物頼まれたとかじゃないの?」
「それは絶対違うよ」
「どうして言い切れるのよ?」
「……だって菜乃の母さん、去年死んじゃったから」
え……?
そ、そうだったんだ。
水斗君の表情から、笑いが消えた。目は真っ直ぐと前を向いている。
私もそれに合わせて、声が小さくなった。
「そ、そんなことが……」
「それ以来、菜乃は笑わなくなってな。気づいたら一匹狼になってた」
「だから、友達と一緒にいるところを見たことがなかったんだ」
「ああ。でも今日は笑ってるな。オレも久しぶりに見たわ、菜乃の笑顔」
あの店員のお姉さんと話している時は、すごく楽しそう。
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「右から? いや、誰も来ないだろ」
「だよね……」
「……もしかして?」
出てしまった。
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店内をのぞいた後、カフェに入っていく。
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