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第六話『二人しか知らない』

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 やっぱりここでも悠斗には一切の躊躇いがなかった。
 悠斗はさっさと瑛を剥いてしまうと、あらゆる場所をひとつひとつ確かめるように触れていった。
 身を任せたはいいものの、ふとした拍子に変な声を上げそうになる瑛は必死でその口元を覆った。
 しかし悠斗はそれを許さず、

「声、聞かせて。聞きたい」

 と、両手を外されてからは、よくわからない声が次から次へと飛び出していく。
 いつの間にか背後に忍ばされた指は瑛の深い部分をゆっくり確実に溶かしていき、ようやくその圧迫が消えたと思った途端に強く抱きしめられて、興奮で掠れた声が耳に触れた。
 
「肩、辛かったら言って」

 両手で腰をしっかりと支えられ、昂った悠斗の熱がぐっと窪みに押し付けられる。
 擦り付けるように前後されて数回、襞が広がり、ぬちっと先端を生々しく呑み込むのがわかった。

「――っ、……あっ…………」

 悠斗はそのきっかけを逃さず、ゆっくり確実に腰を進めていく。感じたことのない圧迫感に、唇の間から悲鳴のような声が漏れて生理的な涙が滲んだ。
 中にいる悠斗だって同じようにキツいだろうに、身を伏せると瑛の目尻に小さく口付け、それから喘ぐような呼吸を宥めるように唇を塞ぐ。
 優しく舌を絡められて、覚えたばかりの官能を呼び覚ますキスをされると、徐々に体から余計な力が抜けていった。

「んっ……ふぅ……あっ、あっ……」

 それまでじっとしていた悠斗が、様子を伺いながらゆっくりと腰を揺らめかせる。
 長い悠斗の指先が瑛の腕を撫で、手首を撫で、そっと指の間に絡んだ。
 初めは気遣うように緩やかだった律動は徐々に勢い付き、ぱんっ、ぱんっ、と固い肉がぶつかり合う音が部屋に響く。
 体の内側の全てを暴かれるような激しい感覚。その中に時折混じる甘い欠片意識してそれを追いかければ、甘美な痺れがじわじわと侵食していく。
 一度快感が染み付くと、それは瞬く間に全身に広がった。

「あっ、あっ、あっ……ゆう、と……っ」

 押し込まれると腹がみちみちて苦しいほどなのに、抜かれてしまえば少し寂しい。
 ある一点を擦られると意志に関係なく体が跳ねて、それに気づいた悠斗にそこばかりを狙われるとおかしくなりそうで頭を振った。

「アキちゃん、瑛……好き、好き……」

 やがて二人のリズムがぴたりと合って体ごと揺さぶられると、目の奥が熱を帯びて新しい涙がどっと溢れた。
 自分でも聞いたことのないような声が次々と溢れて、逃げるようにシーツに顔を埋めれば、空いた耳に舌をねじ込まれる。

「ひっ――あっ、あぁ……んっ!」
 
 たまらずに喉を震わせれば、持ち上がった首筋を容赦なく舐め上げられて、首の付け根を軽く喰まれるとぶるりと体が震えた。
 まるで獰猛な獣に捕食されているようなのに、勃ち上がりきった先端からは絶えずとぷとぷと蜜が溢れる。
 触れられる場所全てが灼けるように熱い。
 押し寄せる快楽の波間に勇気を出して薄目を開けて見れば、熱い眼差しがすぐそこにあった。

 (こんな悠斗知らない)

 知らない顔のインフレどころの話ではない。今まで見てきたどんな悠斗とも違う。
 その特別さに胸の奥がじんと熱くなる。
 
「――好き」
「……っ――!」
 
 不意にこぼれた言葉に悠斗の顔が一瞬歪んで、中のものがいっそう膨らむのがわかった。

 (自分だけのもの)
 
 そう思えば、心臓がきゅうと絞られる。
 離れた胸の隙間が惜しくて、触れたい、と腕を伸ばした。
 それに気付いた悠斗が持ち上がった首を押さえつけるように掌を回して、呼吸を飲み込むように唇を合わせる。
 濡れた音と肉のぶつかる音に煽られるように舌を絡ませ、吐息の中で何度も好きだと繰り返した。

「瑛――」
「くっ…………あ、あぁ――ッ!」
 
 悠斗の腰が大きくうねる。
 内側と外側を激しく擦り上げられるようにして、悠斗の手のひらの中で絶頂を迎えた。
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