ラプソディ 黒と白の恋慕

維織

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似たもの同士

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「そうか、視力を…それなら今君に僕はどう写っているんだい?」
 
「そうですね…黒く見えます 大きな大きな黒 死神さんは何色なんですか?」
 
「君の見えてる通り黒だよ でも、僕の黒は醜くて恐ろしい黒さ」
 
「そうなんですか?私にはそんな風に思えませんよ」
 
「だって僕は今まで人間に恐れ続けられて来たんだ」
 
「私には見えないって言うのもありますが、死神さんは怖くなんてありませんよ」
 
「ふふ、そうか 初めてそんな事を言われたよ」
 
少女は今までの人間とは違った
僕を恐れることも無く友達のように話してくれる
そんな神秘的な体験を出来るなんて今まで思ってもいなかった
 
「あっ、初めて笑いましたね 死神さん」
 
「楽しくてね この初めての体験のせいで」
 
「楽しい、ですか それは良かったです 私も物凄く楽しいんです」
 
「でも、君は生前友達がいただろう?僕にはそんな存在は…」
 
「いませんよ、そんな人」
 
「えっ?」
 
「私虐められてたんです 理由は分からないけど きっと眼が見えなくなったのもそのせいです」
 
「そんな事が…」
 
「だから嬉しいんです 初めて私と普通に話してくれる人が出来て」
 
この少女は僕と一緒だった
ずっと孤独で寂しかったんだ
でも、誰かと話す事が嫌いな訳では無いだろう
こんなに楽しそうに話している少女が、初めて話した男に臆することない少女が話すのを嫌いな訳がない
それはきっと僕にも言えることだろうが
 
「でも、私 もうすぐここに居られなくなるんですよね…」
 
「一つだけ方法があるよ それなら僕と話を続けることも出来る」  
 
「本当ですか?!私何だってやります」
 
「それなら覚悟をもって貰わなきゃね」
 
「覚悟…ですか?」
 
「そう、人間から死神になる覚悟だ それを君は持てるかい?」
 
「…死神ですか 凄く楽しそうですね!」
 
「確かに楽しい物なのかも知れないさでも、人間には戻れないから真剣に考えた方がいい」
 
「至って真剣ですよ 私は楽しい事が好きなだけなんです 」
 
少女は眼を輝かせている
好奇心に満ちた子供のような眼をして
決して見えはしないがそれがただの飾りではないという事は明らかだった
それなら僕もNOとは言える筈もない
 
「分かった、なら一緒に行こう 死神の世界へ」
 
「はい!」
 
僕はこの時まだ知らなかった
この出来事が彼女を変えしまうと言うことを。
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