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グレッグとミランダが盛り上がる傍らで、私はある人物を思い出さずにはいられなかった。

いつも私の傍で優しい言葉を浴びせ、私に笑顔を向けていたのにも関わらず、私を手酷く傷つけた幼馴染。パトリシア。
年が近く、常に会話の主導権を握っていた。

ああ、また、こういうタイプ……
ミランダには申し訳ないけれど、そう感じてしまった。ただそれは私が神経質になりすぎているだけだとも自覚している。

だから態度に出さないよう、打ち解けるように努力した。
要は笑顔で相槌を打ち続けた。

「とうわけで、私は世界一幸せな男というわけだ」
「浮かれているのね」
「ミランダ、君が浮かれる日を心待ちにしているよ」
「私はもう結婚は懲り懲り」
「ふむ。気が変わる日が来る事を願おう」

そこでミランダが私のほうへと身を乗り出した。

「気を付けて。結婚は幸せな事だけではないのよ」
「え……」
「苦労するの。頑張ってね」
「……」

グレッグと結婚してから、年上の貴婦人たちに励まされ続けていた私は、この忠告に見事に怖気づいてしまった。

私は恵まれていた。
だから立ち直る事ができた。

それをわからせてくれる出来事だった。

「ミランダは悲観的になっているようだ」

グレッグはまた肩を竦める。
普段なら私への愛情を感じる仕草でもあるけれど、ミランダに対しては少し無神経が過ぎない?
 
ミランダの支えになれたら。
その思いが芽生え、これまで私が受けた多くの励ましに背中を押され、私はミランダに尋ねた。

「ミランダ。周りに、誰か気になる方はいらっしゃらないの?」
「え?」

ミランダが目を丸くする。
グレッグは穏やかな笑顔を私に向けると、何かを託すように目を細めた。

ミランダと仲良くなってほしいのね。
やれるだけ、やってみるわ。

「私もグレッグに声を掛けられた時は、強引な人だと感じたのよ」
「ええっ?」

グレッグやめて。騒がないで。

「けれどとても記憶に残って、気づいたら心の支えになっていたの」
「ああ、よかった」
「今も心強い支えよ」

ポンポンとグレッグの腕を軽く叩いて機嫌を取りながら、私はミランダの目を見つめる。
美しく、それでいてどこか陰の潜む、強がった悲しい瞳を。

「あなたは何も悪くないのだし、とても素敵な貴婦人だわ。誰かに愛されて幸せになるべきよ」

少し強引かもしれない。
でも、同じような事を私も言われたし、それが力になったのだ。

生意気だと嫌われてもいい。
それでも背中を押したかった。この時、後悔はしないと心に決めていた。
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