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七年前 七
しおりを挟むマリナは、玄関口まで歩いてきた。話すことで苦悩に満ちた現状が解決するかもしれない、と思ったからだ。
「わたしは——その、金林さんのことについては、なにも知らないんです」
「マリナ! あんたは関わらなくていいのよ」
と、母親が制するのを無視して、
「これは、話しておいた方がいいかもしれないと思って。だってお母さんに話しただけじゃ、この悪夢は終わらない」
母は、口を横一文字に結んだ。
「悪夢? 悪夢というのは?」とメモを取り出す織田。
それを見て、マリナは小声で話しはじめた。
「中路シュウサクが、わたしの身体を犯そうとする夢を見るようになったんです。でも、それは単に性的な意味じゃない。わたしの身体の中に入り込んで、わたしの動きを乗っ取ろうとするんです。最後には意志まで、わたしのすべてを自分のものにしようとしている」
「動きを乗っ取るというのは、例えば?」と織田。
「自分はそうしたいと思っていないのに身体が勝手に動くんです。あくまで夢の中だけですけど、中路シュウサクの意志でノートに文字の羅列を書いたり、向精神薬を薬局から盗んで飲んだり、果てには自らの身体を自分の手で……」
「それは、夢の中での話、ということだね?」
「そうです。でもなぜか現実感を持っているんです」
まるで意識を乗っ取られたように、次々に言葉が出る。
「高校生の頃の夢。ほとんど学校に行けず、彼の幻影に苦しむ夢です。でもその後わたしは職業を手に入れ……ああ、それが警察官だったんです」
「なるほど。それは、苦しいことだと思うけれど、ちょっと質問させてもらうね。中路シュウサクが消えた。その捜査にあたってた金林も消えた。そしてきみの夢。何か、心当たりがあることはない?」
「それは……」
マリナはそこでようやく、我にかえり、憔悴した様子になった。
ややあって、織田はメモをしまい、
「また近いうちに、訪問させてもらうかもしれません。ご協力ありがとうございました」
と一礼して、戸口から去った。
母は頭を下げたままだった。
マリナは、沈黙を保ったままダイニングルームへ向かう。
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