殺戮兵器と白の死にたがり

死の香り【１】

　体感的には、既に土地を乗っ取った気でいるのに。戦争の終わりは、依然宣言されなかった。
　勝敗の傾きさえ、ここには届けられない。ただ、食料なんかも届かなくなっており、厳しい戦況にあるのだとは悟った。

　どこから湧いてくるのか、移動する先に必ず敵は現れる。必死で命を繋ごうとする人間を、本能のまま殺し続けた。
　無惨な姿に、リンジーを重ねながら。
　
　空腹を満たすため、静けた地で木の実を探す。痩せた木々にしがみつくのは、枯れ気味の身ばかりだ。
　少し遠く、赤い実の存在を捉える。ふっくらと膨れた実は、僕の足を引き寄せた。

「これは驚いた」

　綺麗な瞳が丸くなっている。少し髪の伸びたリンジーは、一人きりで実をもぎっていた。籠には、見知らぬ果実が何種か身を寄せあっている。

「僕もびっくりしたよ。あ、安心して摂り続けててよ。今日は僕一人で来たから仲間はいないし。君を襲う気もないし」

　言いながら、半ば無意識に神経を広げる。近くに、もう一つだけ気配があった。だが、敵意はなく問題ないと流す。

「そうなのか。私は今日食料係だから、調達にきてるんだ。君もそう？」
「僕も目的は一緒。でも自分の分だけあればいい」
「そうか。なら、思ったより採れたから少しあげるよ」
「は？」

　またも理解不能な行動に、思考を回さず拒否してしまう。リンジーはやはり、とことん他人に甘い。

「いや、いいよ」