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第十章昴々渓・チチハル
第十章第八節(戦闘開始)
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八
十八日午前三時、師団の幕僚たちは“夜食”並みに早い朝食を済ませ、戦闘指令所へと集まった。午前五時には各部隊も所定の位置に展開し、予備隊からは「敵騎兵の襲撃に備えて警戒配備に就いた」との報告も届いた。師団長以下全員の攻撃準備が整った。
すると夜明けまでまだしばらくあるというのに、何に怯えたか、敵はあらぬ方向へ大砲を撃ち始めた。次々と撃ち出される砲弾は闇へと消え、轟音ばかりが殷々とこだました。
東の空が白みかけた午前六時過ぎ、暁霧の中から友軍の飛行機が現れた。
味方の歓声が上がる。第一次大戦での飛行隊の活躍により、戦闘における制空権の重要性が認識されるようになった。しかし、北大営への一撃によって張学良軍側の飛行機はすべて鹵獲されている。上空には日本軍機しかいなかった。
飛行機はぐるりと旋回しながら狙いを定め、敵陣地へ爆撃を開始した。午前六時三十分になると夜は完全に明け、夜半から準備を整えていた味方の砲列もいっせいに火を吹いた。いよいよ戦闘開始である。敵砲兵も負けじと司令部めがけて撃ち返してくる。殷々たる彼我の砲声が朔北の荒野に轟く。飛行機は地上すれすれまで舞い降りて爆弾を投下するや、再び上昇、旋回運動を繰り返した。
その時誰かが東の方を指して、「敵の騎兵だ」と叫んだ。師団司令部に緊張が走った。
十八日午前三時、師団の幕僚たちは“夜食”並みに早い朝食を済ませ、戦闘指令所へと集まった。午前五時には各部隊も所定の位置に展開し、予備隊からは「敵騎兵の襲撃に備えて警戒配備に就いた」との報告も届いた。師団長以下全員の攻撃準備が整った。
すると夜明けまでまだしばらくあるというのに、何に怯えたか、敵はあらぬ方向へ大砲を撃ち始めた。次々と撃ち出される砲弾は闇へと消え、轟音ばかりが殷々とこだました。
東の空が白みかけた午前六時過ぎ、暁霧の中から友軍の飛行機が現れた。
味方の歓声が上がる。第一次大戦での飛行隊の活躍により、戦闘における制空権の重要性が認識されるようになった。しかし、北大営への一撃によって張学良軍側の飛行機はすべて鹵獲されている。上空には日本軍機しかいなかった。
飛行機はぐるりと旋回しながら狙いを定め、敵陣地へ爆撃を開始した。午前六時三十分になると夜は完全に明け、夜半から準備を整えていた味方の砲列もいっせいに火を吹いた。いよいよ戦闘開始である。敵砲兵も負けじと司令部めがけて撃ち返してくる。殷々たる彼我の砲声が朔北の荒野に轟く。飛行機は地上すれすれまで舞い降りて爆弾を投下するや、再び上昇、旋回運動を繰り返した。
その時誰かが東の方を指して、「敵の騎兵だ」と叫んだ。師団司令部に緊張が走った。
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