【完結】夢魔の花嫁

月城砂雪

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第四章(挙式編)

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 あまりに大きな絶頂感に、飛んだ意識が戻った時。ジュゼは挿入されたまま抱き上げられて、螺旋階段を上る途中だった。
 一歩の度に、あまりにジュゼが喘ぐものだから、唇はもうずっと塞がれたままだ。甘えた吐息とくぐもった喘ぎは、淫らな衝動に駆られる子猫のようで。意識がない間も手足を絡ませて喘いでいた己のはしたない姿を想起したジュゼは、段を上がる度に何度でも達して足指を震わせた。
 螺旋階段の最上部は大きく開けて、温かみのある寝室を模している。ステンドグラスから差し込む光に照らされて、虹色に輝いて見える寝台の上に、二人は当たり前のように倒れ込んだ。深く挿入されていた性器を一度引き抜かれて、喪失感に泣き声のような嬌声がこぼれる。
 花嫁と花婿が愛し合うための特別な場所として用意された寝台を、天蓋から下がる薄衣のレースがふわりと包み込んでいた。薄い布地を透かす虹色の輝きは、嫌が応にも人の世の教会を思い起こさせる。けれど、寒風を耐えた屋根裏で憧れていたものが、今は目の前にあった。柔らかな寝台と、温かな寝具と――自分のことを、愛してくれる瞳が。
 二人分の体重を受け止めて、くしゃりと形を変える滑らかなシーツ。高級な肌触りの布地がさらりと素肌に触れて、手袋がいつの間にか取り払われていることにようやく気付く。二人の吐息が寝台の中の空気を熱っぽいものに変えて、それ以上の脱衣も待てずに再度抱き合えば、ほどなくして情熱的に唇が重なった。

「っ、はぁ、ふ……」

 正面から抱き合い、口付けを交わし、お互いの体に欲望のままに触れて。互いに急所を晒し、柔らかな皮膚を優しく愛撫すれば、慈しみながら触れる指先が体に染み込むようだった。
 レーヴェは花嫁のヴェールに覆われたジュゼの髪に指を通し、その感触を楽しむ。体を開き、魂を明け渡した花嫁は今夜から、名実ともに花婿のものだった。互いを互いのものと定められた喜びと興奮のまま、再び深く口付ければ。ん、ん、と。花嫁は鼻から抜けるような甘い声を出す。甘い舌を捕まえようとすれば、自ら捕らわれようとするかのように無抵抗に差し出されて、満たされた支配欲が獰猛に疼く。既に興奮し切ってそそり勃つそれをジュゼの尻穴へと擦りつけ、挨拶代わりに亀頭をちゅぷちゅぷと軽く食い込ませれば、堕ち切った体は待ちわびたモノの登場に歓喜し、しゃぶりつくように亀頭に絡みついた。
 雄の気配にあてられて、じゅんと内壁が潤み、尻穴がひくひくと切なく痙攣する。今すぐ挿れてほしい。そんなはしたない懇願ばかりが、ジュゼの思考を塗り潰していった。

「僕、僕……っ! もう、我慢、だめ」

 過ぎた興奮のせいか、呼吸が荒い。ジュゼは蕩けた声を出しながら、衣装の裏地に尻を擦り付けた。たおやかな花嫁衣裳の下では、前も緩く芯を持ち、ピクピクと震えている。体をくねらせて前後に揺すり、僅かな摩擦にさえ感じて喉を仰け反らせる。

「レーヴェっ……」

 涙を滲ませながら、それでも直接的なおねだりを口にすることができずに震える花嫁が、あまりにも健気で可愛らしい。縋り付き、必死にレーヴェを煽って誘惑しようとするジュゼを見て、レーヴェは愛しさが込み上げた。
 我慢ができないのはこちらも同じなのに、欲しがって泣いてしまう姿があまりにも可愛くて、焦らすような問いを投げかけてしまう。

「ジュゼ、私が欲しいですか……?」
「あぅ、あっ♡ ちょう、だい……っ♡」

 感情が昂ったジュゼはほろほろと涙を溢れさせ、レーヴェの手に頬擦りしながら静かに泣いた。
 この想いの前では、羞恥も慎みも、何もかもが無意味だった。愛しい気持ちが、欲情が、溢れ出して止められない。全身は火照って股からは蜜が垂れ、腹の奥は喪失に切なく疼いている。
 レーヴェはジュゼの両足を掴み上げ、太腿をぐっと折り曲げて、恥ずかしい場所を丸出しにした。花嫁衣裳の裾が胸元に落ちて、ジュゼは苦しい息の中に感じる陶酔に瞳をとろとろと蕩かせて震える。

「あぅ……」

 花婿に全てを暴かれる期待に、穴はくぱくぱと開閉と収縮を繰り返し、すっかり濡れそぼっていた。同様に濡れた性器もまた、艶めかしいぬめりを纏いながら甘く勃起している。とろりと先端から蜜を垂らす、ジュゼの男性器。悪魔にお腹一杯に愛されて、ようやく熟したそこから白濁を吐き出すことを覚えても、心から求めるのは胎の奥での快楽だった。
 抱かれる喜びに染まり切った体は甘く熟れて、官能の香りを立ち昇らせながら雄を淫らに招く。

「もう、こんなに濡れて……」

 レーヴェはジュゼの穴の縁を指でなぞった。縁のしわを伸ばすように爪先で軽く引っ掻かれる、その刺激だけでひくんと締まる。自ら愛液を垂れ流すようにと躾けられた粘膜から溢れた蜜で、入り口はてらてらといやらしく光っていた。
 初めての夜に、体を開かれてから。何度もここで、蕩けるような性交を繰り返した。繰り返し繰り返し、何度でも、長大に過ぎる性器を挿入されて躾けられた穴だ。ジュゼは一番恥ずかしくて敏感な所をレーヴェに見られていることを意識して、極度の興奮から再び愛液をとぷりと溢れさせた。
 普通の一生分以上の営みを済ませても、まだどこか初々しく見えるその場所は、濃い桃色から紅色のグラデーションを曝け出して震えている。どんな角度からも雄を包めるように縦に割けた健気な穴に手を添えたジュゼは、自らそこを割り開きながら、潤んだ瞳でレーヴェを見上げた。

「なかに、きて……」
「……ええ」

 溢れる情動にすすり泣くジュゼの身体に、逞しい身体が覆い被さる。雌雄一対の契約を済ませた身体は、己の雄の接近にさえ感じ入って、膣をぬるぬるとした愛液に満たした。
 ジュゼは大きく股を開き、胸を高鳴らせて挿入を待つ。恥ずかしい格好なのに、それ以上に伴侶への愛しさが勝った。うっとりと頬を染めて、潤んだ瞳に夫を映す花嫁の愛らしさに幸福を感じながら、レーヴェは蕩けた穴へと先端を押し付ける。微かに力を込めれば先端が埋まり、それだけの衝撃で花嫁の身体がわなないた。
 尻穴の入り口を亀頭で捏ね回して焦らした後、満を持して侵入が開始される。ずぶ、と埋まったペニスは簡単に奥まで入り込み、ずるずると腸壁を抉りながらジュゼの内側を征服していった。

「あっ、あぁ……っ♡」

 迸る快感に肌がぞわぞわと粟立って、甘い吐息がこぼれる。愛する男の、勃起した逞しい性器。張り出した先端が襞を捏ね、柔らかな鱗を纏った太い幹が肉膣を埋め尽くし、浮いた血管がずくずくと急所を責め立てる。
 よく濡れた穴は一欠片の抵抗もなく、人の身には規格外の性器をすんなりと受け入れて行った。熱い肉は狭い膣を割り開き、みちみちと中を押し広げながら、圧倒的な質量を教え込む。満たされた襞が歓喜に潤み、きゅんきゅんと雄を締め付けて歓待をした。

「いい子ですね、ちゃんと息をして……?」
「あぅっ♡ うぅ、はふ、ふぁ……♡」

 歓喜のあまりに息も忘れて感じ入っていたジュゼを咎める声にも、身体がぴくぴくと反応をしてしまう。浅い呼吸の度に肉膣がうねり、逞しいペニスにいやらしく絡みついた。
 肉壁を通過するとき、奥に到達するまでに、特に感じる場所がある。ふっくらと膨らんで淫らな訴えを囁くその部分をぐりぐりと押し潰すようにしながら、レーヴェは殊更にゆっくりと腰を進めた。

「あぅ、あっ、ぁぁあっ……!」

 気持ちいい場所をゴリゴリとゆっくりと抉られて、大きく喘ぐ。気持ちがよくてたまらないのに、止めを差してもらえないもどかしさに腰が揺れ、抱え上げられた足先がピンと伸びて突っ張った。緩慢な絶頂に襲われる体が小刻みに痙攣し、頭の奥がじんと痺れる。
 ずぷん、と性器の根本までが、小さな穴を埋め尽くした。芳醇な精気を満たした睾丸が、ふるふると震える尻肉にぴたりと触れて、あまりにも逞しい雄の気配に圧倒されて目が眩む。たった今からその精気を、たっぷりと注がれるのだと期待して、どくどくと煩いくらいに血液が脈打った。
 しっかりと奥まで結合し、一つになってしまえば。相手の熱や息遣いも、明らかな興奮を示す脈動も、全てを感じ取ることが出来た。内壁は愛しい雄の形に馴染み、優しく包み込む。触れ合う肌の境界が蕩けてしまいそうに気持ちがよかった。

「ずっとこうして、深く繋がっていましょうね……」
「あん♡ あっ、あう♡ うん……♡」

 小刻みに性器を出し入れされると、開発されたジュゼの体は、途端に敏感に快感を拾って綻び出す。
 脱ぎ去る余裕もなかった花嫁衣装は、溢れた汗にしっとりと濡れて透けていた。服越しの感触をもどかしく思いながらも、ぐっと体重をかけられる度に奥に広がる快楽の先を求める気持ちには、もう待ったが利かない。
 花嫁はか細い手を花婿の背に回し、愛に濡れた瞳で一途に続きを請うた。
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