【完結】夢魔の花嫁

月城砂雪

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第二章(受胎編)

2-6

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 暖かな口中から解放されても、夢魔の唾液が染み渡ったペニスは、胎を焼くような快楽をなおも断続的に伝えてくる。正常な呼吸を忘れた喉からは、引き攣れたような息が切れ切れにこぼれた。

「ひぅ……♡ は、ひっ……♡」
「大丈夫ですよ。ゆっくり呼吸をしてくださいね」

 苦しい息を吐き出す胸を宥めるように擦った妖魔が、その指を肩口の紐に滑らせる。だめ、と。思った次の瞬間には、上体を覆う服の紐も解かれて肌を露わにされた。
 背を浮かせるように抱き上げる手にも抵抗を示せないまま、布地を引き抜かれて。うっとり笑う赤い瞳に映る己の姿を気にしたジュゼが、重い首を緩慢に動かして身体に目を向ける。
 肌の感触としては全裸に等しいが、予想に反して、胸の下辺りにまだ紐の結び目が見えた。胸も腹も局部も丸出しでは、とても下着と呼べる代物には思えなかったが。背中の半分と、臀部を覆い隠す程度の薄衣はまだ身体に残されているようだ。だが――それ以上に目立つ、はっきりとした異常を目に。そのように些細な情報は、ジュゼの頭から一瞬で消し飛んでしまう。

(模様……?)

 下腹に、まだ薄っすらと。薄明りに濡れたように光って見える文様が、目視できる程度の濃さで刻まれている。
 ジュゼの視線を追って、言わんとするところに気付いたのだろう。妖しく微笑んだ悪魔が、艶めかしい手つきで腹部をまさぐった瞬間、不意に流れた快楽に打たれたジュゼが喉を浮かせて嬌声を上げた。

「はきゃっ♡ あ……っ⁉」
「ふふ。あなたは、ここに私の精を受けましたから」

 もう身体が準備をはじめているようですね、と。笑う声を耳に吹き込まれながら、美しい指に身体をまさぐられる。あっ、はっ、と。喉を浮かせて喘いだジュゼは、下腹部から込み上げる異様な感覚に全身を粟立たせて震えた。文様の曲線をなぞるように指が動く度に、開かれたばかりの身体の内側がきゅんきゅんと疼いてたまらない。
 夢魔の精を奥に注がれた瞬間から、花嫁はその体で、赤子を孕む準備を始める。雌として扱われることを受け入れるまでは機能しないはずのその場所は、ジュゼの心の在り処に従ってすでに番の雄を求めて緩く花開きつつあり、発情した獣さながらにぬめる愛液に潤み始めていた。

「可愛い模様ですね。ふふ、花嫁はみんな、それぞれ浮かぶ紋が違うんですよ」
「あっ、あっ、ひぃっ⁉」

 きゅう、と。柔く抓られた瞬間に、悶え転がらんばかりの快楽が全身を巡って、視界に真白い星が散る。受け止め切れない官能に身悶えて啜り泣くジュゼの唇を食む妖魔の大きな手のひらに、なおも優しく腹部を撫で擦られ、ジュゼは身体を跳ねさせながら軽く達した。

「これからはここも、全部あなたの気持ちのいいところになりますからね」

 例えば、と。下肢のまだ淡い茂みの微かに上、濡れる紋章が交差を結ぶ下腹の一点を、戯れるように軽く突かれる。じん、と。甘く燻ぶった快楽に火を灯すように、妖魔が熱い魔力をほんの少量だけ流してやれば、それだけでジュゼの身体は鞭で打たれたように跳ね、甘く爛れた嬌声が上がった。
 咄嗟に逃げを打って伸び上がった身体を容易く捕まえられ、脚を抱え上げられながらその場所を柔く抓られて。剥き出しの性感帯を嬲られるに等しい衝撃に、腰の奥が蕩けそうになる。ジュゼは甘い声で喘ぎ泣きながら、腰をがくがくと震わせた。

「あっあっあっあっ♡ あ、ああ、あぁんっ♡」
「ふふ、すごいでしょう?」

 他にも、と。下腹をまさぐりながら、妖魔は何事かを続けて囁いていた様子だったが、為す術なく喘ぎ散らすジュゼの耳には、それを言葉として認識するほどの余裕がない。抱え上げられ、踏ん張ることもできない足がもがくように宙を蹴り、何度も力なく脱力した。
 すっかり息が上がってしまうほどに乱されて後、気が付けば愛撫はひどくゆったりとしたものに変わっていて。汗に濡れた腹の全面を緩やかに愛しげに撫でる妖魔が、うっとりとした瞳で柔らかく微笑んだ。

「あなたはまだお小さいから、母体の身体の仕組みはご存じないかもしれませんが。この可愛い模様の真ん中が、赤ちゃんのお部屋になるんですよ」
「あか、あ、あかちゃん……」
「そうですよ。元気にたくさん産んでくださいね」

 ここから産んで、ここからお乳をあげるんですよ、と。連続する快楽に、いつの間にか外まで溢れた淫液でぬるぬるの尻穴を薄い尻たぶごと揉み込まれ、もう片方の手で乳首を抓り上げられて。込み上げた官能に濁った声で喘ぎながら、ジュゼはのけ反って激しく頭を横に振った。

「でな、でないからぁ……あ、ぁん♡ おっぱい、れないよぉ……っ!」
「不安ですか? 大丈夫ですよ、ちゃんと出るようになりますからね」

 もう弄ってしまいましょうか、と。優しく笑った妖魔の指先が、見るも怪しく発光する。魔力を帯びたその指先で、赤く腫れた剥き出しの乳首を抓まれた瞬間に、全身を貫くような快感が走ったジュゼは狂ったように身を捩った。
 器用な指先はジュゼの抵抗など意にも介さず乳首を弄び、性感帯として立派な役割を果たせるようにと順調に熟れさせていく。初めての夜に男に触れられるまで、快楽の何たるかも知らなかった可憐な乳首は、ひとたまりもなく陥落して瞬く間に肥大した。膨れた乳首に爪を立てられ、淫らな魔力を注がれながら胸部全体を揉みこまれて、込み上げた官能にジュゼが身をくねらせて咽び泣く。

「はぁっ、ぅあぁんっ! おっぱい、やめてぇ……っ」
「ふふ。可愛い、可愛い。私の。ふふ」
「ひぎっ? んぃっ、ぃぃい~っ! おっぱい、おっぱいだめぇ♡ あっ、のびっ、のびちゃう……!」

 きゅっ、と。甘くつねられた乳首を引き伸ばすように摘み上げられ、引っ張られて。まるで娼婦のようないやらしさを持った大粒の果実へと変わり果てた乳首を、なおもねっとりと捏ね回されて、ジュゼは髪を振り乱して喘いだ。淫らな魔力に犯された毛細血管が胸の内部で膨張し、繊細な神経を巻き込みながら乳腺へと変化していく。ぶちゅ、ぶちゅ、と。いやらしい音を立てながら膨らんでいく乳首に、ジュゼは熱い息を必死に飲みながら悶え善がった。
 乳腺の集まる乳輪が、ふっくらと盛り上がるように体積を増していく。雄に可愛がられるために媚を振りまくように変わりゆく乳首を、妖魔はなおも執拗に弄り続け、止まらない官能にジュゼの悲鳴が甘みを帯びる。

「あっ、あぁっ♡ やっ、だめ……あっ、んん♡ ん~~……っ!」
「いい子ですね、ジュゼ。私があなたをたっぷり撫でるだけで、何度でも上り詰められるようにしてあげますからね」

 たくさん気持ちよくなってくださいね、と。笑い交じりに優しく耳に吐息を吹き込まれて、ジュゼは呼気を荒げながら身をくねらせた。力の入らない腕をいくら伸ばしたところで抵抗にはならず、胸から込み上げる切ないほどの快楽に翻弄される全身の感覚が狂っていく。
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