【完結】夢魔の花嫁

月城砂雪

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第一章(初夜編)

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「あ、あつっ、熱い……っ⁉ あっあっあっ、ああっ⁉」
「いい子ですね。痛くはしませんから、大人しくしていてくださいね」

 手が滑ったら危ないので、と。笑う妖魔の瞳が悪戯っぽく光った。どう危ないのかは想像もつかなかったが、痛みを感じないのが不思議なほどに、腹部は熱く燃え上がっている。
 ひぃ、と。短く息を飲んだジュゼは、呼吸を浅くしながらその未知の感覚を耐え忍ぶ。溶けた金属を胎内に流し入れられているような酷い違和感と、肌の内側を這い回るぞわぞわとした――官能を、耐えて。歯を食いしばって懸命にやり過ごそうとするが、同時に乳首への責めまで再開されたのでは堪らない。あぁ、ああっ、と。震える声で喘ぎながら、体を弓なりに逸らして強い感覚を逃そうとする。苦し紛れに悶える手足の指がシーツを引っかき、慣れ親しんだ寝台を淫らにぐちゃぐちゃに荒らしていった。

「もう少しで綺麗になりますからね。……ふふ、ここはこれからずっと、赤ちゃんのお部屋になる場所ですから。念入りに」

 そう囁きながら、妖魔はジュゼの臍の周辺をぐりぐりと抉るように抑え付ける。訳が分からないままにびくびくと腰が跳ね回り、未知の恐怖に上擦った悲鳴がこぼれた。

「あっ、やっ、こわい! こわ……っ、あぁっ‼」

 ぐうっ、と。息が苦しくなるほどに強く押さえつけられた腹の中で何かが弾けるような衝撃が走り抜け、いつの間にかはしたなく開いていた股の間でも何かが弾ける。じわりと温かくなる股間に、粗相を悟ったジュゼは真っ赤になって涙を滲ませた。
 ひく、と。耐え難くしゃくり上げた声に気付いた妖魔は顔を上げ、眦に浮かんだ涙にそっと口付ける。労りを込めて頭を撫でられて、その優しさに惑った青い目にはますます涙が溢れてしまった。

「びっくりさせてしまいましたか? お腹を少し綺麗にしただけですから、大丈夫ですよ」
「……ぼく、今。お漏らし……」

 教会に引き取られたときにはもう、粗相をできるような幼さは残っていなかった。寝台を濡らしてマザーに慰められる幼子のことを羨ましく思いながら、せっせと洗濯を手伝うことが日常であったジュゼは、つい。慰めを期待するような声を妖魔に投げかけてしまった。
 言葉にしてしまった後で、恥ずかしいことを口走った自覚が遅れて来て、耳や首までが朱に火照る。そんなジュゼを見下ろした妖魔は、ふふ、と。甘い声音で囁き笑った。

「さあ、本当にお漏らしかどうか、見てみましょうか」
「えっ……ひゃっ⁉」

 ずる、と。一思いに下着ごと着衣を引き下ろされて、濡れた感触が股間から引き剥がされる。外気に触れて冷やりとする下肢の感触に驚いたジュゼが伸ばした手を捕まえると、妖魔はそのまま、か細い両腕を頭上で一纏めに抑え付けた。

「隠さないで。隅々まで見せてください」

 全部気持ちよくしてあげますから、と。囁かれた耳が震える。まるで何かの呪文を唱えられたように、お腹の奥の方がきゅんと疼く気配がした。
 美しい姿をした妖魔の華やいだ顔立ちの中、一際美しい宝石のような瞳に愛を込めて見つめられると、身体が痺れて、力が抜ける。瞬く間に抵抗の気力をなくした手が、くたりと寝台に屈すると、妖魔は目映い瞳に滴るような愛を浮かべて甘く笑った。

「ひゃっ――あっ、ぁんっ!」

 大切な場所を唐突に握り締められて、ジュゼは成す術もなく悲鳴を上げる。ぐちゅ、と。粘った音を立てた下肢よりもなお温かい掌が、無防備にさらされた急所を優しく握り込んで摺り上げた。
 粗相をした、と。そう思い込んでいた下肢は、尿よりも粘性の高いぬるりとした液体に濡れていて。熱く大きな掌にすっぽりと包まれて柔く擦られると、そのぬるぬるとした感触がたまらなく悦かった。あぁ、と。思わず漏れた、ねだるような吐息を合図に、妖魔の手が身体中を這い回る。
 愛撫を再開された乳首はすぐにぷくりと膨れ、与えられる性感に従って素直に快楽を拾うようになった。乳輪ごとぢゅうぢゅうと強く吸われながら、舌先では先端のこりこりした部分を突かれる。一方では指先でくりくりと乳頭をすり潰されて、股座と併せて三点からの刺激に身体をくねらせて身悶えていると、唐突に舐められていなかった方の乳首に思い切りしゃぶりつかれた。
 息を飲んで、思わず目を向けてしまったその先に腫れ上がった己の乳首を見て、ジュゼの身体が驚愕に竦んだ。今日までは快感を知らなかった淡い色の乳首は、まるで熟れた実のように赤く腫れていて。唾液に濡れながらてらてらと光るその淫らな様を、忘れがたく目に焼き付けたジュゼの背を、抗いがたい官能が這い上がった。

「あっ、ん。きも、ち……ぃあっ⁉ ん、ん……っ!」

 緩やかな快楽の狭間に、脳を打つような強烈な快感が入り混じって。息が上がり、頭がくらくらする。
 懸命に酸素を取り込もうとする唇を戯れのように吸っては、妖魔はジュゼの小さな舌に甘い唾液をとろりと執拗に絡ませた。重力に従って喉奥に流れ込むその蜜を飲み込む度に胎内がきゅんきゅんと疼き、甘やかな快楽が抵抗の気力を削いでいく。意識とは無縁の涙の溢れる滲んだ視界の端に、月明かりとは異なる炎の輝きが映り込んで、ジュゼはぎくりと身を強張らせた。

「あ、あ……あぁっ⁉ やっ、あっ、熱……っ!」
「大丈夫ですよ。あなたの肌は傷付けませんから」

 邪魔なものだけ燃やしてしまいましょうね、と。微笑む妖魔がはだけた服を撫でれば、撫でられた場所から朱色の炎が燃え広がって服を焼き払った。
 肌には痛み一つなく、寝台に燃え移ることもない魔法の炎は、見た目は日常的に目にする炎と何ら変わりない。ジュゼは恐怖していやいやと暴れたが、宥めるように乳首に吸い付かれれば、口からは甘ったるい嬌声がこぼれてしまう。初めての性の愉悦を雌の側として刷り込まれたジュゼの身体は、すでに番の雄への恭順を示して淫らに躾けられつつあった。
 灰も残さずに衣服が焼け落ちて、生まれたままの姿を美しい妖魔の目前に晒してしまったジュゼは羞恥に身悶える。せめて部分なりと隠そうとするジュゼの両手を容易く片手で戒め、乳首から唇を離して全身を嬲る妖魔の視線に犯された体が淡い紅色に上気した。

「だっ、だめ。みないで……! みっ、あっ、んむっ! ぅ、ふぅ……っ」

 制止の声を上げようとした唇にかぶり付かれて、蕩けるようなその口付けに思考が滲む。嵐のようにジュゼの感情をめちゃめちゃにする情熱的な口付けと、頬をすりすりと撫でる手指の優しさのギャップに心も体もついて行けない。振り回されるがままに快楽を享受する体から、為す術なく力が抜けて行く様に、妖魔がくすりと甘く笑った。

「可愛い人。あなたが早く気持ちよくなれるように、ここも擦ってあげましょうね」
「んむ、ん……んぅ、ん? ひいっ⁉ や、やぁ……んひぃんっ‼」

 しゅるりと衣擦れの音が耳に届いて、すぐに。最も敏感な場所に、ぬるりと濡れた灼熱を感じて腰が怖じける。
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