36 / 60
二人の来訪者と追憶
35
しおりを挟む
「夫人は、お飲み物は紅茶を良く嗜んでおります。炭酸は飲まれたところを見た事はございませんね」
そう淡々と話す侍女にお嬢様も不安そうな表情になる。それは想定の範囲内だ。
「いえ、問題ありません。紅茶にもフルーツは合うんです。アイスティーにフルーツを入れて楽しめます」
グラスに先程準備していた冷やしておいた別の容器から紅茶を注ぐとグレープフルーツとオレンジを選び入れる。侍女に渡すと少し戸惑われたが、お嬢様が飲んで欲しいと言うといただきますと返事をして飲んでくれた。
「あら、冷たくて美味しい……」
「甘みと酸味があって、色々試してみるのも楽しみの一つだと思います。歯応えを加えるなら白玉やナタデココ……を入れたりしても」
「てか、カノンくん……これ、お酒じゃないっすか」
「あ、はい。そうなんですよ。お酒だと少しきつい方もいると思うんですが、こうするとデザート感覚で見た目も華やかになりますし、女性や男性問わず一緒に楽しめるようになると思いますよ」
驚いてるアレン副隊長を他所に底のあるグラスにブランデーを少し入れ、炭酸とフルーツを入れる。甘い香りとお酒の仄かな香りがして、大人のデザートとしても美味しいと思う。
ただお酒飲める年齢になる前に死んだり、付き合いで嗜む程度に飲みはしてもそんな事をしている余裕がなかったり、今はそもそもお酒飲めるのかすら危うそうな気もする。
軽く匂いだけで、くらりとしそうになったが人魚族の僕はお酒を飲めるのだろうか。
「へぇー、良く店とかではレモンやライムとか添えられてますけど、こんな風にデザート感覚で食べるのは無いっすよね? あ、これ飲んで良いんすか?」
「いや、これは流石に今は……」
そんな事は梅雨知らずなアレン副隊長は関心したようにブランデーの入ったお酒を見ながら問い掛けてきたが、流石に仕事中なのとまだ昼間な為却下した。アレン副隊長は物欲しそうに残念そうな顔をする。
「これなら甘い物が苦手な侯爵様も喜ばれるかと思いますよ、どうでしょうか?」
かなり手軽で簡単な方法の為、少し心配になったが、ただ手軽ではあるが、フルーツはそこまで安いものでも無いと思う。ここまで種類を入れて彩りの華やかさを出すには、それなりに金銭的な余裕も必要になってくる。侯爵家のお嬢様な為、その心配は無さそうだけど。
「ええ、これならお父様もお母様もきっと喜んでくれると思いますわ」
「良かったです。他のは少し必要なものと時間が掛かるので、お嬢様も少し急いでいらしたかと思ったので」
ほっと胸を撫で下ろす。お嬢様が喜んでくれて良かったが、後は侯爵様方の反応次第だけど、こんな純真なお嬢様からの真心だからきっと大丈夫な気もする。
「他には何を思い浮かびましたの!?」
好奇心からか聞きたいと話すお嬢様。色々と浮かんだものはあるが、話す分には大丈夫かな。
「えっと、他ですとそうですね、氷を削ってシロップを掛けるとか、アイスクリームは作ると少し時間掛かるだろうけど、甘い物も苦手な方でも食べやすい──」
「えっ!?」
お嬢様の動きが止まる。何事かと思うと周囲にいた何人かも驚いている様子。何かまずい事でも言っただろうか?
「アイスクリームってあいすくりんの事!?」
きらきらと目を輝かせるお嬢様。アイスの事をここではあいすくりんと言うのか。何だか懐かしい響きだな。どうやらこの様子だとアイスは現存するんだ。それにしても何か、雰囲気がどうも変な気がする。とりあえず、頷いたがお嬢様は目を見開いて驚いた。
「カノン様は皇宮であいすくりんを食べた事があるのね!? しかも、作り方まで知っているなんて凄いわ!」
この世界ではアイスってそんな高貴で高級な食品なの?
少なくとも薄らとしている二度目の人生では、貴族だったとは思うがアイスクリームはそもそも存在していなかったはずだ。それともその頃の僕が知らなかっただけか、覚えていないか。
今世では皇宮何て、ましてや帝都にすら行ったことがない。まさか、あいすくりんはこの世界では貴族階級以上しか味わえない代物で、知っている方がおかしいの?
そこまで、考えてしまったと気付いたが時すでに遅かった。周囲は疑問符を浮かべている者におかしいと訝しげにヒソヒソと話す声に緊張感が迫り上がり、呼吸も浅くなってくる。
「いや、僕は皇宮には行ったことは無いですが、えっと……」
そもそも僕はその帝都に行く為に使用人をして、お金を稼ごうとしたんだ。そうだ、僕は何かを探してたんだ。どうして、忘れてしまったんだろう。それでも、そういう風になるのを選んだのは僕自身だ。
そう淡々と話す侍女にお嬢様も不安そうな表情になる。それは想定の範囲内だ。
「いえ、問題ありません。紅茶にもフルーツは合うんです。アイスティーにフルーツを入れて楽しめます」
グラスに先程準備していた冷やしておいた別の容器から紅茶を注ぐとグレープフルーツとオレンジを選び入れる。侍女に渡すと少し戸惑われたが、お嬢様が飲んで欲しいと言うといただきますと返事をして飲んでくれた。
「あら、冷たくて美味しい……」
「甘みと酸味があって、色々試してみるのも楽しみの一つだと思います。歯応えを加えるなら白玉やナタデココ……を入れたりしても」
「てか、カノンくん……これ、お酒じゃないっすか」
「あ、はい。そうなんですよ。お酒だと少しきつい方もいると思うんですが、こうするとデザート感覚で見た目も華やかになりますし、女性や男性問わず一緒に楽しめるようになると思いますよ」
驚いてるアレン副隊長を他所に底のあるグラスにブランデーを少し入れ、炭酸とフルーツを入れる。甘い香りとお酒の仄かな香りがして、大人のデザートとしても美味しいと思う。
ただお酒飲める年齢になる前に死んだり、付き合いで嗜む程度に飲みはしてもそんな事をしている余裕がなかったり、今はそもそもお酒飲めるのかすら危うそうな気もする。
軽く匂いだけで、くらりとしそうになったが人魚族の僕はお酒を飲めるのだろうか。
「へぇー、良く店とかではレモンやライムとか添えられてますけど、こんな風にデザート感覚で食べるのは無いっすよね? あ、これ飲んで良いんすか?」
「いや、これは流石に今は……」
そんな事は梅雨知らずなアレン副隊長は関心したようにブランデーの入ったお酒を見ながら問い掛けてきたが、流石に仕事中なのとまだ昼間な為却下した。アレン副隊長は物欲しそうに残念そうな顔をする。
「これなら甘い物が苦手な侯爵様も喜ばれるかと思いますよ、どうでしょうか?」
かなり手軽で簡単な方法の為、少し心配になったが、ただ手軽ではあるが、フルーツはそこまで安いものでも無いと思う。ここまで種類を入れて彩りの華やかさを出すには、それなりに金銭的な余裕も必要になってくる。侯爵家のお嬢様な為、その心配は無さそうだけど。
「ええ、これならお父様もお母様もきっと喜んでくれると思いますわ」
「良かったです。他のは少し必要なものと時間が掛かるので、お嬢様も少し急いでいらしたかと思ったので」
ほっと胸を撫で下ろす。お嬢様が喜んでくれて良かったが、後は侯爵様方の反応次第だけど、こんな純真なお嬢様からの真心だからきっと大丈夫な気もする。
「他には何を思い浮かびましたの!?」
好奇心からか聞きたいと話すお嬢様。色々と浮かんだものはあるが、話す分には大丈夫かな。
「えっと、他ですとそうですね、氷を削ってシロップを掛けるとか、アイスクリームは作ると少し時間掛かるだろうけど、甘い物も苦手な方でも食べやすい──」
「えっ!?」
お嬢様の動きが止まる。何事かと思うと周囲にいた何人かも驚いている様子。何かまずい事でも言っただろうか?
「アイスクリームってあいすくりんの事!?」
きらきらと目を輝かせるお嬢様。アイスの事をここではあいすくりんと言うのか。何だか懐かしい響きだな。どうやらこの様子だとアイスは現存するんだ。それにしても何か、雰囲気がどうも変な気がする。とりあえず、頷いたがお嬢様は目を見開いて驚いた。
「カノン様は皇宮であいすくりんを食べた事があるのね!? しかも、作り方まで知っているなんて凄いわ!」
この世界ではアイスってそんな高貴で高級な食品なの?
少なくとも薄らとしている二度目の人生では、貴族だったとは思うがアイスクリームはそもそも存在していなかったはずだ。それともその頃の僕が知らなかっただけか、覚えていないか。
今世では皇宮何て、ましてや帝都にすら行ったことがない。まさか、あいすくりんはこの世界では貴族階級以上しか味わえない代物で、知っている方がおかしいの?
そこまで、考えてしまったと気付いたが時すでに遅かった。周囲は疑問符を浮かべている者におかしいと訝しげにヒソヒソと話す声に緊張感が迫り上がり、呼吸も浅くなってくる。
「いや、僕は皇宮には行ったことは無いですが、えっと……」
そもそも僕はその帝都に行く為に使用人をして、お金を稼ごうとしたんだ。そうだ、僕は何かを探してたんだ。どうして、忘れてしまったんだろう。それでも、そういう風になるのを選んだのは僕自身だ。
0
お気に入りに追加
114
あなたにおすすめの小説
平凡な俺、何故かイケメンヤンキーのお気に入りです?!
彩ノ華
BL
ある事がきっかけでヤンキー(イケメン)に目をつけられた俺。
何をしても平凡な俺は、きっとパシリとして使われるのだろうと思っていたけど…!?
俺どうなっちゃうの~~ッ?!
イケメンヤンキー×平凡
主人公の兄になったなんて知らない
さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を
レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を
レインは知らない自分が神に愛されている事を
表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346
俺が総受けって何かの間違いですよね?
彩ノ華
BL
生まれた時から体が弱く病院生活を送っていた俺。
17歳で死んだ俺だが女神様のおかげで男同志が恋愛をするのが普通だという世界に転生した。
ここで俺は青春と愛情を感じてみたい!
ひっそりと平和な日常を送ります。
待って!俺ってモブだよね…??
女神様が言ってた話では…
このゲームってヒロインが総受けにされるんでしょっ!?
俺ヒロインじゃないから!ヒロインあっちだよ!俺モブだから…!!
平和に日常を過ごさせて〜〜〜!!!(泣)
女神様…俺が総受けって何かの間違いですよね?
モブ(無自覚ヒロイン)がみんなから総愛されるお話です。
掃除中に、公爵様に襲われました。
天災
BL
掃除中の出来事。執事の僕は、いつものように庭の掃除をしていた。
すると、誰かが庭に隠れていることに気が付く。
泥棒かと思い、探していると急に何者かに飛び付かれ、足をかけられて倒れる。
すると、その「何者か」は公爵であったのだ。
真冬の痛悔
白鳩 唯斗
BL
闇を抱えた王道学園の生徒会長、東雲真冬は、完璧王子と呼ばれ、真面目に日々を送っていた。
ある日、王道転校生が訪れ、真冬の生活は狂っていく。
主人公嫌われでも無ければ、生徒会に裏切られる様な話でもありません。
むしろその逆と言いますか·····逆王道?的な感じです。
王道学園のモブ
四季織
BL
王道学園に転生した俺が出会ったのは、寡黙書記の先輩だった。
私立白鳳学園。山の上のこの学園は、政財界、文化界を担う子息達が通う超名門校で、特に、有名なのは生徒会だった。
そう、俺、小坂威(おさかたける)は王道学園BLゲームの世界に転生してしまったんだ。もちろんゲームに登場しない、名前も見た目も平凡なモブとして。
兄たちが弟を可愛がりすぎです~こんなに大きくなりました~
クロユキ
BL
ベルスタ王国に第五王子として転生した坂田春人は第五ウィル王子として城での生活をしていた。
いつものようにメイドのマリアに足のマッサージをして貰い、いつものように寝たはずなのに……目が覚めたら大きく成っていた。
本編の兄たちのお話しが違いますが、短編集として読んで下さい。
誤字に脱字が多い作品ですが、読んで貰えたら嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる