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二人の来訪者と追憶

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「夫人は、お飲み物は紅茶を良く嗜んでおります。炭酸は飲まれたところを見た事はございませんね」


 そう淡々と話す侍女にお嬢様も不安そうな表情になる。それは想定の範囲内だ。


「いえ、問題ありません。紅茶にもフルーツは合うんです。アイスティーにフルーツを入れて楽しめます」


 グラスに先程準備していた冷やしておいた別の容器から紅茶を注ぐとグレープフルーツとオレンジを選び入れる。侍女に渡すと少し戸惑われたが、お嬢様が飲んで欲しいと言うといただきますと返事をして飲んでくれた。

「あら、冷たくて美味しい……」

「甘みと酸味があって、色々試してみるのも楽しみの一つだと思います。歯応えを加えるなら白玉やナタデココ……を入れたりしても」

「てか、カノンくん……これ、お酒じゃないっすか」

「あ、はい。そうなんですよ。お酒だと少しきつい方もいると思うんですが、こうするとデザート感覚で見た目も華やかになりますし、女性や男性問わず一緒に楽しめるようになると思いますよ」


 驚いてるアレン副隊長を他所に底のあるグラスにブランデーを少し入れ、炭酸とフルーツを入れる。甘い香りとお酒の仄かな香りがして、大人のデザートとしても美味しいと思う。
 ただお酒飲める年齢になる前に死んだり、付き合いで嗜む程度に飲みはしてもそんな事をしている余裕がなかったり、今はそもそもお酒飲めるのかすら危うそうな気もする。
 軽く匂いだけで、くらりとしそうになったが人魚族の僕はお酒を飲めるのだろうか。


「へぇー、良く店とかではレモンやライムとか添えられてますけど、こんな風にデザート感覚で食べるのは無いっすよね? あ、これ飲んで良いんすか?」

「いや、これは流石に今は……」


 そんな事は梅雨知らずなアレン副隊長は関心したようにブランデーの入ったお酒を見ながら問い掛けてきたが、流石に仕事中なのとまだ昼間な為却下した。アレン副隊長は物欲しそうに残念そうな顔をする。


「これなら甘い物が苦手な侯爵様も喜ばれるかと思いますよ、どうでしょうか?」


 かなり手軽で簡単な方法の為、少し心配になったが、ただ手軽ではあるが、フルーツはそこまで安いものでも無いと思う。ここまで種類を入れて彩りの華やかさを出すには、それなりに金銭的な余裕も必要になってくる。侯爵家のお嬢様な為、その心配は無さそうだけど。


「ええ、これならお父様もお母様もきっと喜んでくれると思いますわ」

「良かったです。他のは少し必要なものと時間が掛かるので、お嬢様も少し急いでいらしたかと思ったので」


 ほっと胸を撫で下ろす。お嬢様が喜んでくれて良かったが、後は侯爵様方の反応次第だけど、こんな純真なお嬢様からの真心だからきっと大丈夫な気もする。


「他には何を思い浮かびましたの!?」


 好奇心からか聞きたいと話すお嬢様。色々と浮かんだものはあるが、話す分には大丈夫かな。


「えっと、他ですとそうですね、氷を削ってシロップを掛けるとか、アイスクリームは作ると少し時間掛かるだろうけど、甘い物も苦手な方でも食べやすい──」

「えっ!?」


 お嬢様の動きが止まる。何事かと思うと周囲にいた何人かも驚いている様子。何かまずい事でも言っただろうか?


「アイスクリームってあいすくりんの事!?」


 きらきらと目を輝かせるお嬢様。アイスの事をここではあいすくりんと言うのか。何だか懐かしい響きだな。どうやらこの様子だとアイスは現存するんだ。それにしても何か、雰囲気がどうも変な気がする。とりあえず、頷いたがお嬢様は目を見開いて驚いた。


「カノン様は皇宮であいすくりんを食べた事があるのね!? しかも、作り方まで知っているなんて凄いわ!」


 この世界ではアイスってそんな高貴で高級な食品なの?
 少なくとも薄らとしている二度目の人生では、貴族だったとは思うがアイスクリームはそもそも存在していなかったはずだ。それともその頃の僕が知らなかっただけか、覚えていないか。
 今世では皇宮何て、ましてや帝都にすら行ったことがない。まさか、あいすくりんはこの世界では貴族階級以上しか味わえない代物で、知っている方がおかしいの?
 そこまで、考えてしまったと気付いたが時すでに遅かった。周囲は疑問符を浮かべている者におかしいと訝しげにヒソヒソと話す声に緊張感が迫り上がり、呼吸も浅くなってくる。


「いや、僕は皇宮には行ったことは無いですが、えっと……」


 そもそも僕はその帝都に行く為に使用人をして、お金を稼ごうとしたんだ。そうだ、僕は何かを探してたんだ。どうして、忘れてしまったんだろう。それでも、そういう風になるのを選んだのは僕自身だ。

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