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使用人達の遊戯場
32(side テオ)
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少々呆れた表情をすれど、自分の事よりも他人の事を優先しているようでお人好しのきらいがあるとは思っていたが、欲は無いのか?
「それならリリーに対してはどう思っているんですか?」
「リリー?」
「媚薬を使うくらい切羽詰まっていたのだから」
「待ってください。よく聞いて下さい。違います。そもそもリリーは私ではなく、あの実験オタクのルシェル先生を慕っています。私はただの協力者です」
本当は言いたくは無いが、カノンが早々にその話を広めたりする事は無いと判断した。上手く面倒な事は回避していたが、今回はそうせざるを得なかった。何せ、その対象が二人いたのだから。
「……方向性が大分可笑しくないですか」
「面目ないですが、リリーのやりたいようにやって貰ってます。純正な混合種は珍しいので、色々試したいんでしょうね、だから」
リリーはルシェル先生の気を惹きたくて色々しているわけです。ルシェル先生の治験の為の協力等をしたりして、リリーとは仲がいいのと立場もあるが、その立場を利用して隣に立つのが嫌だとも。それを知っている。こちらとしてもそこまで危険が無いならばと茶番に付き合っていた。実験は避けるが。絶句とも言える衝撃を受けた表情をするカノンに思わずも苦笑した。
「まあ、半端者何でどちらの種族にも蔑まれていましたし、私にそういう気持ちを向けるのは酷ですよ。色々と言えない事もやってきたので、どちらにしても返せないので、寧ろその方が楽だったんですから」
他人事のように語る一つ一つの言葉は、誰しもが距離を置いていく。その方が都合が良かっただからカノンにもそう自然と言葉が出ていた。
「いえ、テオさんは半端者ではなくて凄い人ですよ」
「え?」
「だって、魔法も使えて、力持ちで鋭い洞察力も兼ね備えていて、使用人の一人一人を理解して配慮して……側近なのに代理まで請け負いながら僕の教育係まで……まだそんなに時を長くいませんが、十分過ぎるくらい凄い方だし、それに相談事にも一部は雑に見えなくも無いですが、そこは親しいからでしょう? それでも何だかんだ面倒みも良くて的確だし」
真っ直ぐにスラスラと言葉を吐き出し始めるカノンは節々で首を振ったり、相槌をしながらも至って真面目に語り出した。段々と小っ恥ずかしくてなるのは、本気で眼前で褒めちぎられているからだろうか。
「待って、ちょっと待てそれは買い被りすぎだから」
「でも、事実ですよ」
思わず途中でハッとしたように静止する言葉をかけてしまって、頭に手を置いて考えるように唸った。正直で何処か既視感を覚えたのは言うまでもない。思い出したくない遮られ方をした奴の顔を手をぶんぶんと振って無かった事にする。
「……それって素ですか?」
「素……えっ、正直な気持ちです」
「いえ、大分慣れてきたのかなって思いまして……褒められるのには慣れないものですよ。ですが、ありがとうございます」
照れながらもその言葉を受け入れる。雰囲気に呑まれた気もするが、少し恥ずかしくなってきたのかカノンも照れくさそうに視線が泳いで、手で顔を覆っていた。
何となくシオン様が顔だけではなく、別の何かを感じ取っているのは理解した。それに反応も悪くないし、と言ったらうん、嗜虐心が唆られるな。
「シオン様が貴方を気に入った理由が少しわかった気がします。まあ気を付けて下さいね。色々」
大分時間も立った頃で、シオン様を待たせていたのを思い出したカノンは少し緊張した面持ちで、慌ただしく服を持つとまた明日と律儀にお辞儀をして出て行った。
静かになった部屋に少し寂しく思ったが、そう言えば今日行われていた事の主導は彼だと聞いていた。何処で、あれを考え付いたのか、カノンが明日起きれる状態にあるなら聞く事にしようと思うと灯りを消した。
「それならリリーに対してはどう思っているんですか?」
「リリー?」
「媚薬を使うくらい切羽詰まっていたのだから」
「待ってください。よく聞いて下さい。違います。そもそもリリーは私ではなく、あの実験オタクのルシェル先生を慕っています。私はただの協力者です」
本当は言いたくは無いが、カノンが早々にその話を広めたりする事は無いと判断した。上手く面倒な事は回避していたが、今回はそうせざるを得なかった。何せ、その対象が二人いたのだから。
「……方向性が大分可笑しくないですか」
「面目ないですが、リリーのやりたいようにやって貰ってます。純正な混合種は珍しいので、色々試したいんでしょうね、だから」
リリーはルシェル先生の気を惹きたくて色々しているわけです。ルシェル先生の治験の為の協力等をしたりして、リリーとは仲がいいのと立場もあるが、その立場を利用して隣に立つのが嫌だとも。それを知っている。こちらとしてもそこまで危険が無いならばと茶番に付き合っていた。実験は避けるが。絶句とも言える衝撃を受けた表情をするカノンに思わずも苦笑した。
「まあ、半端者何でどちらの種族にも蔑まれていましたし、私にそういう気持ちを向けるのは酷ですよ。色々と言えない事もやってきたので、どちらにしても返せないので、寧ろその方が楽だったんですから」
他人事のように語る一つ一つの言葉は、誰しもが距離を置いていく。その方が都合が良かっただからカノンにもそう自然と言葉が出ていた。
「いえ、テオさんは半端者ではなくて凄い人ですよ」
「え?」
「だって、魔法も使えて、力持ちで鋭い洞察力も兼ね備えていて、使用人の一人一人を理解して配慮して……側近なのに代理まで請け負いながら僕の教育係まで……まだそんなに時を長くいませんが、十分過ぎるくらい凄い方だし、それに相談事にも一部は雑に見えなくも無いですが、そこは親しいからでしょう? それでも何だかんだ面倒みも良くて的確だし」
真っ直ぐにスラスラと言葉を吐き出し始めるカノンは節々で首を振ったり、相槌をしながらも至って真面目に語り出した。段々と小っ恥ずかしくてなるのは、本気で眼前で褒めちぎられているからだろうか。
「待って、ちょっと待てそれは買い被りすぎだから」
「でも、事実ですよ」
思わず途中でハッとしたように静止する言葉をかけてしまって、頭に手を置いて考えるように唸った。正直で何処か既視感を覚えたのは言うまでもない。思い出したくない遮られ方をした奴の顔を手をぶんぶんと振って無かった事にする。
「……それって素ですか?」
「素……えっ、正直な気持ちです」
「いえ、大分慣れてきたのかなって思いまして……褒められるのには慣れないものですよ。ですが、ありがとうございます」
照れながらもその言葉を受け入れる。雰囲気に呑まれた気もするが、少し恥ずかしくなってきたのかカノンも照れくさそうに視線が泳いで、手で顔を覆っていた。
何となくシオン様が顔だけではなく、別の何かを感じ取っているのは理解した。それに反応も悪くないし、と言ったらうん、嗜虐心が唆られるな。
「シオン様が貴方を気に入った理由が少しわかった気がします。まあ気を付けて下さいね。色々」
大分時間も立った頃で、シオン様を待たせていたのを思い出したカノンは少し緊張した面持ちで、慌ただしく服を持つとまた明日と律儀にお辞儀をして出て行った。
静かになった部屋に少し寂しく思ったが、そう言えば今日行われていた事の主導は彼だと聞いていた。何処で、あれを考え付いたのか、カノンが明日起きれる状態にあるなら聞く事にしようと思うと灯りを消した。
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