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使用人達の遊戯場
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淡々と使用人側の苦労を考えろと舌打ちをするテオ。結構な何となく昔居た数多の屋敷で、思い当たる節がある気がして居た堪れない気持ちになった。
今その男女はちょうど雌しべに雄しべを挿入するところだった。お互いの恍惚とした表情が垣間見えて、それなりに小声で話してはいるけど、わりと聞こえそうなものだが、その料理人と侍女はすっかり二人の世界に入っているようで気付いてすらいない。
「すみません」
「何で貴方が謝るんです? 一応、私は使用人の管理責任者代理です。こういう行為は部屋で行なうならまだしもこんな場所でしかも就業中に何て言語道断です」
そう言うや否や、テオは僕が二階の掃除をしている際に持ってきていたバケツを見た。バケツにここまでの成果であるように灰色に濁り埃が浮いている水が溜まっている。
因みに壁ドンのようにテオにされていたが、僕はモップを片手に持って居た為ムードもあったものでは無く大変シュールだと思う。そもそもそう言う場面では無かった。テオは無言で、そのバケツを持つとニッコリととても良い笑顔になった。
嫌な予感がした。
「テ、テオ待っ」
止める言葉も虚しく汚水を行為の真っ只中で、今にも絶頂を迎えるかに見えた二人に勢い良くぶっ掛けたのだ。何が起きたのかわからず、当然そのままの状態でポカーンとする料理人と侍女。
「な、何をするんだよ!」
我に返った料理人が怒鳴り、こちらに向いた。髪には濡れて張り付いた埃が至る所に付いていた。一段とデカい埃を取り床に投げ捨てる料理人。水も滴る何とやらとは言うが埃まみれのそれはあまりにも滑稽だった。
「はあ? それは私に向かって聞いているんですか?」
「当然だろ。新人の分際でこんな真似して良いと思っ……テ、テオさん」
「貴方の言い分はわかりました。ええ、貴方がこれで何度目かも」
「ち、ちがっ!! これは、つい恋人が来たから盛り上がってしまって」
青い顔をして言い淀む料理人の男の言い訳と未だに侍女に挿入したままの姿はあまりにもシュールすぎた。
「今何をする時間かおわかりですか? 新人がここの担当だからって見逃されると思ったら大間違いですよ」
「も、申し訳ございません」
ずるりと慌てて自身の逸物を侍女から引き抜くと侍女は名残惜しげな表情に淫らな声をわざとらしく上げるが、服装を整えてそそくさと退散しようとする。何か薄情過ぎない?
「何逃げようとしてるんですか?」
「わ、私はここの侍女ではございませんので、貴方のご指示に従う言われはございません」
逃げようとする侍女を制止するテオは表情こそ笑顔だが、明らかに怒気が感じられように見えた。どうやら彼女はやはりこの御屋敷の侍女では無かったらしい。
「ああ、そうですね。何なら汚水を掛けた事を告げ口しても構いませんよ。でも、その変わり、私も務めを果たさなければなりませんので、その場合は貴方の主人にもここで起こっていた事を全て確り包み隠さず、嘘偽りない証言をお伝えしなければいけませんね」
「ッ!? 半端者の分際で、貴方の話なんて本家が信用するわけな」
「勿論、今この場で起きていた事の証拠もご提示出来ますよ」
「ッッそれは……ご勘弁願えませんでしょうか! お、お嬢様はまだ幼くその、この痴態を、話すのは早すぎます」
私を誰だと思っているのか言わしめるように言葉を返して行くテオに、途端に侍女も青ざめた顔をすると頭を下げた。テオは魔法が使えるそれ故に何か出来るのかも知れない。
侍女は体裁上故か、それとも主人への忠誠からか。それならば、こんな事を白昼堂々したりはしないか。テオの言い方だと、料理人も確信犯的であると該当し、数度とこういう事があったようだった。手馴れているのだろう。
「……ああ、汚くなってしまいましたね。確り後片付けをお願い致しますね。私はシオン様の命により、新人の彼を連れて行かなければなりませんので」
「承知致しました! しっかり綺麗に磨きあげさせていただきます」
「助かります。そうそう料理人の貴方には別件を頼もうかと」
着いてきてくれますね? とピクリとも表情を変えないテオが恐ろしい。有無も言わさずに大きく頷く若い料理人はもう侍女を見てすらいない。侍女の方も僕から半ば無理矢理モップを奪うと颯爽と準備を始める。
ここの侍女ではないけど大丈夫何だろうか、とか濡れて埃まみれだけど気にしないのかな? 等とは思うがテオの空気が恐いので、黙っている事にした。新人なので。
本当に恋人かは疑問に見えてしまったが、言うまでも無く、その後不埒な行動を繰り返していた事が露呈し、反省の色すらないとして若い料理人の姿は見なくなったのは言うまでもなかった。
今その男女はちょうど雌しべに雄しべを挿入するところだった。お互いの恍惚とした表情が垣間見えて、それなりに小声で話してはいるけど、わりと聞こえそうなものだが、その料理人と侍女はすっかり二人の世界に入っているようで気付いてすらいない。
「すみません」
「何で貴方が謝るんです? 一応、私は使用人の管理責任者代理です。こういう行為は部屋で行なうならまだしもこんな場所でしかも就業中に何て言語道断です」
そう言うや否や、テオは僕が二階の掃除をしている際に持ってきていたバケツを見た。バケツにここまでの成果であるように灰色に濁り埃が浮いている水が溜まっている。
因みに壁ドンのようにテオにされていたが、僕はモップを片手に持って居た為ムードもあったものでは無く大変シュールだと思う。そもそもそう言う場面では無かった。テオは無言で、そのバケツを持つとニッコリととても良い笑顔になった。
嫌な予感がした。
「テ、テオ待っ」
止める言葉も虚しく汚水を行為の真っ只中で、今にも絶頂を迎えるかに見えた二人に勢い良くぶっ掛けたのだ。何が起きたのかわからず、当然そのままの状態でポカーンとする料理人と侍女。
「な、何をするんだよ!」
我に返った料理人が怒鳴り、こちらに向いた。髪には濡れて張り付いた埃が至る所に付いていた。一段とデカい埃を取り床に投げ捨てる料理人。水も滴る何とやらとは言うが埃まみれのそれはあまりにも滑稽だった。
「はあ? それは私に向かって聞いているんですか?」
「当然だろ。新人の分際でこんな真似して良いと思っ……テ、テオさん」
「貴方の言い分はわかりました。ええ、貴方がこれで何度目かも」
「ち、ちがっ!! これは、つい恋人が来たから盛り上がってしまって」
青い顔をして言い淀む料理人の男の言い訳と未だに侍女に挿入したままの姿はあまりにもシュールすぎた。
「今何をする時間かおわかりですか? 新人がここの担当だからって見逃されると思ったら大間違いですよ」
「も、申し訳ございません」
ずるりと慌てて自身の逸物を侍女から引き抜くと侍女は名残惜しげな表情に淫らな声をわざとらしく上げるが、服装を整えてそそくさと退散しようとする。何か薄情過ぎない?
「何逃げようとしてるんですか?」
「わ、私はここの侍女ではございませんので、貴方のご指示に従う言われはございません」
逃げようとする侍女を制止するテオは表情こそ笑顔だが、明らかに怒気が感じられように見えた。どうやら彼女はやはりこの御屋敷の侍女では無かったらしい。
「ああ、そうですね。何なら汚水を掛けた事を告げ口しても構いませんよ。でも、その変わり、私も務めを果たさなければなりませんので、その場合は貴方の主人にもここで起こっていた事を全て確り包み隠さず、嘘偽りない証言をお伝えしなければいけませんね」
「ッ!? 半端者の分際で、貴方の話なんて本家が信用するわけな」
「勿論、今この場で起きていた事の証拠もご提示出来ますよ」
「ッッそれは……ご勘弁願えませんでしょうか! お、お嬢様はまだ幼くその、この痴態を、話すのは早すぎます」
私を誰だと思っているのか言わしめるように言葉を返して行くテオに、途端に侍女も青ざめた顔をすると頭を下げた。テオは魔法が使えるそれ故に何か出来るのかも知れない。
侍女は体裁上故か、それとも主人への忠誠からか。それならば、こんな事を白昼堂々したりはしないか。テオの言い方だと、料理人も確信犯的であると該当し、数度とこういう事があったようだった。手馴れているのだろう。
「……ああ、汚くなってしまいましたね。確り後片付けをお願い致しますね。私はシオン様の命により、新人の彼を連れて行かなければなりませんので」
「承知致しました! しっかり綺麗に磨きあげさせていただきます」
「助かります。そうそう料理人の貴方には別件を頼もうかと」
着いてきてくれますね? とピクリとも表情を変えないテオが恐ろしい。有無も言わさずに大きく頷く若い料理人はもう侍女を見てすらいない。侍女の方も僕から半ば無理矢理モップを奪うと颯爽と準備を始める。
ここの侍女ではないけど大丈夫何だろうか、とか濡れて埃まみれだけど気にしないのかな? 等とは思うがテオの空気が恐いので、黙っている事にした。新人なので。
本当に恋人かは疑問に見えてしまったが、言うまでも無く、その後不埒な行動を繰り返していた事が露呈し、反省の色すらないとして若い料理人の姿は見なくなったのは言うまでもなかった。
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