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第3章 変身レッスン
第13話 勇気をくれる子
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「よし。今日は一日、脳内の天使ももと一緒に頑張ろ」
顔を洗ってすぐ、鏡を見ながら頷く。今日は美術部の活動があって変身部へ行けないから、如月さんが教えてくれたことを実践したい。
日常生活の中で、天使ももならどうするかを考える。
「……朝起きて顔を洗って、ももなら一番に何をする?」
スマホで時間を確認した。家を出るまでの時間は限られている。
限られた時間で、ももなら何をするだろう?
決まっている。
「お洒落、一択だよね」
常に可愛い自分でいるのが、天使もものモットー。朝ご飯よりも、授業の予習よりも、なにより優先するのは可愛くお洒落すること。
だってももは、可愛い自分が大好きだから。
「……まあ私は、英語の小テストの勉強をするんだけど」
天使ももならどうするか、は常に意識する。だけど、今の私は天野望結だから。
◆
「疲れた……!」
家に帰ってくる頃には、私は疲れきっていた。
頭の中で考えるだけ、なんて思ってたけど、すごく大変だ。
だって、今日一日、二人分頭を使ったってこどでしょ? 疲れるに決まっている。
床に鞄を置いて、勢いよくベッドに倒れ込む。このまま眠っちゃいたいけれど、さすがにそういうわけにはいかない。
夕飯の前に、宿題を終わらせておきたいし。
「……そういえば、ももならこういう時、どうするんだろう」
いつも可愛い自分でいたい……と思うももだって、自室でごろごろする時もあるはず。
朝は他の時間を削ってまでメイクをするけれど、帰ってきてからはどうだろう?
とりあえず休む? それともお菓子を食べる? すぐにお風呂? 宿題をする?
学校にいる時は、周りの目があるから、ももの行動は考えやすかった。ももは、周りからの目線をすごく気にするだろうから。
「家にいる時は……どんな子が、私は好きかな」
目を閉じて、いろいろと想像してみる。
さっきまで疲れて眠りたかったはずなのに、なんだか楽しくなってきた。
「家でいる時は、ちゃんとゆっくりできる子がいいな」
家でも外でも、いつも張り詰めていたら疲れてしまう。だから、休める時はちゃんと休める子がいい。
「……それから」
周りから可愛く思われたくて周りの目は気にするけれど、周りに合わせたり流されるんじゃなくて、自分のこだわりを貫ける子がいい。
ちょっとくらい悪く言われたって、負けない強さがある子がいい。
「さすがに欲張りすぎるかも」
ふふ、と笑って、私はようやくベッドから下りた。鞄に手を突っ込んで、スマホを取り出す。
「ももならきっと、仲良くなりたい子は、自分から誘うよね」
今の私はももじゃない。だけど、理想の女の子に、勇気を分けてもらったっていいはず。
『今度、また一緒に出かけない? 次は、私も天使ももの姿で行くから』
如月さんにそうメッセージを送ると、すぐに返事がきた。
『行く! 私、いつでも暇だから! 他に遊ぶ子もいないし!!』
如月さん、相変わらず返信早いな。
それにメッセージだと、やたらと勢いがあるし。
以前如月さん……もとい、蓮さんと出かけた目的は、ウィッグやカラコンを買うことだった。
だから、単純に遊びに行くのは初めてだ。
「……どうしよう。楽しみすぎる」
天使ももの姿で外へ出るのも、休みの日に蓮さんと遊びに行くのも。
「そうと決まれば、それまでにもっと、天使ももとして振る舞えるようになっておかないと」
◆
「うん、可愛い」
鏡に映った私は、自分で言うのもなんだけど、めちゃくちゃ可愛い。いつもの放課後より時間があったから、メイクにもヘアセットにも時間をかけられた。
それにいつもの制服じゃない。
買ってもらったけれど、派手過ぎて普段は着ることができない可愛いワンピースを着ている。
好きな格好をするのって、本当に楽しいな。
「そろそろ出ないと」
待ち合わせ場所までは、それなりに時間がかかってしまう。せっかくの日に、遅刻なんてしたくない。
お気に入りの鞄を持って、私は慌てて家を出た。
顔を洗ってすぐ、鏡を見ながら頷く。今日は美術部の活動があって変身部へ行けないから、如月さんが教えてくれたことを実践したい。
日常生活の中で、天使ももならどうするかを考える。
「……朝起きて顔を洗って、ももなら一番に何をする?」
スマホで時間を確認した。家を出るまでの時間は限られている。
限られた時間で、ももなら何をするだろう?
決まっている。
「お洒落、一択だよね」
常に可愛い自分でいるのが、天使もものモットー。朝ご飯よりも、授業の予習よりも、なにより優先するのは可愛くお洒落すること。
だってももは、可愛い自分が大好きだから。
「……まあ私は、英語の小テストの勉強をするんだけど」
天使ももならどうするか、は常に意識する。だけど、今の私は天野望結だから。
◆
「疲れた……!」
家に帰ってくる頃には、私は疲れきっていた。
頭の中で考えるだけ、なんて思ってたけど、すごく大変だ。
だって、今日一日、二人分頭を使ったってこどでしょ? 疲れるに決まっている。
床に鞄を置いて、勢いよくベッドに倒れ込む。このまま眠っちゃいたいけれど、さすがにそういうわけにはいかない。
夕飯の前に、宿題を終わらせておきたいし。
「……そういえば、ももならこういう時、どうするんだろう」
いつも可愛い自分でいたい……と思うももだって、自室でごろごろする時もあるはず。
朝は他の時間を削ってまでメイクをするけれど、帰ってきてからはどうだろう?
とりあえず休む? それともお菓子を食べる? すぐにお風呂? 宿題をする?
学校にいる時は、周りの目があるから、ももの行動は考えやすかった。ももは、周りからの目線をすごく気にするだろうから。
「家にいる時は……どんな子が、私は好きかな」
目を閉じて、いろいろと想像してみる。
さっきまで疲れて眠りたかったはずなのに、なんだか楽しくなってきた。
「家でいる時は、ちゃんとゆっくりできる子がいいな」
家でも外でも、いつも張り詰めていたら疲れてしまう。だから、休める時はちゃんと休める子がいい。
「……それから」
周りから可愛く思われたくて周りの目は気にするけれど、周りに合わせたり流されるんじゃなくて、自分のこだわりを貫ける子がいい。
ちょっとくらい悪く言われたって、負けない強さがある子がいい。
「さすがに欲張りすぎるかも」
ふふ、と笑って、私はようやくベッドから下りた。鞄に手を突っ込んで、スマホを取り出す。
「ももならきっと、仲良くなりたい子は、自分から誘うよね」
今の私はももじゃない。だけど、理想の女の子に、勇気を分けてもらったっていいはず。
『今度、また一緒に出かけない? 次は、私も天使ももの姿で行くから』
如月さんにそうメッセージを送ると、すぐに返事がきた。
『行く! 私、いつでも暇だから! 他に遊ぶ子もいないし!!』
如月さん、相変わらず返信早いな。
それにメッセージだと、やたらと勢いがあるし。
以前如月さん……もとい、蓮さんと出かけた目的は、ウィッグやカラコンを買うことだった。
だから、単純に遊びに行くのは初めてだ。
「……どうしよう。楽しみすぎる」
天使ももの姿で外へ出るのも、休みの日に蓮さんと遊びに行くのも。
「そうと決まれば、それまでにもっと、天使ももとして振る舞えるようになっておかないと」
◆
「うん、可愛い」
鏡に映った私は、自分で言うのもなんだけど、めちゃくちゃ可愛い。いつもの放課後より時間があったから、メイクにもヘアセットにも時間をかけられた。
それにいつもの制服じゃない。
買ってもらったけれど、派手過ぎて普段は着ることができない可愛いワンピースを着ている。
好きな格好をするのって、本当に楽しいな。
「そろそろ出ないと」
待ち合わせ場所までは、それなりに時間がかかってしまう。せっかくの日に、遅刻なんてしたくない。
お気に入りの鞄を持って、私は慌てて家を出た。
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