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第5章 トラブルは恋と共に
第26話 まさかの入部希望!?
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え? 変身部に入りたい? 早瀬くんが?
しかも……雪さん好みの男になりたい?
「お願い。本当に俺、雪ちゃんが好きなんだ!」
真っ直ぐで、必死で、涙にぬれた瞳。こんな瞳を前にしたら、無理です、なんて言えなくなってしまう。
でも、どうしたらいいの?
確かに雪さんは、タイプじゃないと早瀬くんを振った。でもたぶん、そもそも、そういう問題じゃない。
早瀬くんは男で、雪さんの正体だって男なんだから!
「い、委員長……」
如月さんが私の肩をそっと叩き、私を見つめた。
「……ここまで言われたら、さすがに……断れない……かも」
正直、同じ気持ちだ。
この先、どんな風になるのかは分からない。優斗くんに言ったら、すごく怒られちゃうかもしれない。
早瀬くんが、もっと傷つくことになっちゃうかもしれない。
だけど。
「分かった。今日から早瀬くんも、変身部の一員ね」
理由はなんであれ、変わりたいと必死に望む早瀬くんを拒むことはできなかった。
だって変身部は、なりたい自分に変身できる場所だから。
◆
「ほら、なんでも、好きな物頼んでいいから! 今日は俺の奢りね」
さあさあ、と笑顔で早瀬くんがメニューを広げる。やってきたのは、学校から少し離れたところにある全国チェーンのカフェだ。
さっそく雪ちゃんの好みを教えてほしい、と私たちは半ば強引に連行されたのである。
落ち込んだ早瀬くんを慰めてるから今日は部室に行けない、と優斗くんには連絡済みだ。
もちろん、早瀬くんが変身部に入ったことは、まだ伝えていない。
「ありがとう。じゃあ、お言葉に甘えて好きな物頼むね。如月さん、なにがいい?」
「あ、え、えっと……そ、それなら、ホットココアで。あの、その、Sサイズで大丈夫で、です……」
早瀬くんによほど緊張しているのか、如月さんは敬語だ。
「じゃあ私は、このダブルチョコレートフラペチーノにチョコレートソースとチョコレートチップ追加、ホイップ増量。Lサイズで」
「……委員長、容赦ないね?」
そう言って、早瀬くんはくすっと笑った。
「注文してくる。如月さんのも、Lサイズにしとくね。話、たっぷり聞かせてもらいたいし」
爽やかに笑って、早瀬くんは注文カウンターへ向かった。その笑顔はやっぱりかなり格好良くて、ついさっき、振られて泣いていた人と同一人物だとは思えない。
早瀬くんが見えなくなると、如月さんが大きく息を吐いた。
こういう如月さんを見るの、すごく久しぶりだな。
最近はおどおどした如月さんを見ることは減っていたから、なんだか、懐かしい。
「そんなに緊張しなくても大丈夫だよ。早瀬くん、たぶん悪い人じゃないから」
「で、でも、ただでさえ男子は怖いのに、あ、あんな陽キャ……!」
「優斗くんとは普通に喋るのに?」
「優斗は家族みたいなものだし……っ!」
「私にも、もう緊張しないでしょ?」
「今さら委員長相手に緊張なんてしないよっ!」
やばい。あまりに嬉しすぎて、にやにやしちゃった。
如月さんの中で私は、緊張する必要なんて全くないレベルの友達なんだ。
私が幸せな気持ちに浸っていると、三人分のドリンクを器用に持った早瀬くんが席に戻ってきた。
「はい、どうぞ」
甘いドリンクを頼んだ私たちとは違って、早瀬くんはアイスコーヒーを飲むらしい。なんだか、ちょっと意外かも。
それに、ミルクも砂糖も入れないみたいだし。
「あ、ありがと、う、ございます」
ぎこちなく、如月さんがお礼を言う。どういたしまして、と早瀬くんが笑って答えた。
「ありがとう、早瀬くん」
私もお礼を言ってからドリンクを一口飲む。どうせだからと大量にカスタムをしたおかげで、かなり甘い。
今まで如月さんはたぶん、私以外のクラスメートと話す機会なんてなかったはずだ。
早瀬くんとも喋れるようになったら、教室へ行きやすくなるかもしれない。
そうしたら、如月さんもちゃんと高等部へ進学できる。
「で、さっそく、作戦会議を始めたいと思う」
そう言って、早瀬くんはアイスコーヒーを半分ほど一気に飲み干した。
「作戦会議?」
「うん。題して……」
早瀬くんが息を吸い込む。そして真面目な顔で、笑いたくなるような作戦名を口にした。
「題して、俺と雪ちゃんのらぶらぶ♡恋の始まり大作戦!」
如月さんがドン引きしたような表情になったのはたぶん、気のせいじゃないだろう。
しかも……雪さん好みの男になりたい?
「お願い。本当に俺、雪ちゃんが好きなんだ!」
真っ直ぐで、必死で、涙にぬれた瞳。こんな瞳を前にしたら、無理です、なんて言えなくなってしまう。
でも、どうしたらいいの?
確かに雪さんは、タイプじゃないと早瀬くんを振った。でもたぶん、そもそも、そういう問題じゃない。
早瀬くんは男で、雪さんの正体だって男なんだから!
「い、委員長……」
如月さんが私の肩をそっと叩き、私を見つめた。
「……ここまで言われたら、さすがに……断れない……かも」
正直、同じ気持ちだ。
この先、どんな風になるのかは分からない。優斗くんに言ったら、すごく怒られちゃうかもしれない。
早瀬くんが、もっと傷つくことになっちゃうかもしれない。
だけど。
「分かった。今日から早瀬くんも、変身部の一員ね」
理由はなんであれ、変わりたいと必死に望む早瀬くんを拒むことはできなかった。
だって変身部は、なりたい自分に変身できる場所だから。
◆
「ほら、なんでも、好きな物頼んでいいから! 今日は俺の奢りね」
さあさあ、と笑顔で早瀬くんがメニューを広げる。やってきたのは、学校から少し離れたところにある全国チェーンのカフェだ。
さっそく雪ちゃんの好みを教えてほしい、と私たちは半ば強引に連行されたのである。
落ち込んだ早瀬くんを慰めてるから今日は部室に行けない、と優斗くんには連絡済みだ。
もちろん、早瀬くんが変身部に入ったことは、まだ伝えていない。
「ありがとう。じゃあ、お言葉に甘えて好きな物頼むね。如月さん、なにがいい?」
「あ、え、えっと……そ、それなら、ホットココアで。あの、その、Sサイズで大丈夫で、です……」
早瀬くんによほど緊張しているのか、如月さんは敬語だ。
「じゃあ私は、このダブルチョコレートフラペチーノにチョコレートソースとチョコレートチップ追加、ホイップ増量。Lサイズで」
「……委員長、容赦ないね?」
そう言って、早瀬くんはくすっと笑った。
「注文してくる。如月さんのも、Lサイズにしとくね。話、たっぷり聞かせてもらいたいし」
爽やかに笑って、早瀬くんは注文カウンターへ向かった。その笑顔はやっぱりかなり格好良くて、ついさっき、振られて泣いていた人と同一人物だとは思えない。
早瀬くんが見えなくなると、如月さんが大きく息を吐いた。
こういう如月さんを見るの、すごく久しぶりだな。
最近はおどおどした如月さんを見ることは減っていたから、なんだか、懐かしい。
「そんなに緊張しなくても大丈夫だよ。早瀬くん、たぶん悪い人じゃないから」
「で、でも、ただでさえ男子は怖いのに、あ、あんな陽キャ……!」
「優斗くんとは普通に喋るのに?」
「優斗は家族みたいなものだし……っ!」
「私にも、もう緊張しないでしょ?」
「今さら委員長相手に緊張なんてしないよっ!」
やばい。あまりに嬉しすぎて、にやにやしちゃった。
如月さんの中で私は、緊張する必要なんて全くないレベルの友達なんだ。
私が幸せな気持ちに浸っていると、三人分のドリンクを器用に持った早瀬くんが席に戻ってきた。
「はい、どうぞ」
甘いドリンクを頼んだ私たちとは違って、早瀬くんはアイスコーヒーを飲むらしい。なんだか、ちょっと意外かも。
それに、ミルクも砂糖も入れないみたいだし。
「あ、ありがと、う、ございます」
ぎこちなく、如月さんがお礼を言う。どういたしまして、と早瀬くんが笑って答えた。
「ありがとう、早瀬くん」
私もお礼を言ってからドリンクを一口飲む。どうせだからと大量にカスタムをしたおかげで、かなり甘い。
今まで如月さんはたぶん、私以外のクラスメートと話す機会なんてなかったはずだ。
早瀬くんとも喋れるようになったら、教室へ行きやすくなるかもしれない。
そうしたら、如月さんもちゃんと高等部へ進学できる。
「で、さっそく、作戦会議を始めたいと思う」
そう言って、早瀬くんはアイスコーヒーを半分ほど一気に飲み干した。
「作戦会議?」
「うん。題して……」
早瀬くんが息を吸い込む。そして真面目な顔で、笑いたくなるような作戦名を口にした。
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