9 / 37
第2章 ようこそ、放課後変身部へ!
第9話 理想の子
しおりを挟む
「じゃあ、次はカラコンだね」
「うん!」
今日の目的は、ウィッグとカラコンの購入。
コスメもちょっと見たいけど、家にいっぱいあるし、さすがにそこまでのお金はない。
ウィッグと同様、カラコンもかなりの品揃えだ。普段使いできそうな落ち着いた色味の物から、コスプレ用の高発色の物まである。
「僕が使ってるのはこれだよ。透明感もあるし、綺麗に発色するから」
そう言って、蓮さんは翡翠色のカラコンを指差した。一箱10個入りの、ワンデーコンタクトだ。
近寄って、じっと蓮さんの目を覗き込む。綺麗な色だけれど、派手すぎない上品さがある。
コンタクトを試着することはできないし、蓮さんのおすすめを買ってみるのがいいかもしれない。
「委員長、色はもう決めてるの?」
「赤かピンクかなって。どっちにするかをまだ悩んでるんだよね」
蓮さんが愛用しているシリーズには、赤もピンクもある。どちらも綺麗で、すぐに決めることはできない。
「ピンクの方が優しい印象になりそうだね。でも、委員長には赤も似合うと思うよ」
「……うーん」
「まあ、カラコンは消耗品だし、直感で選んでいいんじゃないかな」
「だよね」
とはいえ、すぐには決まらない。
だって、最初に選ぶ物って、絶対すごく記憶に残るから。だから、ちゃんと納得できる物を選びたい。
結局私は10分くらい悩んで、赤いカラコンを買うことにした。
「すごくいいと思う。きっと、委員長によく似合うよ」
ウィッグをかぶり、カラコンを入れた自分を想像してみる。
自惚れかもしれないけれど、すごく可愛い気がした。
「早く、変身した委員長がみたいな」
「蓮さん……」
「委員長の好きをたくさん詰め込んだ姿、本当に楽しみにしてるから」
期待されるのは、得意じゃなかったはずだ。プレッシャーを感じて、不自由になってしまうから。
でも、どうしてだろう。蓮さんがくれる言葉は、ちっとも嫌じゃない。
「期待してて」
「うん。期待してるね」
家に帰ったら、ウィッグをかぶってみよう。ちょっともったいないけど、カラコンだって入れてみよう。
ヘアセットもして、メイクもして……写真だって、いっぱい撮っちゃおう。
想像するだけで楽しくなって、私は思わず笑ってしまった。
◆
鞄を放り出し、ウィッグとカラコンを持って鏡の前に座る。
「とりあえず、かぶってみようかな」
ウィッグをかぶる前に、地毛をウィッグネットに入れないといけない。私は髪が長いから、結構大変な作業だ。
なんとか地毛をウィッグネットの中に入れ、頭の上にウィッグをのせてみる。
のせただけで完成、とはならない。頭の形に合うようにウィッグの裏についたアジャスターを調整しなければいけないし、カットもしていないから、前髪だって長いまま。
だけど鏡に映る自分を見て、私は最高にときめいた。
「可愛い……!」
もちろん、まだ違和感は満載だ。でも、感動せずにはいられない。
私も、ちゃんと変身できるんだ……!
どきどきする。慌ててクリアコンタクトを外し、赤のカラコンをつけてみた。
ピンクの髪に、赤い瞳。物語から飛び出てきたみたいに、可愛い女の子。
それが、今の私。
「楽しすぎる」
最高に可愛くて、最高にときめく。
ヘアセットとメイクをしたら、どれだけ可愛くなっちゃうんだろう。
好きな格好をするって、こんなに幸せなことだったんだ。
「あ、そうだ。部活ネームとか、性格も決めていいんだよね」
おしとやかで、女の子らしい性格? それとも、意外と元気系? もしくは、お嬢様キャラとか?
この見た目でクールっていうのも、ギャップがあっていいかも。
魅力的な性格はたくさんある。だけど……。
「私がなりたいのは……」
周りの目よりも、自分の気持ちを優先したい。自分の好きを、ちゃんと貫ける自分でありたい。
「……決めた!」
私がなりたい子。私の理想の子。
私が……放課後の間だけ変身できる子。
「よし! メイクもヘアセットも、ちゃんと練習しなきゃ!」
新しい私で、蓮さんや雪さんと会うのが楽しみだ。
本当の意味で、私も放課後変身部の一員になれる気がするから。
「うん!」
今日の目的は、ウィッグとカラコンの購入。
コスメもちょっと見たいけど、家にいっぱいあるし、さすがにそこまでのお金はない。
ウィッグと同様、カラコンもかなりの品揃えだ。普段使いできそうな落ち着いた色味の物から、コスプレ用の高発色の物まである。
「僕が使ってるのはこれだよ。透明感もあるし、綺麗に発色するから」
そう言って、蓮さんは翡翠色のカラコンを指差した。一箱10個入りの、ワンデーコンタクトだ。
近寄って、じっと蓮さんの目を覗き込む。綺麗な色だけれど、派手すぎない上品さがある。
コンタクトを試着することはできないし、蓮さんのおすすめを買ってみるのがいいかもしれない。
「委員長、色はもう決めてるの?」
「赤かピンクかなって。どっちにするかをまだ悩んでるんだよね」
蓮さんが愛用しているシリーズには、赤もピンクもある。どちらも綺麗で、すぐに決めることはできない。
「ピンクの方が優しい印象になりそうだね。でも、委員長には赤も似合うと思うよ」
「……うーん」
「まあ、カラコンは消耗品だし、直感で選んでいいんじゃないかな」
「だよね」
とはいえ、すぐには決まらない。
だって、最初に選ぶ物って、絶対すごく記憶に残るから。だから、ちゃんと納得できる物を選びたい。
結局私は10分くらい悩んで、赤いカラコンを買うことにした。
「すごくいいと思う。きっと、委員長によく似合うよ」
ウィッグをかぶり、カラコンを入れた自分を想像してみる。
自惚れかもしれないけれど、すごく可愛い気がした。
「早く、変身した委員長がみたいな」
「蓮さん……」
「委員長の好きをたくさん詰め込んだ姿、本当に楽しみにしてるから」
期待されるのは、得意じゃなかったはずだ。プレッシャーを感じて、不自由になってしまうから。
でも、どうしてだろう。蓮さんがくれる言葉は、ちっとも嫌じゃない。
「期待してて」
「うん。期待してるね」
家に帰ったら、ウィッグをかぶってみよう。ちょっともったいないけど、カラコンだって入れてみよう。
ヘアセットもして、メイクもして……写真だって、いっぱい撮っちゃおう。
想像するだけで楽しくなって、私は思わず笑ってしまった。
◆
鞄を放り出し、ウィッグとカラコンを持って鏡の前に座る。
「とりあえず、かぶってみようかな」
ウィッグをかぶる前に、地毛をウィッグネットに入れないといけない。私は髪が長いから、結構大変な作業だ。
なんとか地毛をウィッグネットの中に入れ、頭の上にウィッグをのせてみる。
のせただけで完成、とはならない。頭の形に合うようにウィッグの裏についたアジャスターを調整しなければいけないし、カットもしていないから、前髪だって長いまま。
だけど鏡に映る自分を見て、私は最高にときめいた。
「可愛い……!」
もちろん、まだ違和感は満載だ。でも、感動せずにはいられない。
私も、ちゃんと変身できるんだ……!
どきどきする。慌ててクリアコンタクトを外し、赤のカラコンをつけてみた。
ピンクの髪に、赤い瞳。物語から飛び出てきたみたいに、可愛い女の子。
それが、今の私。
「楽しすぎる」
最高に可愛くて、最高にときめく。
ヘアセットとメイクをしたら、どれだけ可愛くなっちゃうんだろう。
好きな格好をするって、こんなに幸せなことだったんだ。
「あ、そうだ。部活ネームとか、性格も決めていいんだよね」
おしとやかで、女の子らしい性格? それとも、意外と元気系? もしくは、お嬢様キャラとか?
この見た目でクールっていうのも、ギャップがあっていいかも。
魅力的な性格はたくさんある。だけど……。
「私がなりたいのは……」
周りの目よりも、自分の気持ちを優先したい。自分の好きを、ちゃんと貫ける自分でありたい。
「……決めた!」
私がなりたい子。私の理想の子。
私が……放課後の間だけ変身できる子。
「よし! メイクもヘアセットも、ちゃんと練習しなきゃ!」
新しい私で、蓮さんや雪さんと会うのが楽しみだ。
本当の意味で、私も放課後変身部の一員になれる気がするから。
18
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説
太郎ちゃん
ドスケベニート
児童書・童話
きれいな石ころを拾った太郎ちゃん。
それをお母さんに届けるために帰路を急ぐ。
しかし、立ちはだかる困難に苦戦を強いられる太郎ちゃん。
太郎ちゃんは無事お家へ帰ることはできるのか!?
何気ない日常に潜む危険に奮闘する、涙と愛のドタバタコメディー。
笑いの授業
ひろみ透夏
児童書・童話
大好きだった先先が別人のように変わってしまった。
文化祭前夜に突如始まった『笑いの授業』――。
それは身の毛もよだつほどに怖ろしく凄惨な課外授業だった。
伏線となる【神楽坂の章】から急展開する【高城の章】。
追い詰められた《神楽坂先生》が起こした教師としてありえない行動と、その真意とは……。
トレジャーズ・バディ!
真碧マコト
児童書・童話
【第2回きずな児童書大賞 応募作品】
化石に鉱石、呪印にオーパーツ! さらにはオバケにトラップまで⁉
――この地下遺跡、絶っ対! 普通じゃない!
主人公・鷹杉 晶(たかすぎ あきら)は鉱石や化石が大好きな、ひとよりちょっと背の高い小学五年生の女の子。
そのことをイジワルな男子にからかわれたりもするけれど、ちっとも、まーったく! 気にしていない!
なぜなら、晶のモットーは『自分らしく生きる』ことだから!
ある日、晶はいつものように化石採集にでかける。すると、急に地層に穴が開き、晶はその中に転がり落ちてしまう。
穴の中はどうやら地下遺跡のようで、晶はそこで不思議な祭壇を見つける。そして、その祭壇に触れた途端、晶の手の甲にナゾの印が刻まれてしまった!
出口を求めて地下遺跡をさまよううちに、晶はひとりの少年に遭遇する。御祠 友弥(みほこら ともや)というその少年は、自分はトレジャーハンターであると名乗る。そして、晶に刻まれた印は、寿命を半分にしてしまう『呪印』であり、この呪いを解除するためには、遺跡に隠された『大いなる財宝』を手に入れる必要があるというではないか!
こうして、晶は、どこか謎めいたトレジャーハンターの少年・友弥とともに、『呪印』を解くために、地下遺跡にもぐり宝さがしをすることになるのであった――。
こちら第二編集部!
月芝
児童書・童話
かつては全国でも有数の生徒数を誇ったマンモス小学校も、
いまや少子化の波に押されて、かつての勢いはない。
生徒数も全盛期の三分の一にまで減ってしまった。
そんな小学校には、ふたつの校内新聞がある。
第一編集部が発行している「パンダ通信」
第二編集部が発行している「エリマキトカゲ通信」
片やカジュアルでおしゃれで今時のトレンドにも敏感にて、
主に女生徒たちから絶大な支持をえている。
片や手堅い紙面造りが仇となり、保護者らと一部のマニアには
熱烈に支持されているものの、もはや風前の灯……。
編集部の規模、人員、発行部数も人気も雲泥の差にて、このままでは廃刊もありうる。
この危機的状況を打破すべく、第二編集部は起死回生の企画を立ち上げた。
それは――
廃刊の危機を回避すべく、立ち上がった弱小第二編集部の面々。
これは企画を押しつけ……げふんげふん、もといまかされた女子部員たちが、
取材絡みでちょっと不思議なことを体験する物語である。
子猫マムと雲の都
杉 孝子
児童書・童話
マムが住んでいる世界では、雨が振らなくなったせいで野菜や植物が日照り続きで枯れ始めた。困り果てる人々を見てマムは何とかしたいと思います。
マムがグリムに相談したところ、雨を降らせるには雲の上の世界へ行き、雨の精霊たちにお願いするしかないと聞かされます。雲の都に行くためには空を飛ぶ力が必要だと知り、魔法の羽を持っている鷹のタカコ婆さんを訪ねて一行は冒険の旅に出る。
閉じられた図書館
関谷俊博
児童書・童話
ぼくの心には閉じられた図書館がある…。「あんたの母親は、適当な男と街を出ていったんだよ」祖母にそう聴かされたとき、ぼくは心の図書館の扉を閉めた…。(1/4完結。有難うございました)。
クール王子はワケアリいとこ
緋村燐
児童書・童話
おじさんが再婚した事で新しく出来たいとこ。
同じ中学に入学してきた上に、引っ越し終わるまでうちに住む!?
学校ではクール王子なんて呼ばれている皓也。
でも彼には秘密があって……。
オオカミに変身!?
オオカミ人間!?
え?
じゃなくて吸血鬼!?
気になるいとこは、ミステリアスでもふもふなヴァンパイアでした。
第15回絵本・児童書大賞にて奨励賞を頂きました。
野いちご様
ベリーズカフェ様
魔法のiらんど様
エブリスタ様
にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる