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第2章 ようこそ、放課後変身部へ!
第8話 デート?
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「えっ!?」
てっきり如月さんの姿でくると思っていた私は、びっくりして何も言えなくなってしまう。そんな私を見て、蓮さんはくすっと笑った。
「この方が、デートっぽいかなって」
「で、デートって……!」
正体が如月さんだと分かっていても、蓮さんは王子様にしか見えない。きらきら王子様にこんなことを言われたら、どきどきしてしまうのは当たり前だ。
「デートじゃないの? 僕は、そのつもりできたんだけど」
「れ、蓮さん……!」
不敵に笑うと、蓮さんは一瞬だけ如月さんの顔に戻った。
「……なんて。本当は、好きな格好で友達と遊んでみたかっただけなの」
それだけ言うと、また蓮さんに戻る。
慣れると、こんなに早く切り替えられるものなの!?
「それにしても、今日の委員長はいつも以上に可愛いね」
「あ、ありがとう」
「お礼なんていいよ。本当のことを言っただけだし」
ふふ、と蓮さんは余裕そうに笑った。
なんか、私のことからかってない……!?
「蓮さん」
名前を呼んで、いきなり手を繋ぐ。蓮さんが目を真ん丸にしたのを見ると、無性に達成感があった。
私だって、やられっぱなしじゃないんだから。
「デートなら、手くらい繋ぐもんでしょ?」
「……委員長って、結構積極的だね」
「そうなの。なんなら、私がリードしてあげようか?」
そこまで言って、私は大笑いしてしまった。だめだ。耐えられない。
そんな私につられたのか、蓮さんも大きな声で笑う。
こんな風に友達と冗談を言い合って遊ぶなんて、生まれて初めてかも。
いつも、頭の中で考えたとしても、冗談なんて言えなかったから。
「行こうか、委員長」
「うん。今日はよろしくね、蓮さん」
今日の私はまだ、別の誰かに変身しているわけじゃない。だけど、いつもとはちょっぴり違う私だ。
◆
「僕のおすすめはここだよ」
蓮さんが連れてきてくれたお店は、アニメショップに併設した、大型のコスプレ専門店だった。
店内には様々な衣装やウィッグ、カラコン、コスプレ用化粧品などが並んでいる。
「すごい……!」
見覚えのあるアニメキャラの衣装やウィッグを見ると、なんとなくテンションが上がってしまう。
アニメキャラの衣装だけじゃなくて、メイド服やナース服もある。
見てるだけでこんなにわくわくしちゃうお店があったんだ……!
「大体価格帯ごとに分けられてるから、売り場も見やすいんだよね」
蓮さんはこの店には慣れているのだろう。ウィッグコーナーを指差した。
「まず、ウィッグから見てみようか」
「うん!」
テンションが上がって、いつもより声が大きくなってしまう。でも、それを恥ずかしいとも思わないほど、今の私は浮かれている。
ウィッグコーナーはかなり広くて、品揃えも豊富だ。
三千円もしないお手頃な価格のものから、本物の髪の毛を使った十万円近くする高級品まである。
「委員長、予算って決まってる?」
「あ、うん。一応。ウィッグ以外に買うものもあるし、一万円……出しても、一万五千円程度がいいなって。二万円までなら、出せないことはないんだけど」
日頃、私はあんまりお小遣いを使わない。コスメや可愛い雑貨は、勉強を頑張ったご褒美に買ってもらうことが多いから。
まあそれでも、ウィッグやカラコンを買ったら、今まで貯めてたお年玉が全部、なくなっちゃいそうだけど。
でも、いいの。絶対、後悔なんかしないし。
「了解。それくらいの予算なら大丈夫だと思う。安いのを買って試してみるのもありだけど、買いなおすってなると、後々もっとかかっちゃうしね」
「確かに……」
「あと、ヘアセットとかヘアカットを自分でやれるなら、ちょっと安くなるよ」
あらかじめツインテールやポニーテールの形になっているウィッグもかなり多い。
そういったウィッグは、ヘアセットしていない物に比べると高いみたいだ。
ウィッグのセットなんてやったことないけど、手先の器用さにはちょっと自信がある。
それに、どうせなら自分で好きなようにやりたいし。
「ヘアセットは自分でやろうかな」
言いながら、ピンク色のウィッグを見ていく。
ピンク色、と言ってもいろいろある。鮮やかなビビッドピンクも、柔らかい桜色も、全部ピンクだ。
「うーん……どれがいいんだろ」
あまりにも大量のウィッグを見ていると、頭が混乱してくる。
でも、ちゃんとお気に入りの物を見つけないと。だってそれが、なりたい私を作る大事なウィッグになるんだから。
「あっ!」
「いいのあった?」
「うん。これ……」
一目見た瞬間に惹かれたのは、グラデーションがかったウィッグだった。
根元から20センチくらいはパステルピンクで、毛先にいくにつれて、だんだんと濃いピンクに変わっている。
「私、これにする」
「え、もう決めたの?」
「うん。直感で、これだって思った」
高い買い物だし、もっといろんな物を見比べた方がいいのかもしれない。
だけど私は、自分の直感を信じたい。
てっきり如月さんの姿でくると思っていた私は、びっくりして何も言えなくなってしまう。そんな私を見て、蓮さんはくすっと笑った。
「この方が、デートっぽいかなって」
「で、デートって……!」
正体が如月さんだと分かっていても、蓮さんは王子様にしか見えない。きらきら王子様にこんなことを言われたら、どきどきしてしまうのは当たり前だ。
「デートじゃないの? 僕は、そのつもりできたんだけど」
「れ、蓮さん……!」
不敵に笑うと、蓮さんは一瞬だけ如月さんの顔に戻った。
「……なんて。本当は、好きな格好で友達と遊んでみたかっただけなの」
それだけ言うと、また蓮さんに戻る。
慣れると、こんなに早く切り替えられるものなの!?
「それにしても、今日の委員長はいつも以上に可愛いね」
「あ、ありがとう」
「お礼なんていいよ。本当のことを言っただけだし」
ふふ、と蓮さんは余裕そうに笑った。
なんか、私のことからかってない……!?
「蓮さん」
名前を呼んで、いきなり手を繋ぐ。蓮さんが目を真ん丸にしたのを見ると、無性に達成感があった。
私だって、やられっぱなしじゃないんだから。
「デートなら、手くらい繋ぐもんでしょ?」
「……委員長って、結構積極的だね」
「そうなの。なんなら、私がリードしてあげようか?」
そこまで言って、私は大笑いしてしまった。だめだ。耐えられない。
そんな私につられたのか、蓮さんも大きな声で笑う。
こんな風に友達と冗談を言い合って遊ぶなんて、生まれて初めてかも。
いつも、頭の中で考えたとしても、冗談なんて言えなかったから。
「行こうか、委員長」
「うん。今日はよろしくね、蓮さん」
今日の私はまだ、別の誰かに変身しているわけじゃない。だけど、いつもとはちょっぴり違う私だ。
◆
「僕のおすすめはここだよ」
蓮さんが連れてきてくれたお店は、アニメショップに併設した、大型のコスプレ専門店だった。
店内には様々な衣装やウィッグ、カラコン、コスプレ用化粧品などが並んでいる。
「すごい……!」
見覚えのあるアニメキャラの衣装やウィッグを見ると、なんとなくテンションが上がってしまう。
アニメキャラの衣装だけじゃなくて、メイド服やナース服もある。
見てるだけでこんなにわくわくしちゃうお店があったんだ……!
「大体価格帯ごとに分けられてるから、売り場も見やすいんだよね」
蓮さんはこの店には慣れているのだろう。ウィッグコーナーを指差した。
「まず、ウィッグから見てみようか」
「うん!」
テンションが上がって、いつもより声が大きくなってしまう。でも、それを恥ずかしいとも思わないほど、今の私は浮かれている。
ウィッグコーナーはかなり広くて、品揃えも豊富だ。
三千円もしないお手頃な価格のものから、本物の髪の毛を使った十万円近くする高級品まである。
「委員長、予算って決まってる?」
「あ、うん。一応。ウィッグ以外に買うものもあるし、一万円……出しても、一万五千円程度がいいなって。二万円までなら、出せないことはないんだけど」
日頃、私はあんまりお小遣いを使わない。コスメや可愛い雑貨は、勉強を頑張ったご褒美に買ってもらうことが多いから。
まあそれでも、ウィッグやカラコンを買ったら、今まで貯めてたお年玉が全部、なくなっちゃいそうだけど。
でも、いいの。絶対、後悔なんかしないし。
「了解。それくらいの予算なら大丈夫だと思う。安いのを買って試してみるのもありだけど、買いなおすってなると、後々もっとかかっちゃうしね」
「確かに……」
「あと、ヘアセットとかヘアカットを自分でやれるなら、ちょっと安くなるよ」
あらかじめツインテールやポニーテールの形になっているウィッグもかなり多い。
そういったウィッグは、ヘアセットしていない物に比べると高いみたいだ。
ウィッグのセットなんてやったことないけど、手先の器用さにはちょっと自信がある。
それに、どうせなら自分で好きなようにやりたいし。
「ヘアセットは自分でやろうかな」
言いながら、ピンク色のウィッグを見ていく。
ピンク色、と言ってもいろいろある。鮮やかなビビッドピンクも、柔らかい桜色も、全部ピンクだ。
「うーん……どれがいいんだろ」
あまりにも大量のウィッグを見ていると、頭が混乱してくる。
でも、ちゃんとお気に入りの物を見つけないと。だってそれが、なりたい私を作る大事なウィッグになるんだから。
「あっ!」
「いいのあった?」
「うん。これ……」
一目見た瞬間に惹かれたのは、グラデーションがかったウィッグだった。
根元から20センチくらいはパステルピンクで、毛先にいくにつれて、だんだんと濃いピンクに変わっている。
「私、これにする」
「え、もう決めたの?」
「うん。直感で、これだって思った」
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だけど私は、自分の直感を信じたい。
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