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第2章 ようこそ、放課後変身部へ!

第8話 デート?

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「えっ!?」

 てっきり如月さんの姿でくると思っていた私は、びっくりして何も言えなくなってしまう。そんな私を見て、蓮さんはくすっと笑った。

「この方が、デートっぽいかなって」
「で、デートって……!」

 正体が如月さんだと分かっていても、蓮さんは王子様にしか見えない。きらきら王子様にこんなことを言われたら、どきどきしてしまうのは当たり前だ。

「デートじゃないの? 僕は、そのつもりできたんだけど」
「れ、蓮さん……!」

 不敵に笑うと、蓮さんは一瞬だけ如月さんの顔に戻った。

「……なんて。本当は、好きな格好で友達と遊んでみたかっただけなの」

 それだけ言うと、また蓮さんに戻る。
 慣れると、こんなに早く切り替えられるものなの!?

「それにしても、今日の委員長はいつも以上に可愛いね」
「あ、ありがとう」
「お礼なんていいよ。本当のことを言っただけだし」

 ふふ、と蓮さんは余裕そうに笑った。
 なんか、私のことからかってない……!?

「蓮さん」

 名前を呼んで、いきなり手を繋ぐ。蓮さんが目を真ん丸にしたのを見ると、無性に達成感があった。
 私だって、やられっぱなしじゃないんだから。

「デートなら、手くらい繋ぐもんでしょ?」
「……委員長って、結構積極的だね」
「そうなの。なんなら、私がリードしてあげようか?」

 そこまで言って、私は大笑いしてしまった。だめだ。耐えられない。
 そんな私につられたのか、蓮さんも大きな声で笑う。
 こんな風に友達と冗談を言い合って遊ぶなんて、生まれて初めてかも。
 いつも、頭の中で考えたとしても、冗談なんて言えなかったから。

「行こうか、委員長」
「うん。今日はよろしくね、蓮さん」

 今日の私はまだ、別の誰かに変身しているわけじゃない。だけど、いつもとはちょっぴり違う私だ。





「僕のおすすめはここだよ」

 蓮さんが連れてきてくれたお店は、アニメショップに併設した、大型のコスプレ専門店だった。
 店内には様々な衣装やウィッグ、カラコン、コスプレ用化粧品などが並んでいる。

「すごい……!」

 見覚えのあるアニメキャラの衣装やウィッグを見ると、なんとなくテンションが上がってしまう。
 アニメキャラの衣装だけじゃなくて、メイド服やナース服もある。
 見てるだけでこんなにわくわくしちゃうお店があったんだ……!

「大体価格帯ごとに分けられてるから、売り場も見やすいんだよね」

 蓮さんはこの店には慣れているのだろう。ウィッグコーナーを指差した。

「まず、ウィッグから見てみようか」
「うん!」

 テンションが上がって、いつもより声が大きくなってしまう。でも、それを恥ずかしいとも思わないほど、今の私は浮かれている。
 ウィッグコーナーはかなり広くて、品揃えも豊富だ。
 三千円もしないお手頃な価格のものから、本物の髪の毛を使った十万円近くする高級品まである。

「委員長、予算って決まってる?」
「あ、うん。一応。ウィッグ以外に買うものもあるし、一万円……出しても、一万五千円程度がいいなって。二万円までなら、出せないことはないんだけど」

 日頃、私はあんまりお小遣いを使わない。コスメや可愛い雑貨は、勉強を頑張ったご褒美に買ってもらうことが多いから。
 まあそれでも、ウィッグやカラコンを買ったら、今まで貯めてたお年玉が全部、なくなっちゃいそうだけど。
 でも、いいの。絶対、後悔なんかしないし。

「了解。それくらいの予算なら大丈夫だと思う。安いのを買って試してみるのもありだけど、買いなおすってなると、後々もっとかかっちゃうしね」
「確かに……」
「あと、ヘアセットとかヘアカットを自分でやれるなら、ちょっと安くなるよ」

 あらかじめツインテールやポニーテールの形になっているウィッグもかなり多い。
 そういったウィッグは、ヘアセットしていない物に比べると高いみたいだ。
 ウィッグのセットなんてやったことないけど、手先の器用さにはちょっと自信がある。
 それに、どうせなら自分で好きなようにやりたいし。

「ヘアセットは自分でやろうかな」

 言いながら、ピンク色のウィッグを見ていく。
 ピンク色、と言ってもいろいろある。鮮やかなビビッドピンクも、柔らかい桜色も、全部ピンクだ。

「うーん……どれがいいんだろ」

 あまりにも大量のウィッグを見ていると、頭が混乱してくる。
 でも、ちゃんとお気に入りの物を見つけないと。だってそれが、なりたい私を作る大事なウィッグになるんだから。

「あっ!」
「いいのあった?」
「うん。これ……」

 一目見た瞬間に惹かれたのは、グラデーションがかったウィッグだった。
 根元から20センチくらいはパステルピンクで、毛先にいくにつれて、だんだんと濃いピンクに変わっている。

「私、これにする」
「え、もう決めたの?」
「うん。直感で、これだって思った」

 高い買い物だし、もっといろんな物を見比べた方がいいのかもしれない。
 だけど私は、自分の直感を信じたい。
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