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第2章 ようこそ、放課後変身部へ!

第7話 なりたい自分

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「よし!」

 椅子に座って、スケッチブックの新しいページを開く。
 今日はもう課題もお風呂もご飯も終わってるから、後は寝るだけ。時間を気にする必要なんてない。

「どんな子になりたいのかな、私」

 スケッチブックに、女の子の絵を描いてみる。まだなりたい自分が明確になったわけじゃないけど、頭の中だけで想像するより、絵にした方が分かりやすい。
 まず、髪型はどうしよう? 髪の色だって、なんでもいいんだよね。

「なんでもいいって言われると、悩んじゃうな……」

 呟いた自分の声があまりにも嬉しそうで、思わず笑ってしまう。
 私、さすがに浮かれすぎかな?

「やっぱり、ツインテールがいいかも」

 どうせなら、理想を詰め込んだ女の子になりたい。とびきり可愛くて、私の好きで溢れた女の子。
 委員長らしく……なんて一切考える必要ないんだもん。
 私は昔から、可愛い物が大好きだ。フリルもリボンもレースも、全部好き。
 一番好きな色は……。

「ピンク、とかどうかな。髪の毛」

 ピンク色のツインテール。そんなのもう、想像しただけで絶対に可愛い。

「目の色もピンク? いやでも、髪がピンクだから、赤とかの方がバランスいいかな」

 呟きながら、いろんな女の子の絵をスケッチブックに描いていく。
 耳の上のツインテールも、耳の下のツインテールも、ストレートのツインテールも、ゆるふわ巻きのツインテールも、全部可愛い。
 そうだ。それに、メイクもするってなったら、今まで使えてなかったコスメだって使えちゃうよね?
 パッケージが可愛いから、という理由で集めたコスメがいっぱいある。使いたかったけれど、タイミングを作れなかったのだ。

「えーっと、コスメはあるからいいとして……ウィッグとカラコンは買わなきゃだよね」

 でも私、ウィッグとかカラコンって、全然詳しくないんだよね。
 インターネットで調べればいっぱい情報は出てくるけど……なんていうか、情報がありすぎて、どれが本当のことなのかよく分かんないし。
 それに、実物を見て、色や質感を確かめたい。

「誘ったら、如月さん、一緒に見にいってくれるかな」

 スマホに手を伸ばす。実は今日、如月さんと連絡先を交換した。
 一緒に出かけよう、って誘うのはちょっと緊張する。でも、如月さんのことを誘ったら、もっと如月さんと仲良くなれるかもしれない。
 だったら、連絡してみよう。だって私、如月さんともっと仲良くなりたいから。

『如月さん。今度、一緒にウィッグとカラコンを見にいってくれない?』

 そうメッセージを送ると、すぐに既読がついて、一分も経たないうちに返事がきた。

『行く! 私、土日も平日も、いつでも暇だから!』

 力強いメッセージだ。
 如月さんも、私と仲良くなりたいって思ってくれてるのかな?
 だったら、嬉しいな。

『今週の土曜日とかどう?』

 スケジュールを確認して、一番近い休みの日を伝えてみた。すると、またすぐに返事がくる。

『大丈夫!!』

 ビックリマークが二つって、なんか、普段の如月さんからは想像できないかも。
 如月さん、どんな顔でメッセージを打ってるんだろう。





「よし。結構、いいんじゃないかな」

 鏡の前で、くるっと一回転する。ワンピースの裾が、ふわり、と揺れた。
 今日は、如月さんとお出かけする日。待ち合わせ場所は池袋駅だ。池袋にはコスプレ用品の店が多くて、ウィッグやカラコンを見にいくには最適らしい。

「……如月さん、びっくりするかな」

 今日はいつもの三つ編みじゃなくて、耳の下でツインテールにしてみた。薄いけどメイクもやってみたし、眼鏡じゃなくて、クリアコンタクトを使ってみた。
 大変身したわけじゃない。でも、いつもの私とは違う。
 貯金していたお金を全部財布に詰めて、鞄を持って家を出る。こんな格好で外出するのは初めてだ。
 如月さんはきっと、委員長らしくないね、なんて言わない。それが分かってるから、いつもと違う格好ができた。

「本当、楽しみだな」





 電車を降りて、待ち合わせ場所の東口へ向かう。約束の時間までは、あと10分。
 前髪、崩れてないかな?
 手鏡を取り出し、前髪をチェックする。スプレーで固めた甲斐もあって、全く動いていなかった。

「……なんか、楽しいな」

 まだ、如月さんと合流してすらいない。でも、ちょっとお気に入りのワンピースを着て、少しだけどおしゃれをした。
 それだけで、すごく幸せな気分だ。

「委員長、おまたせ」

 声が聞こえて、慌てて振り返る。
 そこに立っていたのは、私服姿の蓮さんだった。
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