16 / 16
出汁巻き玉子と豚の角煮
2
しおりを挟む
「お久しぶりです。その節は…どうも」
「ふふ。どうぞ、メニューです」
俺にはわからないやり取りだけど、どこか楽しそうな一真と店主のやり取りを眺めているのは悪い気はしない。
俺にも軽く会釈をする店主に、ビールを二つ注文する。
かしこまりました、と微笑んで店主が立ち去っていく。
「…確かに、良い店だな。なんか落ち着く感じするわ」
「だろ?飯がさ、また美味いんだよ。なんかホッとするっていうか」
何食う?と男二人でメニューを覗き込む。
「あー、なんかさぁ、ガッツリしたもん食いたい」
「分かるわぁ…でもさ、俺ここ最近出前で揚げ物続いてて」
「分かる…なんかさぁ、頼んじゃうよなアレ…」
うちの会社は残業続きになると部署でまとめて出前を取ったりする。別に揚げ物じゃ無いものもあるんだけど、何故かついついテンションで揚げ物頼んじゃうんだよなぁ。
「お、これとかどう?」
「あ、良いね。あと俺出汁巻き玉子食いたい」
店に漂う良い香りに誘われて出汁を含んだものが欲しくなる。
「いいね」
ほどなくビールを運んできた店主に料理を注文する。
よく冷えたビールにはきめ細かい泡が乗っていて思わず喉が鳴る。
軽く二人でグラスを合わせて一気にビールをあおる。
…………プハァ。
口に着いた生クリームのような泡をぺろり。
ちょうど目が合った店主にビールの追加と枝豆を頼む。
「あー………うまぁ」
「仕事後のビールまじしみるわぁ………」
しばし二人でしみじみとビールの旨味を堪能する。
すぐにビールのお代わりが来た。2杯目からは少しゆっくりと飲み進めながら頼んだ枝豆を少しずつつまむ。
「良い店だな」
「だろ?」
店主が一人で切り盛りしているとは思えない程に注文はスムーズだ。ビールもうまい。
冷え具合と泡のきめ細やかさが絶品だ。
「なんか、ほっとするわ」
「それな。つっても、俺もまだ2回目なんだけど」
「あ、そうなん?」
「おう。でも、なんだろ、ここ来るとさぁ、なんかあー帰ってきたわーって感じする」
「ははっ。なんかちょっとわかるかも」
枝豆をプチプチと摘みながらたわいもない話を話す。
「……つーか、お前には言っとこうかと思って。俺、来月あたりちょっと長めに有給取るんだわ」
「え、まじ?」
「おう、んで、俺が居ない間の引き継ぎお前に頼もうかと思っててさ」
「えぇ!?」
「お待たせしました。だし巻き卵と豚の角煮です。取り皿こちらに置いておきますね」
タイミングが良いのか悪いのか。
店主が運んできた料理は美味そうな湯気をたてている。
だし巻き卵は見て分かるくらいふわふわでぷるぷる揺れているし、豚の角煮にはご丁寧に二つに割られたゆで卵と辛子が添えられている。
「お、きたきた。ここ、料理も美味いんだぜ。先ずは食おう」
「ふふ。どうぞ、メニューです」
俺にはわからないやり取りだけど、どこか楽しそうな一真と店主のやり取りを眺めているのは悪い気はしない。
俺にも軽く会釈をする店主に、ビールを二つ注文する。
かしこまりました、と微笑んで店主が立ち去っていく。
「…確かに、良い店だな。なんか落ち着く感じするわ」
「だろ?飯がさ、また美味いんだよ。なんかホッとするっていうか」
何食う?と男二人でメニューを覗き込む。
「あー、なんかさぁ、ガッツリしたもん食いたい」
「分かるわぁ…でもさ、俺ここ最近出前で揚げ物続いてて」
「分かる…なんかさぁ、頼んじゃうよなアレ…」
うちの会社は残業続きになると部署でまとめて出前を取ったりする。別に揚げ物じゃ無いものもあるんだけど、何故かついついテンションで揚げ物頼んじゃうんだよなぁ。
「お、これとかどう?」
「あ、良いね。あと俺出汁巻き玉子食いたい」
店に漂う良い香りに誘われて出汁を含んだものが欲しくなる。
「いいね」
ほどなくビールを運んできた店主に料理を注文する。
よく冷えたビールにはきめ細かい泡が乗っていて思わず喉が鳴る。
軽く二人でグラスを合わせて一気にビールをあおる。
…………プハァ。
口に着いた生クリームのような泡をぺろり。
ちょうど目が合った店主にビールの追加と枝豆を頼む。
「あー………うまぁ」
「仕事後のビールまじしみるわぁ………」
しばし二人でしみじみとビールの旨味を堪能する。
すぐにビールのお代わりが来た。2杯目からは少しゆっくりと飲み進めながら頼んだ枝豆を少しずつつまむ。
「良い店だな」
「だろ?」
店主が一人で切り盛りしているとは思えない程に注文はスムーズだ。ビールもうまい。
冷え具合と泡のきめ細やかさが絶品だ。
「なんか、ほっとするわ」
「それな。つっても、俺もまだ2回目なんだけど」
「あ、そうなん?」
「おう。でも、なんだろ、ここ来るとさぁ、なんかあー帰ってきたわーって感じする」
「ははっ。なんかちょっとわかるかも」
枝豆をプチプチと摘みながらたわいもない話を話す。
「……つーか、お前には言っとこうかと思って。俺、来月あたりちょっと長めに有給取るんだわ」
「え、まじ?」
「おう、んで、俺が居ない間の引き継ぎお前に頼もうかと思っててさ」
「えぇ!?」
「お待たせしました。だし巻き卵と豚の角煮です。取り皿こちらに置いておきますね」
タイミングが良いのか悪いのか。
店主が運んできた料理は美味そうな湯気をたてている。
だし巻き卵は見て分かるくらいふわふわでぷるぷる揺れているし、豚の角煮にはご丁寧に二つに割られたゆで卵と辛子が添えられている。
「お、きたきた。ここ、料理も美味いんだぜ。先ずは食おう」
11
お気に入りに追加
5
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
【R18】豹変年下オオカミ君の恋愛包囲網〜策士な後輩から逃げられません!〜
湊未来
恋愛
「ねぇ、本当に陰キャの童貞だって信じてたの?経験豊富なお姉さん………」
30歳の誕生日当日、彼氏に呼び出された先は高級ホテルのレストラン。胸を高鳴らせ向かった先で見たものは、可愛らしいワンピースを着た女と腕を組み、こちらを見据える彼の姿だった。
一方的に別れを告げられ、ヤケ酒目的で向かったBAR。
「ねぇ。酔っちゃったの………
………ふふふ…貴方に酔っちゃったみたい」
一夜のアバンチュールの筈だった。
運命とは時に残酷で甘い………
羊の皮を被った年下オオカミ君×三十路崖っぷち女の恋愛攻防戦。
覗いて行きませんか?
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
・R18の話には※をつけます。
・女性が男性を襲うシーンが初回にあります。苦手な方はご注意を。
・裏テーマは『クズ男愛に目覚める』です。年上の女性に振り回されながら、愛を自覚し、更生するクズ男をゆるっく書けたらいいなぁ〜と。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる