運命の会社想像で書く

切島すえ彦

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はじめ

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僕は時々「運命の人」について考えてしまう。多くの人が「この人が俺の、私の運命の人だ」と言うのを聞くことがあるが、それはどこの次元でも当たり前のように言われている。もし天使たちがその「運命の人」に関する仕事をしているとしたら、どのように進んでいるのだろうか、と想像することがある。

例えば、一つの天使が担当する仕事を考えてみよう。天使たちが集まって一人一人の情報を分ける「情報部」という部署があるかもしれない。そこでは、人生のあらゆる要素――性格、希望、過去の経験、未来の可能性――が集められ、それが分析されて運命の出会いに関する計画が立てられる。そして、その計画は「営業部」に送られ、天使たちは実際に人間界で「外回り」を始める。彼らは人々が偶然の出会いや運命的な瞬間に気づけるように、微妙なシグナルを送る役目を担っている。

営業部の天使たちはその計画を基に、対象者を選び出す。これが、まるで天使たちが別の会社に行って商談をするようなものだ。そして、最終的に「どの人がその人にとって最も適切な相手か」という選抜が行われる。そして、ふたつの天使の会社が合意に達し、運命の相手が決定される。この過程は恋愛において特に有名だ。

こうして、運命の相手が決まると、その人の人生が少しずつ動き出す。人生は、赤ちゃんから始まり、ただ生活を送っていくように見える。

二人の出会いは、運命の伏線が徐々に張り巡らされていく中で始まった。一人は普通のサラリーマンで、もう一人は社会をまだよく知らない大学生の女性。彼女はインターンとしてその会社にやってきた。そして、彼女の世話を任されたのが、その男性だった。最初は仕事上の関係だった二人だったが、日々一緒に働くうちに少しずつ親しくなっていく。やがてプライベートでも会うようになり、二人は自然と仲を深め、交際を始めることになった。

しかし、運命の人として選ばれた二人には、試練が待ち受けていた。別のライバル会社の天使たちが、二人を引き離そうと邪魔をし始めたのだ。最初の試練は、男性の海外転勤だった。突然の異動で、二人は遠距離恋愛を余儀なくされる。最初のうちは連絡を取り合い、頑張って関係を続けようとするが、次第に距離を感じ始める。

そのうち、女性は魔が差し、彼女に好意を寄せる別の男性に揺れ始める。彼女はその男性との関係に迷い、誘惑に負けそうになる。しかし、運命を決めた天使たちはその状況を見逃さなかった。女性が気を迷わせそうなその瞬間、彼女の元に海外にいる男性からのメールが届く。そのメールは彼女を正気に戻し、心を再確認させた。

時間が経ち、男性はついに海外から帰国する。そして、女性も大学を無事に卒業し、二人は再び一緒になった。多くの試練を乗り越えた彼らは、今度こそ正式に付き合い始める。天使たちのサポートと二人の絆が、運命をしっかりと繋ぎ留めたのだった。

数年が経ち、二人には赤ちゃんが生まれた。しかし、その瞬間から再び天使たちが動き出す。けれども、天使も時にはミスを犯すことがある。その子の「運命の人」を選ぶ際に手違いが起こり、本来とは異なる人物が選ばれてしまった。この誤りにより、その子の人生も運命も大きく変わってしまうことになる。

大人になったその女性は、最初に運命づけられた男性と恋愛を始め、結婚することになる。しかし、その結婚生活は思い描いたものとは程遠く、彼女はひどい扱いを受けるようになる。天使たちの会社は、そのミスにしばらく気づかなかったが、後にようやく運命の選定に誤りがあったことを発見する。しかし、すでに女性は苦しい生活の中にいた。

その後、運命を修正するために天使たちは再び動き出す。女性は新たな男性と出会い、その男性に助けられたことで希望を取り戻す。この出会いは二人にとって良いものであり、二人はうまくいくかのように見えた。しかし、天使たちの上司の中には失敗を認めない者がいて、過去の運命を無理に修正しようとした結果、元の夫がしつこく女性につきまとい続ける。

ついに最悪の事態が起こる。元の夫は嫉妬に狂い、女性を襲おうとした瞬間、新しい男性が彼女を庇って刺されてしまう。その結果、彼は命を落とし、元の夫も後に自ら命を絶ってしまう。女性は深く嘆き悲しみ、運命の失敗を感じた天使たちも重大な過ちを犯したと自覚することとなった。天使はその責任を取らされ、厳しい処罰を受けることになる。

その時、天界の幹部クラスの天使が、その女性のために特別な処置を施し、彼女に新しい希望を与える。彼女に赤ちゃんが授けられ、その赤子が彼女の新たな支えとなる。必死に育てた子供だが、過去の辛い経験から、母親は自分の子供が恋愛することを頑なに禁じるようになる。しかし、その子供は幼い頃に好きになった女性と将来を約束していたのだ。

母親の反対により二人の距離は離れていき、その子供は祖父母の元で育てられることになった。月日が流れ、彼は懸命に働き、自ら会社を立ち上げ社長にまで上り詰めた。そして、ある日仕事のために取引先の会社へ向かう途中、困っている女性を見かけ、助けることにした。

驚くべきことに、その女性はかつて将来を約束した女性だった。しかし、彼女は今、その会社の社長の秘書をしており、さらに社長と婚約していることが判明した。二人はお互いを思い出し、昔の思い出話に花を咲かせたが、彼女が婚約者を持っている以上、これ以上の関係には発展しないと思われた。

しかし、天界では幹部の天使が過去の失敗を思い出し、人間界で禁じられた禁じ手を使ってしまう。それは、強制的に人間の運命を変えるというリスクの高い行為だった。天使がその力を使った結果、久しぶりに再会した二人は再び強く惹かれ合い、昔のように話し込んで夜を共に過ごすことになった。

その夜の出来事が、思わぬ事件を引き起こしてしまう。まず、男が経営する会社の大事な契約が次々に消えていき、彼は社長の地位を降ろされることとなる。一方で、女性は社長との婚約を急がされ、追い詰められた状況に置かれてしまう。男は何もできず無力感に苛まれるが、ふと思い立ち、久しぶりに母親のもとを訪ねることにした。

母親は病に倒れ、入院生活を送っていた。病室で、久しぶりに顔を合わせた二人は話し始める。母親は静かにこう言った。「いい?後悔だけはしてはいけない。あなたが本当に思うように動きなさい」と。その言葉を胸に、男は決意を固める。そして、女性の結婚式当日、式場へと向かい、彼女を連れ出す。

二人は喧騒を離れ、静かな田舎で新しい生活を始めることにした。平穏な暮らしの中で、やっと二人は真の幸せを見つけることができた。

一方、天界では禁じ手を犯した幹部天使が、天使たちの社長に呼び出される。「今回は特別に許しますが、今後は気をつけるように」と厳しく注意された。

「はい」と幹部天使は頭を下げ、再びその役割を全うするために戻っていった。
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