蠱毒の王

つららの

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プロローグ②

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死んだ。まあ、誰がどう見たってあの状況は死ぬよね。
やっぱり、案外、人って簡単に死ぬもんだなぁ。
俺も色々症例見てきたけど、健康な人が急に死ぬことなんて珍しいことでもないし。うん、そんなもんだよね。

って、なんで俺の意識まだあるの?もしかしてまだ死んでない?全身麻痺で脳だけ生きてるのかな?昔観たTV番組で全身麻痺の人が箱に閉じ込められてるって錯覚するっていうホラー?みたいなものやってたな。

「-/-// ---- -/--- -/--/ 」

ん?なんか聞こえた気が、、
聴覚は麻痺してないのか、、?

「閨槭%縺医※繧九°繝シ縺?」

うわっ、なんか何とも言えない音?言葉?が聞こえるんだけど、、
出血性ショックの後遺症で脳性麻痺になって言語野がダメになってるのかな?
こりゃリハビリするとなったら大変だな。

「これならどうかなぁ?」

うぉ、いきなり日本語に聞こえるようになった。てか、え?なに?どういうこと?なんか意図だけ無理やり流し込まれてるような何とも言えない気持ち悪さ。

「気持ち悪いなんてひどいなぁ。せっかく話しかけてあげてるのにさぁ。」

え、心読まれてる?俺、口に出してないよね??

「口に出すも何もぉ、君、口ないじゃぁん。」

声変わり前の少年か少女かわからないのような高さの間延びした声でそう告げられて俺は気づいた。意識は確かにここにあるが、それを内包する肉が、骨が、神経が無いことを。

はぁ、どういう状態なんだ、、?トランス状態みたいな感じか?死に瀕して脳が幻覚を見ているのか?

「とことん僕と会話してくれないねぇ、もしかして僕のこと嫌いかぃ?」

冗談めかしく話しかけてくる声の主。そのせいか、なぜか少し現状が阿呆らしく感じてきた。

「いや、申し訳ない。無視していたわけでは無いんだよ、少し混乱しててね。ところで君は誰なんだい?俺の妄想かな?てことはまだ生きてるのか?助かって脳が活動し始めたってことなのか?それとも死の間際?いや、臨si、、」

「ストップストップぅ、そんなに一気に聞かれても答えきれないよぉ?ひとつづつなら質問に答えるからさっ!」

「あぁ、すまん。では、俺は今どうなってるんだい?」

俺は何の疑いもなく、素直に質問した。

「君はねぇ、トラックに撥ねられて呆気なく死んだよぉ?そして、今は魂だけの状態ってやつだねぇ。」

「なるほど、やっぱり死んだんだね。じゃあ俺は何で意識が、魂が残ってるんだい?」

「それはねぇ、聞きたぃ?ねぇ、知りたいかぃ?」

「ああ、ぜひ知りたいね」

「なら教えてあげようじゃないかぁ!君はねぇ、選ばれたんだよっ!光栄にも僕の慈悲を受ける者にっ!」

「慈悲、、?具体的にはどういうことなのかな?」

「僕はねぇ、実は神様なんだよぉ?君が生きているぅ、いやぁ、今は生きて"いた"だねぇ。あはっ。その生きていた世界とは少し違う世界の神様なんだよぉ!」

「はぁ、神様か」

神様か、まあ、彼がそう言うならそうなんだろう。神様って実在したんだね。

「あれぇ?あんまりピンときて無いかなぁ?まあいいやぁ。とにかくぅ、その神様である僕が君を僕の世界に招待してあげるってわけさっ!うれしいでしょぅ?」

「招待っていうのは、観光みたいな感じかな?でも俺もう死んじゃってるんだけど?」

「察しが悪いなぁ、君を僕の世界に招待するってことはぁ、つまり僕の世界の住人としてもう一度人生を謳歌させてあげようってことだよぉ!僕の世界でもう一度生を受けてぇ、新しい人生をスタートするのさっ!」

「しかもぉ、僕はとぉっても優しい神様だからぁ、君の記憶を残したまま生まれさせてあげるよぉ!どうかなぁ、嬉しいでしょぉ?」

「つまり俺は、今の俺の人格まま、人生をやり直せるってことかな?何のリスクも無しでかい?」

上手い話には裏がある、まあ、一応確認しておこう。そんなに懐疑的になる必要もないけど、まあ、一応ね。

「人格についてはぁ、いろんな影響を受けるからぁ、大人になっても今のままってのは保証できないけどぉ。でもぉ、何か条件とかぁ、縛りとかはないよぉ?」

「むしろぉ、特典をあげちゃうぐらいなんだからぁ!」

「人格については、君の言うとおりだと思うしリスクについても納得したよ。それで特典っていうのはどんなものなのかな?」

「あはっ」

???
何か面白いことでも言ったかな?

「特典についてはねぇ。君ぃ、死ぬ時に来世はこんなに簡単に死にたくないって思ったよねぇ?それを叶えてあげようと思うんだぁ。」

「叶える、、?不死身にでもしてくれるのかな?」

「いやいやぁ、それはやりすぎだからぁ、僕が君にギフトをあげてぇ、簡単には死なないようにしてあげるって感じだねぇ。」

「ギフト?簡単には死なないってのはどういうことなんだ、、?」

「そこらへんはぁ、実際に確かめてみようよぉ!」

神様がそう言うと、声以外感じられなかった世界に極才色の光が溢れ始め、目まぐるしく世界が蠢き始めた。

「うおっ、これどうなるんだ!?ねぇ!神様!?」

「最後にぃ、ひとつだけ僕からの言葉を授けるねぇ。」

「ちょっ!うわっ!なんか熱い!?」

「汝、その、"頂"に至らんことを、、、」

ここで俺の意識は途切れた






まぶしい。喉が焼けるように熱い。体を撫ぜる何かが肌を刺す。初めてではないが、初めての感覚。

この日、俺は、、、

アイン・シュタウフェンはこの世界に生まれ落ちた。
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