116 / 166
獣国編
42 雷の洞窟 ①
しおりを挟む「これが開発した新しい魔道具アクアベールだ」
そう言ってリョダリが渡してくれた魔道具はアクアマリンのピアスだった。
「ピアス ?」
「戦闘してるときにペンダントやブローチだと落ちる可能性や、指輪だと武器を持ってるときに邪魔と感じる可能性もある、まぁ…結婚指輪以外基本はつけたくないだろう ?」
「あ…そっか」
「それにリオンが作ったんじゃなくて私が作ったやつだし余計にまずいだろう」
苦笑しながらも助言してくれるリョダリに嬉しさが込み上がってくる。
あの後私達は作戦や準備などの話し合いをし、リョダリが帯電対策の魔道具が出来次第出発することになった。
その魔道具が無事完成したということで今受け取っているのだ。全員分受け取った私達は今から雷の洞窟へ旅立つことに決めた。
「それでまた」
「ああ、洞窟の後はここに戻るのか ?」
「他の精霊の情報がありましたらそちらに向かう予定です」
「というわけなの」
「何かあったらケタイに連絡してくれると嬉しく思う」
「はい。リョダリも何かあったら連絡してね ?」
「ああ、リオンに連絡するよ」
「世話になった」
「それではまた、失礼いたします」
「セバスさん、マリーとリオンをよろしく頼むよ」
「勿論です」
そう言ってふと微笑んだセバスさんをリョダリは満足そうに頷いた。
ここまでしか見送れないからと王宮の門前まで見送ってくれたリョダリに背を向けて私達は王都を出ていった。
さわさわと心地よい風がそよぎ草原にある草花を揺らしていく…そんな周りの音風景を楽しみながら私達は雷の洞窟へと向かった。
時々狼型の魔獣やスライムも現れさくさくと倒しながら進んでいく。
日が暮れれば野営をし王都を旅だってから数日たった頃ようやく雷の洞窟にたどり着いた。
一歩足を踏み入れた瞬間そこからビリビリと足に痺れがはしる…
「これは…かなり強いですね」
「リョダリの魔道具がなければ入れないな」
「シルフとノームの力では無理だったでしょう」
「ピアスに魔力を注いで見ましょう」
「そうだな」
「この魔道具の改善点等あれば教えてほしいそうです」
「確認するには今回ちょうど良かったのかもしれませんね」
「リョダリったら…ふふ」
ピアスに魔力を注げば薄い幕のようなベールが全身を覆う、ひんやりと少し涼しく感じるのは水の属性だからだろう。
改善点等の報告を求めるのは完璧をやや求める日本人魂のせいだろう。そう思うと笑ってしまった。
王宮のリョダリの離宮にいる時、リオンがいないのを見計らって一回リョダリが会いに来たことがあった。
「雪さんは溺愛されてるね」
「うん…」
「雪って呼ぶなと怒られたよ、あのリオンに」
「ええ !?」
「あの誰にも興味がないって感じだったリオンが…ほんとに驚いた」
「ふふ、うん」
「同郷が幸せそうで良かった」
「ありがとう」
「式を挙げてないと聞いた。もし挙げるなら言ってくれ、前世の記憶をフルに活かした結婚式にしてやる」
「ぷっふふふ…それは楽しみね !! ゴンドラとか頼もうかなぁー」
「リオンが全力で嫌がりそうだがそれも楽しそうだな」
「打ち合わせ時に破壊されそう !!」
「本番当日まで黙っとけばいいさ、指定位地として二人で立った所を吊り上げる」
「ええー(笑)」
こんな話をして盛り上がった。一人でも見方の同郷がいるだけで心が安らぎ落ち着く…リオンとは違う安らぎだけど楽しかったなあー
そんな風に考えていた私をリオンが腰に手を回し引き寄せた。
「何を考えている」
「ん、リオンと一緒で幸せだなって」
「そうか」
そう言って少し微笑んだ後唇を寄せようとしたリオンをセバスさんが注意する…
「坊っちゃんそういう事は二人でおこなってください」
「ちっ」
「リオン…人前は」
「分かっている」
不機嫌になったリオンに私は苦笑しセバスさんは溜め息を付きキール様は見なかったフリをする。そんな感じで私達は雷の洞窟へと足を進めた
0
お気に入りに追加
4,158
あなたにおすすめの小説
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢は逃げることにした
葉柚
恋愛
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢のレイチェルは幸せいっぱいに暮らしていました。
でも、妊娠を切っ掛けに前世の記憶がよみがえり、悪役令嬢だということに気づいたレイチェルは皇太子の前から逃げ出すことにしました。
本編完結済みです。時々番外編を追加します。
【R18】殿下!そこは舐めてイイところじゃありません! 〜悪役令嬢に転生したけど元潔癖症の王子に溺愛されてます〜
茅野ガク
恋愛
予想外に起きたイベントでなんとか王太子を救おうとしたら、彼に執着されることになった悪役令嬢の話。
☆他サイトにも投稿しています
【R18】悪役令嬢を犯して罪を償わせ性奴隷にしたが、それは冤罪でヒロインが黒幕なので犯して改心させることにした。
白濁壺
恋愛
悪役令嬢であるベラロルカの数々の悪行の罪を償わせようとロミリオは単身公爵家にむかう。警備の目を潜り抜け、寝室に入ったロミリオはベラロルカを犯すが……。
もう彼女でいいじゃないですか
キムラましゅろう
恋愛
ある日わたしは婚約者に婚約解消を申し出た。
常にわたし以外の女を腕に絡ませている事に耐えられなくなったからだ。
幼い頃からわたしを溺愛する婚約者は婚約解消を絶対に認めないが、わたしの心は限界だった。
だからわたしは行動する。
わたしから婚約者を自由にするために。
わたしが自由を手にするために。
残酷な表現はありませんが、
性的なワードが幾つが出てきます。
苦手な方は回れ右をお願いします。
小説家になろうさんの方では
ifストーリーを投稿しております。
未亡人メイド、ショタ公爵令息の筆下ろしに選ばれる。ただの性処理係かと思ったら、彼から結婚しようと告白されました。【完結】
高橋冬夏
恋愛
騎士だった夫を魔物討伐の傷が元で失ったエレン。そんな悲しみの中にある彼女に夫との思い出の詰まった家を火事で無くすという更なる悲劇が襲う。
全てを失ったエレンは娼婦になる覚悟で娼館を訪れようとしたときに夫の雇い主と出会い、だたのメイドとしてではなく、幼い子息の筆下ろしを頼まれてしまう。
断ることも出来たが覚悟を決め、子息の性処理を兼ねたメイドとして働き始めるのだった。
村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる