(R18) 悪役令嬢なんて御免です！

学園

１３ 入学

『桜ひらひら舞い降りて落ちて…』

そんな懐かしい歌が頭の中で流れていく
綺麗に咲き誇りひらひらと舞い散る ”八重桜 ”
前世の私が大好きだった思い入れのある花

ここは［愛の花束　逆ハーレム乙女（RPG）］のメインの舞台となる『王立レスティジオ学園』
遥か昔に勇者が設立した学園で基本的に貴族が通う学園で優秀な者は平民であっても通う事は出来る、12歳～18歳迄の男女共学学場だ。
基本エスカレーター式の学園で《商業、建築、法律、医療、魔法、武術、剣術
花嫁修業、extra》に至るまで様々な学問を学べる。
リオンもこの学園で学んできた、ほぼ教えることもない為飛び級卒業したのだけどね。
そしてここには四年になると講師として来る隠しキャラであるリオンを攻略すると出現し、入ることができる魔法研究室(ラブ部屋)もこの学園の中にある。
そこでR18になるけど純粋のまま卒業して王子ENDというシナリオ、1人ずつENDもあるがリオンだけは王子ENDにならないと第2期ストーリーに繋がらないという設定…

なんでリオンだけがないねん！と前世で叫んだ記憶は多々知れず…コホン…失礼しました。

そんな学園生活が今日から始まる、広大な土地に建てられた学園は◯グワー◯の建物に酷似していて(制作者のめんどくささが伝わるほんとそのまんまだよ？)いくつもの尖塔が連なる数千年の歴史がある建物だ、聞けばこの学園を考え建てたのも勇者だったとか…
絶対あの有名映画（白梟が相棒の魔法使い）を知ってる人だよね…

少し遠い所を見ながら思う…
そして学園の門をくぐったのはもう1時間前、入学式が終わりクラスのある建物までは遠く渡り廊下を通り歩いていくと次第に開けた場所に辿り着いた。
開けた場所の真ん中にあるのはとても懐かしい花だった。
渡り廊下から外れ近づいて行けば期待と絶望、緊張感が高まる。


「この花、桜は…場所は…オープンニングで映る所だ。学園の時計塔の鐘が鳴って風が強く吹いてヒロインがこの" 桜 "に見惚れてる姿を王子が見て一目惚れするんだよね。あ…でも…」


ここはゲームの中でマリアンがヒロインを傷つけようとして魔法発動するとリオンに取り押さえられて殺意と拒否の瞳で睨み降ろされる場所…　

胸の奥がツキン…と痛む。
複雑な気持ちが渦巻き私は踵を翻し校舎がある方へ歩いていった暫くするとクラスがある建物の入口に着いた、周りは私をチラチラ見てくる。
それもそうか手ぶらなのだもの…
1年生で、ましてや空間魔法なんて使える人なんかそうそういない。
今の私は【収納ストレージ】で荷物は全て入れてあるから見られて当たり前なのだけれど…
それにしても久しぶりだな…前世 "雪 "の記憶にあるグラフィックとは違ってリアルで見ると迫力があり何千年と経っているとは思えない程の建物…

この学園では純粋に学問を学ぶ為の場所であると厳しい校則があり、例え王族であっても側仕えや護衛を連れて登校するのを禁止されている。
その代わりに学園の私設の軍や魔法でのセキュリティが頑丈に敷かれ生徒の親族であっても中々簡単に立ち入る事が出来ない。
寮にはメイドや護衛を連れていても構わないし女子寮では特に魔法でのセキュリティが行われており男子など入ることはまず出来ず攻撃魔法など危険が迫ると警報がなるようになっているすぐれものだった。

とにかく教室に行かなきゃ、前世の卒業から随分と久しぶりの学校になるな…
緊張する…
知り合いはほとんど居ないけど茶会等であった方で覚えている子いるかな？

そのまま自分のクラス…Sクラスへ歩いていく
大きな黒板を中心に三日月のような作りになっている教室に入るとそこには既に数人ちらほらいた。
この学園では『S.A.B.C.D.E』とクラスが別れており、魔力と学問の成績が高いほどSに上がっていく、王子達は勿論Sクラス、ヒロインも3年生になる頃転校…入学してきて魔力と学問の成績から同じSクラスへ、そしてゲームではマリアンは魔力がやや少なめな為本来ならばAクラスになっているはずなのだが現実は魔力も非常に高く学問も満点という主席に近い状態なのだ。
ん？なぜ状態なのか？王子が主席として挨拶されるからだけど？
私は主席辞退したからねー。はは、目立ちたくないもん。

そんな事考えながらクラスに入り自分の席に座る。
そうすれば次第に人が多く入ってくるわけで、私は窓辺沿いの一番後ろの席の為風に当たりながら歴史本を開き読んでいる。

この時周りの生徒はマリアンに自然目がいってしまっていた。
マリアンは元々の整った容姿が更に成長した為に幼そうに見えながらもすでに妖艶さを纏っていて見惚れる存在だった為既にクラスでは浮いてる様だった。
そんなことも気づかず本を読んでいると隣に誰か座ったのに気付き振り向くと
隣の席の男子と目があった、その為軽く挨拶して微笑むと男子にそっぽを向かれてしまった。

え…もうなんか嫌われてるの？はぁ…先が思いやられる…もぅ勉強に集中しよう。

そうして、周りの視線に少し落ち込みながらもその後始まった自己紹介や学園説明や授業を聞いた、あっという間にお昼になり皆食堂に向かう。
とてつもなく広くて生徒達がごった返す食堂で1人何を食べようか悩んでいると一人の男性が近づいてきた。
ミルクティーの様なストレートの髪にグリーンの瞳の青年はリンブール・ナルミヤス侯爵家の次男で先月の誕生パーティーでエイザル様に紹介してもらったリオンの従姉弟に当たる人物でマリアンより一つ上の先輩だった。

「ご機嫌ようリンブール様」
「久しぶりだね、学園で分からない事はないかい？」
「いえ、今の所ありませんわ」
「僕は学年は一つ上だが気にせず声をかけてくれ」
「お心遣い大変感謝いたします」
「あ、そうだ。きっと午後からはマリアン嬢にとっては驚き嬉しい事件が起きると思うよw」
そう小声で耳元で最後だけ囁いていった彼はそのまま離れていった。

何だったんだろう？驚き嬉しい事件？
頭を傾げながら、購入した食事を持って食堂のテラスへ行き一人で食べる。
今日は日替わりＡランチのグラタン…プリップリのマカロニと具沢山の野菜はしっかり火が通っていて甘い。濃厚なミルクとチーズの風味が自然と頬を緩ませる。
熱いため息を吹きかけ覚冷ましながら前にずり落ち汚れそうなる横髪を空いてる手で耳にかけながら抑え食べる、そんな様子を他の男子生徒（学年関わらず）がギラギラと見ていることなど何も知らず嬉しそうに食べ続けるマリアンだった。
食べ終わりクラスへ戻れば数人の女子が集まりガールズトークに花が咲き自然と仲良くなった。

そういえば、王子と同じクラスだっけ？でも話しかけられないしこのまま関わりなければ問題ないからいいよね！ヒロインが来るまでまだ2年あるしそれまでは学園満喫しよう！

ゲームの中ではこの時点で既に王子は婚約者でありギクシャクした関係になっていてかなりのマリアンは自己中我儘令嬢だからだ。
楽しかった昼休みが終わり午後の授業に入るとクラスに来たのは、きっちり着込んだ先生仕様のリオンだった！

ふぉーーーー！何あれ！？何あれ！？リオンコスプレ！？
ゲーム内では常にローブだったよね！？頭が隠れるほど深くかぶって冷たい目で見下ろすタイプ！？それが髪の色も隠さず曝け出ししかも眼鏡かけてる！？
何このごちそうショット！？写メ！写メりたい！

表情に出さないようにしながらも内心悶絶しポーと見惚れているとリオンと目があった…、ドキンッ！と胸が高く鳴りドキドキと悲鳴を上げる。

今年は魔法の先生が事情により1年来られなくなった為代わりに講師に来たとの事、ゲームではリオンが講師に来るのはヒロインが4年生になってから、でも…それでも心配と不安にビクビクしていたのも事実だった…
いつ王子が関わってくるかヒロインも転生者でもう学園に来ているのでは？と…
午後の授業はリオンに見惚れほとんど身に入らなかったのは言うまでもなく、最後にプリントを回収して渡しに行った時小声で


「リア入学おめでとう、だが授業中に惚けるのは良く無い」


と呟かれたときはきっと顔が紅くなった気がしたのはリオンの鼻で笑う音で現実だと分かった、その様子を王子に見られてるとも知らず…

無事寮に戻り心地よい疲れを感じながらお風呂に入る、通常貴族の女性は侍女に身体を洗ってもらうが一般的だがマリアンは断固拒否した。
メルもそれに対しいつもの事なので「お風呂上がりは手入れを受けるという条件」で譲歩したのを未だに続けている。
お風呂から上がりメルにエステらしき事をされ私はそのまま吸い込まれるように闇の中ヘ…夢へと入っていった。


その夢は…
前世でやった【愛の花束　逆ハーレム乙女】の夢
卒業パーティーで行われる公開婚約破棄の断罪イベント
私の周りには誰もいなくて…
リオンも話してくれない…
父様も母様も信じてくれなくて…
私は一人で…断罪される
牢屋に入れられ1日1つのパン…
そして処刑される夢…

これをきっかけに私は毎日何度も何度も…同じ夢を……繰り返す事になるなど知るはずもなかった。