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幼少期

リオンside

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俺が10歳の頃…あの日…

あの日俺はいつものようにセバスと魔法と剣を組合せた模擬戦をしていた。
珍しく休みだと言う父エイザルに誘われ旧友だというカーリヒルト公爵の元へ行く事になった。

俺もついていく必要はないと思うのだが…

一度顔を合わせたほうがいいと言われ渋々行くことにした。
馬車に乗ってもうすぐ公爵家に着くという所で父から俺よりも6歳年下の今年4歳になった公爵夫妻の娘に会う事を伝えられ絶句した。
それは噂を聞いたことがあったからだ。

4歳にして既に我儘で、自分の思い通りに行かないと喚き泣き叫び、暴れ、癇癪を起こす最低糞子供バカだと。
会えば俺の髪の毛を見て化物だの、悪魔だの、魔族だの言ってくるのは目に見えて分かる。

この世界では魔力が純粋に強く多ければ多い程髪の色は黒い。
本来ならば瞳の色と同じ魔力と生活魔法しか使えない。
赤の瞳なら火…、青なら水や氷、緑なら風、茶なら地、金なら光、紫なら闇。
そして黒を持つものは全ての属性を使うことができ空間魔法なども使える。
父は黒混じり紫の瞳に髪だ。使える魔法は空間以外の属性全てだ。
その為、漆黒の俺は多くの者に忌嫌われ、恐れられている。
だから、噂の様なヤツに会えばどんなふうに言われるか、暴力振るわれるか…

俺は内心複雑だった。

父エイザルに助けられもう5年になる。
俺は生まれてすぐ母親に魔封じされた地下牢に監禁された。
5歳になる頃何がきっかけか父エイザルが監禁されている俺を見つけ助けられた。
父エイザルの妻、俺の母親は父エイザルではない他の男と子供を作り生まれたのは黒を持つ俺で恐ろしく父エイザルにずっと秘密にし魔封じの地下室へ閉じ込めていたらしい。
父エイザルはその後、直ぐに母親とは離婚し今でも俺の事を常に気にして再婚しようとしない。

「はぁ………」

俺はけして今被っているフードを取らないようにしようと更に深く被り深い溜息をついた。




公爵家につき玄関ホールへ入るとカーリヒルト公爵夫妻と俺の腰上辺りまでしかない小さな少女がいた。
フードの中から見ればピンクアメジストのサラサラしてそうな髪に宝石の様に輝き穢の知らない無垢なアメジストの瞳、象牙の様な白い肌。

一見可愛く見えるが…

噂に聞いていたのが頭にあったせいか興味など持てなかった。
父エイザルが夫妻と話しているようなのでただ黙っていた。
ふいに、父…エイザルにフードを降ろされ彼女の前に突き出されたときはエイザルを殴ろうかと思った。
何か言われる前にと睨もうと思い少女を見れば、目の前の少女は目をキラキラさせながら何故かどこか懐かしむような顔で瞳で俺を見つめてきていた。

なんだ…こいつ…俺の…髪と瞳が怖くないのか?

不思議に思いチラリと少女の親、カーリヒルト夫妻に目をやると驚きと恐怖が混じった瞳が俺を見ていた。
そう、普通はこういう反応な筈なのだが…
何故こいつはこんな瞳で俺を見る…
そう思っていると少女から挨拶をし始めた。


「お久しぶりです。エザイル様、そしてはじめまして、リオン・マギア・グリアモール様、マリアン・カーリヒルトです。よろしくお願い致します。」


その声はとても可愛く甘い……
そして4歳児とは思えないほどの丁寧でしっかりとした挨拶だった。

噂は嘘か

俺はそう思いながらこの少女から目が離せなかった、エイザルが微笑ましい顔で見ているのを感じ「ああ」と口悪く返事をしてしまったが4歳児相手に返す言葉ではなかったかと後悔しながらもこの少女に少しだけ興味を持った。
その日の帰り馬車に乗りながら父…エイザルは終始俺を見ながらニコニコしていたが何か企んでそうな顔をしていた。
少し心配になったが、俺の頭の中にはあの少女の事がちらついていてツッコむ気などにはならなかった…


次はいつ会えるだろうか
あったら聞こう。
俺の事は怖くないのか。
この黒をどう感じたのか……


そうして屋敷に帰り2日立った日の夕方エイザルが部屋へ来て、あの少女が高熱を出し意識不明になったと今夜が峠だと医者が言ったという。
魔法医師の回復ヒール治療キュアをしても何故か効かないと。

俺は背中に冷たいものが流れた気がした。
なぜ一度しか会った事のないあの少女が気になるのか、何故こんなにもざわつくのか
出来るのならもう一度…もう一度話してみたい……
夜がふける
あの少女は大丈夫だろうか
もう一度目を開け俺を見てくれるだろうか
恐れず俺に触れてくれるだろうか

俺はそう考えながら静かに目を閉じベットに倒れざわつく胸を抑えながら寝った。
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