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第六章 多々良さん探し 開始

小学生女児と神社裏(2)

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 「婚約者ではないけれど、妹だ。大切な妹を、こんな道端で追い詰めないで貰いたいんだけど。」


 多々良さん以外は割とよく見える目で、睨むと、小さな口は縫われたように何も発さなくなる。
 怪訝そうな顔でいるのは、僕がマリちゃんの兄なんかでないことを知っているからだと思われる。
 
 場が収まればいいので、事の真偽など問題ない。
 
「じゃ、用事がないなら、家に帰らせてもらうけど」

  僕の方を見るマリちゃんの手を取って、後ろを振り返ろうとした瞬間

 「こいつ、バケモノと、一緒にいた所、見たことある」

  小学生男子たちの中の少々気の弱そうな一人が、ポツリと言った。
 思わず口にでてしまった、と言った風であった。深く聞いても、答えが返ってくること確証もないような、独り言に僕は聞きなれない単語に引っかかりを覚えた。
 
「さっきから言ってるけど、バケモノってなんなの」


  呟いた言葉は不本意に出たものだったのだろう。おどおどした小学生男子はさらに目を泳がせる。

  バケモノの妹が、マリちゃんならば。
  バケモノを、彼らが帰るときにさっき見た、というならば。

  そのバケモノとは、小椿さんである可能性が高いのではないだろうか。


 「なぁ、そのバケモノって言うのは」

  僕の声を遮りマリちゃんは

「ねぇ、お兄ちゃん、足痛くてマリ、疲れちゃった。こんな場所から早くどっか行きたいから、おんぶして、連れてって。」

 マリちゃんは完全に誤魔化しにかかっている。
 言い切る前にマリちゃんを抱え上げ、俵のように担ぎ。

 「じゃ、少年たち、失礼するよ」


  捨て台詞を吐いて、マンションから遠ざかった。
  何故、家の中、マンションへとマリちゃんを連れて帰らないのかといえば、もちろん、先ほどの話について、詳しく聞くためである。小菊さんには内緒で。

  小学生女子にごまかされるほど、僕はバカではない。
 僕にはすべてを聞かなければいけない理由があり、そして期限もある。
  
 米俵状態の少女は、突然の出来事に声も出ないようで、僕に担がれるがままになってしまっていた。
 おとなしい多々良さん、というのも、存外珍しいかもしれないな、とぼんやり思った。


 「それで、マリちゃん。教えて欲しいですが」
 
 マンション近くにある、小さな神社の裏手で、僕とマリちゃんは向かい合っていた。
  所在なさげに彼女は玉砂利を蹴る。


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