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第四章 レイラとして、私として

ねぇ、テオは何で不機嫌なの?

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 乙女ゲームの中の女の子は、一体何を目的に行動していただろうか。
 
 愛する国を救うため、自分の夢のため、愛する人を助けるため。往々にして、素敵な輝かしい目標があった。
 
 レイラ・チェチェスターには、特に目標が設定されていない。
 
 選択肢の繰り返しののち、好感度の上がったキャラクターの中の一人の個別ルートに入り、そのキャラクターの悩みを解決するのだ。

 あまり個性がないキャラクターだった。
 そのほうが、ゲームをプレイする人にとっても感情移入しやすいからかもしれない。

 今、こうして、レイラ・チェチェスターとして転生した私に、やりたいことなどない。

「本当に、ないなぁ」

 ぼんやり考える。

 好きなものが、ないな。

 魔法学校の授業が終わり、館に帰ってきた。
 夕食の時間までの間、ぼんやり、ベッドの上で考えていた。

「私の好きなものって、なんだろ、テオ」
「……」

 テオは、私の机の上で、あぐらをかいていた。

 いつもなら、私と同じように、ベッドの上に乗ってくるはずなのだけれど。

 反応がないことといい、やっぱり、いつもと違う。

「ねぇ、テオ、聞いてる?」
「知らねぇ、ブス!」

 久しくテオに言われなかった言葉が突き刺さる。
 私が何も悪いことをしていない時に言われたことは、なかったはずだ。
 ここ最近の出来事を思い出してみても、特に、私が悪かったことなどない。
 学校への遅刻も、忘れ物だってしてないのに。

「テオ、どうしてそういうこと、言うの……?」

 彼らしくなく、視線をさまよわせた後、ポケットに手を突っ込んだまま、消えた。

 きっとメイド長のマリーを手伝いにでも行ったのだろう。
 私に、何一つ言わず。

 まるで会話することを避けているかのように。

 話し合いすらさせてくれない。
 転生前に聞いたことがある。

 女の人は、男の人と喧嘩した時に話し合いを求め、男の人は距離を置くことを求める、と。

 そういうこと? テオ。
 放っておいてほしいの?

 喧嘩した覚えもないのに。

 せっかくアカツキ君によって、もやもやは晴れたのに。
 また新たな問題が出てきてしまったかもしれない。
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