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第一章 愉快な攻略対象たち
いざ、魔法学校へ!(1)
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魔法学校でのイベントで出会う男の子は、主人公の選択によって左右される。
入学時する前の、登校中、曲がり角でぶつかって出会うのがアカツキ君。
在学生代表として、新入生に言葉を送るのが攻略対象の一人。
裏庭で、入学式に出ることなく、昼寝をしているのも、攻略対象の一人としている。
間違って私の教科書を持ってきてしまった、と新しいクラスにやってくるのがクルト君。
入学式のイベントで出会えるのは、この四人だ。
テオはもう最初からいるので数に数えていない。
アカツキ君は正統派さわやか主人公で、私が望むべきルートの一つであるのは確信している。
だから必ず、アカツキ君と曲がり角でぶつかり、入学式のイベントを迎えなければならない。
アカツキ君とのイベントを重ね、彼のルートを選び、平和なエンドで人生を終えたい。
例え、三次元の彼を好きじゃなくても?
心の中に出てきた疑問を振り払う。
二次元の彼が好きなら問題ないだろう。
「問題ないはず」
よし。
今日はクルト君は先に学校に馬車で行っている。生徒会に入っているクルト君は入学式の準備があるからだ。
そう、今日は魔法学校での入学式だ。
とうとう、やり直しのきかない乙女ゲームが始まってしまう。
人生をかけた乙女ゲームだ。
というか、人生だ。
ん? 人生って乙女ゲームだったか?
ともかく。
魔法学校の入学前の今日まで、三日に一回はアカツキ君の仕立て屋に通い、交流を深めていた。彼の妖精とも仲良くなれた自信はあるし、好感度でいえば、攻略キャラクターの中で頭一つ抜けている……かもしれない。
選択肢がないし、好感度を表すものもないので、全て希望的観測なのだけど。
悪い印象は持たれていないはず。
「よし、問題ない! 大丈夫!」
考え込んでると、妖精が俊敏に目の前を通り過ぎた。
「問題大ありなんだよ、この馬鹿! 寝坊しやがって! なんで誰も起こしに来ねえんだよ! 今日に限って!」
テオが私の頭上をイライラしながら飛び回っている。
赤ちゃんのおもちゃみたいで少し面白い。
遅刻しても、私が余裕なのは、それが計算の上だからである。
アカツキ君に出会うためには、遅刻しなくてはいけない。
最初のイベントスチルは、パンを加えたままの状態の私と、ぶつかるアカツキ君だ。
さすが王道。
「しょうがないよ、クルト君のお父さんが早朝に帰ってきて、また出張に行ったんだからさ。準備やらなにやらで大忙しだったし、メイドさんも眠いんだよ」
「なんでてめえは余裕なんだよ!」
今から馬車を準備するより、テオに高速魔法を足に掛けてもらい、走った方が早い。
私の足に光りが宿る。
「テオは魔法学校の先生の誰かに、遅刻するかもですって言ってきて!」
テオは頭をかき、大きくため息をついた。
「あーもう! 高速で! 素早く! 安全に! 速やかに追いついてこいよ! ふらふら寄り道して、妖精の国だの魔物の国だの迷い込むんじゃねえぞ!!」
「テオが私の安全を案じてくれている……!」
「クルトとレモネに怒られるからだよ!」
叫ぶと同時にテオは目の前から消えた。
学校に先に走ってくれているのだろう。
妖精単体で走った方が速いから、確かな判断、確かな采配である。さすが私。
そう、これこそ、アカツキ君とのイベントに入るための布石。
テオがいない状況で、アカツキ君と出会う、イベントへの完璧な導入。
私は高速魔法を使い、町をかけるだけである。
おっと、口にフランスパンをくわえるのを忘れずに。
入学時する前の、登校中、曲がり角でぶつかって出会うのがアカツキ君。
在学生代表として、新入生に言葉を送るのが攻略対象の一人。
裏庭で、入学式に出ることなく、昼寝をしているのも、攻略対象の一人としている。
間違って私の教科書を持ってきてしまった、と新しいクラスにやってくるのがクルト君。
入学式のイベントで出会えるのは、この四人だ。
テオはもう最初からいるので数に数えていない。
アカツキ君は正統派さわやか主人公で、私が望むべきルートの一つであるのは確信している。
だから必ず、アカツキ君と曲がり角でぶつかり、入学式のイベントを迎えなければならない。
アカツキ君とのイベントを重ね、彼のルートを選び、平和なエンドで人生を終えたい。
例え、三次元の彼を好きじゃなくても?
心の中に出てきた疑問を振り払う。
二次元の彼が好きなら問題ないだろう。
「問題ないはず」
よし。
今日はクルト君は先に学校に馬車で行っている。生徒会に入っているクルト君は入学式の準備があるからだ。
そう、今日は魔法学校での入学式だ。
とうとう、やり直しのきかない乙女ゲームが始まってしまう。
人生をかけた乙女ゲームだ。
というか、人生だ。
ん? 人生って乙女ゲームだったか?
ともかく。
魔法学校の入学前の今日まで、三日に一回はアカツキ君の仕立て屋に通い、交流を深めていた。彼の妖精とも仲良くなれた自信はあるし、好感度でいえば、攻略キャラクターの中で頭一つ抜けている……かもしれない。
選択肢がないし、好感度を表すものもないので、全て希望的観測なのだけど。
悪い印象は持たれていないはず。
「よし、問題ない! 大丈夫!」
考え込んでると、妖精が俊敏に目の前を通り過ぎた。
「問題大ありなんだよ、この馬鹿! 寝坊しやがって! なんで誰も起こしに来ねえんだよ! 今日に限って!」
テオが私の頭上をイライラしながら飛び回っている。
赤ちゃんのおもちゃみたいで少し面白い。
遅刻しても、私が余裕なのは、それが計算の上だからである。
アカツキ君に出会うためには、遅刻しなくてはいけない。
最初のイベントスチルは、パンを加えたままの状態の私と、ぶつかるアカツキ君だ。
さすが王道。
「しょうがないよ、クルト君のお父さんが早朝に帰ってきて、また出張に行ったんだからさ。準備やらなにやらで大忙しだったし、メイドさんも眠いんだよ」
「なんでてめえは余裕なんだよ!」
今から馬車を準備するより、テオに高速魔法を足に掛けてもらい、走った方が早い。
私の足に光りが宿る。
「テオは魔法学校の先生の誰かに、遅刻するかもですって言ってきて!」
テオは頭をかき、大きくため息をついた。
「あーもう! 高速で! 素早く! 安全に! 速やかに追いついてこいよ! ふらふら寄り道して、妖精の国だの魔物の国だの迷い込むんじゃねえぞ!!」
「テオが私の安全を案じてくれている……!」
「クルトとレモネに怒られるからだよ!」
叫ぶと同時にテオは目の前から消えた。
学校に先に走ってくれているのだろう。
妖精単体で走った方が速いから、確かな判断、確かな采配である。さすが私。
そう、これこそ、アカツキ君とのイベントに入るための布石。
テオがいない状況で、アカツキ君と出会う、イベントへの完璧な導入。
私は高速魔法を使い、町をかけるだけである。
おっと、口にフランスパンをくわえるのを忘れずに。
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