わたしの王子の願いごと

高橋央り

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25.わたしの後姿

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「雪だよっ」

遠くでさっきの男の子の喜ぶが聞こえた。

美菜は空を見上げる。

「憲斗が…微笑ってるのかな……。大丈夫だぞって、言ってくれてるのかな…」

美菜は少し微笑む。

たくさんの白い粉雪が舞い降りて来た。

周囲の人々の笑い合う声が聞こえる。

美菜は、まだ止まらない涙を堪えながらも、少し胸を張って、真っ直ぐ1歩1歩進む。

憲斗の分も頑張ろうと思おうと、少し無理しながら考えた美菜だったが、ふと違和感がした。

胸騒ぎがするが、その理由が何なのか全く分からない。

周囲を見渡すと、異変に気付く。

道をゆく人々がぶつかっている!
というか、重なっている。

美菜は周囲の状況が理解できなかった。

また幻覚か何かを見ているかと思い、少し立ち止まり、目を閉じた。

その後、目を開けると、はっと驚く!

美菜の数cm前に、前の人の頭があった。

頭というか、髪の毛だった、女性の髪の毛だ。


いや、違う、このこの髪型、背の低さ、何だか自信のない背中、これは、自分の後ろ姿だ!!


美菜はやっと理解した。

自分が自分の目の前にいる――――!!!!


な、何で、私が、目の前にいるの?!

私が私じゃない?!鏡?!……どういうこと?!!

状況を理解するほど、美菜は分からなくなった。

前にいる自分は、少しずつ前方に進んでいく。

離れれば離れるほど冷静に見れた。

やはり前の人物は、自分だ。

何で私が私から離れて歩いてくの?!

私が死んだ?!いや…違うよね……。

幽体離脱?!……

「はっ!!」

美菜が、さっきまでの疲れと辛さのせいだと思っていた、自分の声が勝手に出たり、手が自動的に動いたりしていた現象を思い出した。

辺りを改めて見渡すと、やはりまだ歪んで見える人がいる。
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