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18. 大好きだ――――――……
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「う、うん。元気だったよ。そっちも元気そう…だね」
美菜はあまりの辛さに俯く。
元気な訳ないじゃん……。
何その指輪…。好きな人がいるなら…、そう言って欲しかった……。
勝手に失踪して、幻想の、夢みたいな王子様になって……。
何年、1人ぼっちで苦しかったと思ってるの…。
はぁぁダメだ…。もう何も分かんない……。
今、人生が終わったよね…。もういいや、涙も、我慢するのもう止めよう…。
何も…意味ないよ……。
「大丈夫?…美菜、ちょっと疲れてる?」
また憲斗は声を出したが、その声が掠れていたので、美菜は少し心配になって顔を上げる。
その瞬間、美菜は憲斗と目が合った。
宝石のように輝く瞳に、胸がキュンとして、美菜の顔は一気に真っ赤になった。
この王子様のような甘いルックス、優しい声、笑い方、夢の世界になっちゃうこの雰囲気…。
あぁ、この人が私の答えだ……。そりゃ変わんないよな…。動けないよな…。
大好きだ――――――――――……
涙ぐんだ目の美菜は、一瞬、憲斗の姿が揺らいでいるように見えた。
そして同時に、美菜は憲斗が少し痩せていることに気付く。
せっかく再会したのに、他の女性との指輪をしていて、もう二度と会えなくなりそうな最愛の人を前に、潰れそうな心臓を押さえ、美菜は白い息に声をのせる。
「だ、大学の時の夢…、今も叶ってないけど、憲斗が、みんなが幸せになる世界に…、したいって言ってたから、私頑張ってるよ…。まぁ全然上手くいかなくて、今も、ちょっと彷徨って歩いてたんだけど…」
美菜は言おう思った言葉が、背筋から出てくるような、不思議な感覚を覚えた。
憲斗は、またそっと微笑む。
美菜は、また震えた声を出す。
「で、出逢えてよかったよ…。え、えっと…色々…、ありがとねっ」
美菜は、今ここで再会できたことだけじゃなく、人生で出逢えてよかったという意味で、言った気がした。
憲斗は、美菜の気持ちを察してか、優しく微笑んだ後、自分の話を始めた。
「東京にね…。引っ越したんだ。家族みんなで…。ま、色々あって………」
美菜は、憲斗は真剣に好きな女性ができて、引っ越したんだろうと予想した。
「あぁそうなんだね。よかったんじゃない…。憲斗が行きたかったなら、どこでも…自由だよ」
あまりその先を、詳しくは聞きたくないと思った美菜は、冷たく流すようにした。
その後、ふたりは少しぎこちないまま、何でもない話をした。
流行りの番組や音楽、ちょっとした悩み、色々話して、自然すぎるから、また何にも言えないまま、木枯らしが吹いた。
憲斗は少し俯いて「…じゃ、じゃぁ…。バイバイ」と言った。
彼の言葉が、まるで永遠の別れのようで、美菜は涙を一粒零す。
「バ…、バイバイ……」
美菜は別の言葉を言おうとしたが、また勝手に言葉が出てしまっていた。
話が終わってしまったので、仕方なく美菜は、憲斗にゆっくりと背を向ける。
本当は、抱きしめてそのまま、永遠に放したくないくらい愛してるのに、何故か冬の乾いた空気の流れるままに、美菜の足は憲斗から離れようと、どんどん進んでしまう。
美菜は自分の泣き声が、心の奥にまで響いたのを感じて、足に力を入れて止まる。
こ、このままじゃ、絶対に後悔する―――――――!!!!
そう思った美菜は、振り返って叫ぶ。
「憲斗――――――っ!!!」
美菜はあまりの辛さに俯く。
元気な訳ないじゃん……。
何その指輪…。好きな人がいるなら…、そう言って欲しかった……。
勝手に失踪して、幻想の、夢みたいな王子様になって……。
何年、1人ぼっちで苦しかったと思ってるの…。
はぁぁダメだ…。もう何も分かんない……。
今、人生が終わったよね…。もういいや、涙も、我慢するのもう止めよう…。
何も…意味ないよ……。
「大丈夫?…美菜、ちょっと疲れてる?」
また憲斗は声を出したが、その声が掠れていたので、美菜は少し心配になって顔を上げる。
その瞬間、美菜は憲斗と目が合った。
宝石のように輝く瞳に、胸がキュンとして、美菜の顔は一気に真っ赤になった。
この王子様のような甘いルックス、優しい声、笑い方、夢の世界になっちゃうこの雰囲気…。
あぁ、この人が私の答えだ……。そりゃ変わんないよな…。動けないよな…。
大好きだ――――――――――……
涙ぐんだ目の美菜は、一瞬、憲斗の姿が揺らいでいるように見えた。
そして同時に、美菜は憲斗が少し痩せていることに気付く。
せっかく再会したのに、他の女性との指輪をしていて、もう二度と会えなくなりそうな最愛の人を前に、潰れそうな心臓を押さえ、美菜は白い息に声をのせる。
「だ、大学の時の夢…、今も叶ってないけど、憲斗が、みんなが幸せになる世界に…、したいって言ってたから、私頑張ってるよ…。まぁ全然上手くいかなくて、今も、ちょっと彷徨って歩いてたんだけど…」
美菜は言おう思った言葉が、背筋から出てくるような、不思議な感覚を覚えた。
憲斗は、またそっと微笑む。
美菜は、また震えた声を出す。
「で、出逢えてよかったよ…。え、えっと…色々…、ありがとねっ」
美菜は、今ここで再会できたことだけじゃなく、人生で出逢えてよかったという意味で、言った気がした。
憲斗は、美菜の気持ちを察してか、優しく微笑んだ後、自分の話を始めた。
「東京にね…。引っ越したんだ。家族みんなで…。ま、色々あって………」
美菜は、憲斗は真剣に好きな女性ができて、引っ越したんだろうと予想した。
「あぁそうなんだね。よかったんじゃない…。憲斗が行きたかったなら、どこでも…自由だよ」
あまりその先を、詳しくは聞きたくないと思った美菜は、冷たく流すようにした。
その後、ふたりは少しぎこちないまま、何でもない話をした。
流行りの番組や音楽、ちょっとした悩み、色々話して、自然すぎるから、また何にも言えないまま、木枯らしが吹いた。
憲斗は少し俯いて「…じゃ、じゃぁ…。バイバイ」と言った。
彼の言葉が、まるで永遠の別れのようで、美菜は涙を一粒零す。
「バ…、バイバイ……」
美菜は別の言葉を言おうとしたが、また勝手に言葉が出てしまっていた。
話が終わってしまったので、仕方なく美菜は、憲斗にゆっくりと背を向ける。
本当は、抱きしめてそのまま、永遠に放したくないくらい愛してるのに、何故か冬の乾いた空気の流れるままに、美菜の足は憲斗から離れようと、どんどん進んでしまう。
美菜は自分の泣き声が、心の奥にまで響いたのを感じて、足に力を入れて止まる。
こ、このままじゃ、絶対に後悔する―――――――!!!!
そう思った美菜は、振り返って叫ぶ。
「憲斗――――――っ!!!」
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