わたしの王子の願いごと

高橋央り

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2.奇跡のような再会

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美菜は、大学の卒業式で遠くから見た、憲斗のサラサラの髪や、
優しくて上品な口元を、ふとリアルに思い出した。

「はぁ…、きっと私の記憶の中で、美化されてるよね…。
こんな超王子風イケメンなんて存在するわけ…、
それがいたから問題なんだよな……」

また白い溜め息を吐く。

いくらでも溢れ出てくる吐息は、憲斗への愛しくも悲しい想いと同じだった。

「届かないし…、忘れられないし…、会えないし…、
てか失踪って一体……」

美菜は、思い切って約3年ぶりに、
LINEのメッセージを入れてみようかと思ったが、その瞬間、胸が苦しくなった。

彼女は、震えて消えそうな声を零す。

「卒業して2カ月後のメッセージが、既読にも…
ならなかったんだもんね……。私のこと、嫌いだったんだ…。
迷惑…だったんだ……。LINE送っちゃだめなんだ…。
ま、届きませんってのが、一番恐いんだけど……」


美菜は、憲斗が大学卒業後、
京都から東京に行ったらしいと噂で聞いたことはあった。

京都で働くと言っていた気がしたのは、
聞き間違いだったのかと、彼女は改めて不思議に思う。

超イケメンが、勉強ばかりしてる私に、
まともに話してくれてた訳じゃなかったのかもしれないと、美菜は思った。

少しマニアックなパソコン用品店に着いた美菜は、
手袋型のワイヤレスのマウスを買った。

袋は要らないと言い、手袋型マウスを、コートのポケットに入れる。

店を出ると、向かいのチョコレート専門店に50mもの行列ができていた。

「あ…、バレンタインが近いんだ……。バレンタイン直前に、
1人で超ハイテクマウス購入って……。完全に終わってる気がする……」

美菜の鼻は、寒さで詰まっていて、甘い香りさえ感じられなかった。


賑わう繁華街だが、美菜とっては、ただの凍えそうな冬だった。

しかし、美菜は普段の倍くらいの人がいるような気がした。

人々の声も、倍聞こえる。

美菜は、カップルや子連れと擦れ違う度に
泣きそうになる自分に向かって小声で話す。

「って、もう乾燥した風で、目潤んでるんですけど…。はは…」

冷たい空気を吸い込んだ瞬間、悲しい仮説が、舞い込んでくる。

「憲斗に…、もう二度と会えないのかな……。
まさか死んじゃったとかじゃ…ないよね……。
ちゃんとフラれてないから、忘れられない…って言い訳か…。
前、見なきゃ…いけないよね…」

美菜は、俯いた顔を上げようとする。


「美菜っ――――…」


背後から聞こえた男の声に、
全身に一気に温もりが流れた気がして、彼女は振り返る。

するとそこには、大学の時のままの、超イケメンの、
最愛の憲斗がいた―――――……
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