11 / 12
シアンとリズバーラ ②
出会いの秘密
しおりを挟む
偶然だった。
ほんの気紛れに、人間の世界を見に行って、そこで見付けた。
母の人間の世界での子孫。
面差しが似ていた。よく笑う子だった。
でも、苦しそうでも有った。
生き辛いと思っているのだろうか。彼女も母と同じように、心も無い相手との子供を、身籠らねばならないのだろうか。
そう思ったら、加護を渡していた。
気付いたら、そう動いていた。
まだあの子が小さな頃に、一度会っただけ。忘れていたら、それはそれで良かった。
「覚えておくんだよ。君の生涯は俺が守る」
なんて甘言なんだろう。
自分でも笑いが込み上げて、あの子の元から去った後、しばらく笑ってた。
同じ血が流れてる。年齢的には孫?曾孫?
どっちだって良いけども。
彼女には教えようか、どうしようか。
そういえば、俺の母親はどうして父に付いて来たんだったか。
アジスタの母は、アジスタを産んでから狂ったらしい。幽閉された場所で、自害したんだってさ。
自害って出来るんだね、俺たちも。
アジスタは血が濃い。だからかな、身籠ってから、どんどん狂ってしまったんだって。
父はそんな同族のことは、何とも思ってなかったのか。いや、そうでもないのかな。
アジスタと俺やリグとの間には、結構な年の差が有る。
ここまで育つと年齢差なんて気にしないけど。
あの子はどう思うだろうか。先祖がまだ生きていて、しかも闇の人間になってるとか聞いたら。
もう成人した女性だから、子ども扱いしたら怒るかな。でも俺にとっては、ちょっとした気紛れで見付けた子ども。
あの子は俺のこと、忘れてなかった。
声をかけたら、一発で俺だってわかったしね。覚えてたら今後も加護をあげよう、ってだけで会いに行ったんだけど……。
人間っていうのは、すぐに育つ。もう成人過ぎたんだから、びっくりだよね。
あぁ、母の血が、途絶えてしまう。
父に付いて来てしまうくらいだから、人間の世界のことなんか気にもしてないかな。
それならそれで良いんだけど。母がそれを嫌がったら、俺の加護は無くさなきゃだなぁ。
取り消しても、良いんだけど……。
母の子孫だから、俺の子を身籠らせても駄目だし。
それに俺との子じゃ、その子はクォーターになって、余計に生き辛くなるね。
あぁ、どうしようか。
たまたま見付けたあの子に、俺の方が囚われたみたい。
光の中で生きれるあの子が羨ましい。
でもそれだけじゃあない。わかってる。
「お前は光を見付けなさい。光を見付けなければ、お前は闇に狂うかもしれない」
そう言ったのは父親だ。
魔物と人間のハーフだから、完全な闇じゃない。だからだろうね。
俺には光が必要だと、父は言ったんだ。
リグもそうかもしれないけど。アイツも多分言われてるし。
アジスタは光なんていらない存在だろうな。
でもグライシズはずっと傍にいるけど。アイツは何だろう?
って、どうでも良いや。同族同士で一緒にいるだけだし。
あの子は俺の光になってくれるだろうか。
光を求めてしまうのは、俺自身の本能なんだろう。
だからそこは別に良い。ああ、そういうものなんだ、って納得した。
あの子を見てからだけど。
焦がれて止まない光が、あの子だったんだ。
さて、だからどうしよう。
俺にとってはあの子は光だし、失くしたくない存在。
でもあの子にとって、俺は何だろうね。
まさか俺がこんなこと考えるようになるなんて、思ってもいなかった。
おっかしいなぁ。気紛れに生きてたはずなのに。
光が無くて、闇に狂っても別に良いやって思ってもいたくらい。気紛れだった。
まぁ、父だって「かもしれない」程度のことだったみたいだし。
ただ本当に、あの子を見て、俺の中で燻ってた闇が晴れたのは事実なんだよね。
まったくもう。どうしたら良いのさ。
いつもなら、リグで遊ぶんだけど。そんな気も起こらないくらい部屋にこもって、あの子のこと考えてる。
馬鹿じゃないの。って自分でも思うんだけど、ねぇ。
人間であるあの子は、いつか必ず俺を置いて逝ってしまう。そんなことはわかってるんだよ。
そこが問題ではないんだ。
俺にとって、あの子が光で有るのは確かだし。
俺さえあの子を見失わなきゃ、このまま生きて行ける気がするんだよね。
問題はさ、あの子の今後。
あの子が子供を身籠るかどうかってこと。
結婚してるんだし、貴族は子どもを欲しがって当然だ。
でもあの子には俺の加護が有るから、子どもが出来ない。そうなると、あの子はどうなる?
離縁何てことは、多分無いだろうけど。
あの子の結婚相手だって、あの子との家の繋がり無くす訳にはいかないだろうし。
あの子の結婚相手が、外に子ども作って、その子どもを引き取ってくれたら、一番なんだよね。
どうやら、外に女作ってるみたいだし。そりゃそうだよね。
不思議には思わないだろうけど、あの子と夜を共にしてないんだから。男だったら、欲求は溜まるさ。
発散先で子ども作って、引き取って育ててくれないかな。そしたら外面上、あの貴族は血を絶やさない。
あの子をあの男にあげるってのは、やっぱり嫌。
あの子も望んでないし。母の血は途絶えるけどさ。そこはきっと許してくれるよね。
馬鹿みたいに考えてるけど、結局はあの子がどうしたいかを聞かなきゃどうしようもない。
ただ、ねぇ。
「あなたは、なぁに?」
小さい頃のあの子の声がよみがえる。
瞬間的に、俺を人間ではないと、わかっているような言葉。
多分無意識だったんだろうけど。
今回会いに行ったけど、俺の外見が変わっていないこと、全然気にもしてなかった。
うーん。あの子は直感的にわかってるんだよね。
俺が人間じゃないって。
まぁそこも含めて、今後どうするか。あの子に聞くしかないかな。
一人で考えてたって、それはただの俺の考えだし。
やっぱりさ、あの子が望むこと、してあげたいんだよね。
ほんの気紛れに、人間の世界を見に行って、そこで見付けた。
母の人間の世界での子孫。
面差しが似ていた。よく笑う子だった。
でも、苦しそうでも有った。
生き辛いと思っているのだろうか。彼女も母と同じように、心も無い相手との子供を、身籠らねばならないのだろうか。
そう思ったら、加護を渡していた。
気付いたら、そう動いていた。
まだあの子が小さな頃に、一度会っただけ。忘れていたら、それはそれで良かった。
「覚えておくんだよ。君の生涯は俺が守る」
なんて甘言なんだろう。
自分でも笑いが込み上げて、あの子の元から去った後、しばらく笑ってた。
同じ血が流れてる。年齢的には孫?曾孫?
どっちだって良いけども。
彼女には教えようか、どうしようか。
そういえば、俺の母親はどうして父に付いて来たんだったか。
アジスタの母は、アジスタを産んでから狂ったらしい。幽閉された場所で、自害したんだってさ。
自害って出来るんだね、俺たちも。
アジスタは血が濃い。だからかな、身籠ってから、どんどん狂ってしまったんだって。
父はそんな同族のことは、何とも思ってなかったのか。いや、そうでもないのかな。
アジスタと俺やリグとの間には、結構な年の差が有る。
ここまで育つと年齢差なんて気にしないけど。
あの子はどう思うだろうか。先祖がまだ生きていて、しかも闇の人間になってるとか聞いたら。
もう成人した女性だから、子ども扱いしたら怒るかな。でも俺にとっては、ちょっとした気紛れで見付けた子ども。
あの子は俺のこと、忘れてなかった。
声をかけたら、一発で俺だってわかったしね。覚えてたら今後も加護をあげよう、ってだけで会いに行ったんだけど……。
人間っていうのは、すぐに育つ。もう成人過ぎたんだから、びっくりだよね。
あぁ、母の血が、途絶えてしまう。
父に付いて来てしまうくらいだから、人間の世界のことなんか気にもしてないかな。
それならそれで良いんだけど。母がそれを嫌がったら、俺の加護は無くさなきゃだなぁ。
取り消しても、良いんだけど……。
母の子孫だから、俺の子を身籠らせても駄目だし。
それに俺との子じゃ、その子はクォーターになって、余計に生き辛くなるね。
あぁ、どうしようか。
たまたま見付けたあの子に、俺の方が囚われたみたい。
光の中で生きれるあの子が羨ましい。
でもそれだけじゃあない。わかってる。
「お前は光を見付けなさい。光を見付けなければ、お前は闇に狂うかもしれない」
そう言ったのは父親だ。
魔物と人間のハーフだから、完全な闇じゃない。だからだろうね。
俺には光が必要だと、父は言ったんだ。
リグもそうかもしれないけど。アイツも多分言われてるし。
アジスタは光なんていらない存在だろうな。
でもグライシズはずっと傍にいるけど。アイツは何だろう?
って、どうでも良いや。同族同士で一緒にいるだけだし。
あの子は俺の光になってくれるだろうか。
光を求めてしまうのは、俺自身の本能なんだろう。
だからそこは別に良い。ああ、そういうものなんだ、って納得した。
あの子を見てからだけど。
焦がれて止まない光が、あの子だったんだ。
さて、だからどうしよう。
俺にとってはあの子は光だし、失くしたくない存在。
でもあの子にとって、俺は何だろうね。
まさか俺がこんなこと考えるようになるなんて、思ってもいなかった。
おっかしいなぁ。気紛れに生きてたはずなのに。
光が無くて、闇に狂っても別に良いやって思ってもいたくらい。気紛れだった。
まぁ、父だって「かもしれない」程度のことだったみたいだし。
ただ本当に、あの子を見て、俺の中で燻ってた闇が晴れたのは事実なんだよね。
まったくもう。どうしたら良いのさ。
いつもなら、リグで遊ぶんだけど。そんな気も起こらないくらい部屋にこもって、あの子のこと考えてる。
馬鹿じゃないの。って自分でも思うんだけど、ねぇ。
人間であるあの子は、いつか必ず俺を置いて逝ってしまう。そんなことはわかってるんだよ。
そこが問題ではないんだ。
俺にとって、あの子が光で有るのは確かだし。
俺さえあの子を見失わなきゃ、このまま生きて行ける気がするんだよね。
問題はさ、あの子の今後。
あの子が子供を身籠るかどうかってこと。
結婚してるんだし、貴族は子どもを欲しがって当然だ。
でもあの子には俺の加護が有るから、子どもが出来ない。そうなると、あの子はどうなる?
離縁何てことは、多分無いだろうけど。
あの子の結婚相手だって、あの子との家の繋がり無くす訳にはいかないだろうし。
あの子の結婚相手が、外に子ども作って、その子どもを引き取ってくれたら、一番なんだよね。
どうやら、外に女作ってるみたいだし。そりゃそうだよね。
不思議には思わないだろうけど、あの子と夜を共にしてないんだから。男だったら、欲求は溜まるさ。
発散先で子ども作って、引き取って育ててくれないかな。そしたら外面上、あの貴族は血を絶やさない。
あの子をあの男にあげるってのは、やっぱり嫌。
あの子も望んでないし。母の血は途絶えるけどさ。そこはきっと許してくれるよね。
馬鹿みたいに考えてるけど、結局はあの子がどうしたいかを聞かなきゃどうしようもない。
ただ、ねぇ。
「あなたは、なぁに?」
小さい頃のあの子の声がよみがえる。
瞬間的に、俺を人間ではないと、わかっているような言葉。
多分無意識だったんだろうけど。
今回会いに行ったけど、俺の外見が変わっていないこと、全然気にもしてなかった。
うーん。あの子は直感的にわかってるんだよね。
俺が人間じゃないって。
まぁそこも含めて、今後どうするか。あの子に聞くしかないかな。
一人で考えてたって、それはただの俺の考えだし。
やっぱりさ、あの子が望むこと、してあげたいんだよね。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
元執着ヤンデレ夫だったので警戒しています。
くまだった
BL
新入生の歓迎会で壇上に立つアーサー アグレンを見た時に、記憶がざっと戻った。
金髪金目のこの才色兼備の男はおれの元執着ヤンデレ夫だ。絶対この男とは関わらない!とおれは決めた。
貴族金髪金目 元執着ヤンデレ夫 先輩攻め→→→茶髪黒目童顔平凡受け
ムーンさんで先行投稿してます。
感想頂けたら嬉しいです!
真冬の痛悔
白鳩 唯斗
BL
闇を抱えた王道学園の生徒会長、東雲真冬は、完璧王子と呼ばれ、真面目に日々を送っていた。
ある日、王道転校生が訪れ、真冬の生活は狂っていく。
主人公嫌われでも無ければ、生徒会に裏切られる様な話でもありません。
むしろその逆と言いますか·····逆王道?的な感じです。
美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした
亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。
カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。
(悪役モブ♀が出てきます)
(他サイトに2021年〜掲載済)
生まれ変わっても一緒にいたい人
把ナコ
BL
わたしは今日、死んだ。そして、生まれた。
どうやらわたしは記憶を持ったまま転生したらしい。
流行性肺炎で命を落とした女が異世界で男になって生まれ変わった。
そして前世で大好きだった旦那様と出会う。せつなくもやさしい愛のお話。
アレク×ヨシュア
小説家になろうサイトにて先行掲載中です。先が気になる方はそちらへ♪
https://novel18.syosetu.com/n5937gk/
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる