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第一部
寝子山海斗! 見参!
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突如、宇宙から隕石に乗って謎の知的生命体が人類を襲う! なあんて、SF漫画や小説などでよくある展開だが、実際に起こるとは誰も思いもしなかった。所詮は空想、所詮は妄想。
しかし2060年にそれは現実となった。大規模な飛翔体が宇宙から太平洋目掛けて激突し、津波が起こって海岸沿いの家や人類は大迷惑を被ったし、なんならたくさん死んだ。
そしてよくある三文小説の内容と同じく、隕石には人知を超えた謎の生命体が引っ付いていた。この生命体は人間以外のあらゆるものに寄生する。例えば昨日のヘリコプターだとか、チンアナゴだとか。横断歩道の白線に寄生してナスカの地上絵を再現していた時は、一課の仲間で撮影大会を開かせていただいた。もちろんその後駆除した(白線を地面ごと粉々に砕いた)が。
まあそんな感じで、謎の生命体は瞬く間に地球中に勢力を拡大させた。そんで謎の生命体を政府は『Gift・from・heven』と命名した。なんだよ天からの贈り物って。こんなご迷惑な贈り物いらねえっての。熨斗付けて返品してやるわ。
ちなみにGFHと略しているが、日本人はみんなGと読んでいる。もちろんゴキブリという意味を込めて。
「寝子山ー、てめぇまた遅刻か」
本庁に出勤した瞬間、部長の雅光一が俺に剣呑な視線を飛ばしてきた。俺は欠伸をしながら「違うっすよ」と弁明する。
「郵便ポストがGに乗っ取られて襲いかかってきたんですよ。あー、朝からついてないっすわ」
「そう言えばそんな通報が入っていたな……」
雅部長は腕を組んで思案した。俺はここぞとばかりに軽口を叩く。だってこれが生きがいなもので。
「ああん部長、ついに認知症っすか? 俺のことは忘れてくれていいですけど、給料のことは忘れないでくださいよぉ?」
「お前、明日から来なくていいぞ」
「はい嘘です調子乗りましたサーセン」
俺は雅部長に平謝りをして、自分のデスクへとそそくさ移動した。ユキくんがくれた、狸の置物が飾ってある、尊いデスクだ。狸はブッサイクなツラで毎日俺を馬鹿にするような目で見てくるが、ユキくんがくれたと言う事実がプライスレスなので許す。
「せんぺえ、郵便ポストのGをどうやって倒したんすか」
椅子に腰掛けたタイミングで、隣のデスクを使っている後輩くんがノートパソコンに視線を固定したまま、声をかけてきた。彼の名前は影本冷。頭は桜色のふわふわとした髪に覆われているのに、性格と表情は名前のとおり冷たい。矛盾を一身に背負った罪な男である。
俺はふふんと鼻を鳴らして腕を組んだ。
「よくぞ聞いてくれた! ポストに追いかけられていた俺は赤信号に行手を阻まれてしまってな……決死の覚悟で信号を無視したのだ!」
そして椅子から立ち上がり、仰々しく両手を広げて影本くんに自慢する。
「俺の予想通り大型トラックがやってきてポストのGと接触し、Gは見事に粉砕した!」
「公安局の職員が信号無視すんな。てかそれ、運転手どうなったんすか」
影本くんがタイピングしながら尋ねてくる。
「あーうん、なんかちょっと怪我してたかな。フロントガラスに突っ込んで顔面血まみれになってたわ」
「ちょっととは」
「細かいことは気にすんなって! トラックの兄ちゃんはGを倒した英雄なんだから!」
俺は影本くんの背中をバシバシ叩いた。影本くんは「クソが! 入力ミスったじゃねーか!」と口汚く俺を罵ってきたが、どこ吹く風と無視してまた椅子に座る。
「寝子山、今の話報告書にまとめて提出するように」
すかさず雅部長が指示を出してきた。俺は「へいへい」と軽く返事をして、デスクの端に寄せてあったノートパソコンを開いた。
「こういうチマチマした作業向いてねぇんだけどなあ」
電源がつくまで暇なので、つい愚痴をぼやいてしまう。
「おしゃべりや外回りは大好きだけど、デスクワークは大嫌い。ほんと仕事できない人間ですね」
先程の恨みも兼ねてか、影本くんが嫌味を言ってくる。俺は「心外だ!」と反論した。
「君は何を聞いていたのかね? 俺は今日Gと死闘を繰り広げて勝利した! つまり職務を全うしたのだよ! 業務時間外に」
「バカっすね。Gを倒したのはトラックの運転手っすよ。せんぺえは無様に逃げてただけじゃないっすか」
「戦略的撤退だ」
「モノは言いようっすね」
影本くんは俺を煽りまくる。彼の態度は非常に目に余るので、ここは先輩らしく後輩に喝をいれなければ!……とは思ったが、結局何もしなかった。だって郵便ポスト(G)を倒したのがトラックの兄ちゃんだというのは、まごうことなき事実だ。影本くんの言う通り、俺は尻尾巻いて逃げてただけである。
「仕方ねぇだろぉ。出勤前で丸腰だったんだからぁ」
俺は立ち上がったノートパソコンを閉じてその上に顔を伏せた。当然だが、職員による犯罪行為を防ぐために、業務時間外での武器の携帯は禁止されている。俺は凡庸な一般人なので、武器がなけりゃ戦えないのさ。
「なんでPじゃないのに一課に所属してんですか。せんぺえお荷物っすよ」
そう言って影本くんがトドメを刺してきた。俺は半泣きになりながら「うるせぇ」となさけなく呟いた。
GFH出現後、政府はある事実に気がついた。GFHは人間には寄生しないのだ。どうしてなのか、お偉いさんや科学者たちは頭を捻らせたが、答えを導き出せず。意外にも正解に辿り着いたのは怪しげな宗教団体お抱えの違法研究所の所長だった。
彼はお茶の間のテレビをハッキングし世に宣言した。「我々人間がGFHの魔の手に脅かされずにすんでいるのは、神が私たち人類にのみ与えた能力のおかげなのです。それすなわち『第六感』。狩りをする猛獣たちが持つ勘などとは全く異なる、人類だけが持つ力です」
と、こんな感じで。そりゃあ最初は誰も信じなかった。第六感? 何それ? 霊感のこと? なんて、あの所長さんは主婦の間じゃ笑い物にされていたし、政府からは逸脱した世論操作の罪でお尋ね者扱いを受けた。
しかし怪しげな宗教団体も所長さんも屈することなく、日夜警察と鬼ごっこを繰り広げ、さらには研究に勤しみ、そしてついに完成させてしまったのだ。人間の『第六感』を目覚めさせる薬を。
怪しげな宗教団体と所長さんは両手を上げて喜んだ。喜ぶだけでは飽き足らず、あろうことか政府に薬を売りつけ、組織としての権限を与えるよう要求した。無論政府のお偉いサマは取り付く島もなく要求を跳ね除けていたが、GFHの被害が広がり死者の数が日に日に増えていくにつれ、意見を揺るがし始め、最終的には承諾してしまった。
そして公安局保安一課が構築され、公安局の職員のみが投薬で『第六感』、すなわちPとしてGFHに対抗する力を得た。──ただ一つ欠点があり、『第六感』を持っているにも関わらず、投薬でPとしての能力を目覚めさせることができない職員もそこそこ存在していた。例えば俺とかね。
そういう職員は戦闘部隊の一課ではなく、調査部隊の二課に配属される。
「俺は特別だからいいの。はぁぁ、影本くんは強い『第六感』を持ってて良いよねぇ」
「サイコキネシスのことですか? まあ戦闘向きですね」
「一課の構成員の半分はサイコキネシス持ちだなんて、俺の肩身は狭いよ」
とほほ、俺は脱力感に苛まれる。影本くんは「ご愁傷様」と冷たくあしらってきた。なんてひどい後輩なんだ!
「おおぉん! 冷酷が人の皮被って隣に座ってるよぉ! 怖い怖い!」
「今すぐ潰されたいみたいっすね。部長、P使用の許可を」
影本くんはお手本のように美しく右手を上げて、雅部長に申し出た。しかしお邪魔虫よろしく黒電話が鳴り響き、雅部長は影本くんを無視して受話器を持ち上げた。
「はい公安局保安一課」
雅部長は律儀に受話器を耳に当てている。まあ発案者本人が受話器を使用していなかったら、今頃一課の職員全員からバッシングを受けまくっていただろう。俺だってこんなクソだるいオプション品を上にかけあった雅部長に、長々と文句を連ねたいのだから。
「寝子山、影本、3番地でGが出た。電信柱のGだそうだ。すでに一般人6名が感電、死亡している。早急に現場に向かえ」
雅部長は簡潔に状況を述べると、また黒電話の向こう側にいる一般人に話しかけた。俺はガバリと身体を起こし椅子から立ち上がる。ふふふ、俺の出番が来たようだ。
「っしゃー! おしゃべりや外回りは大好きだけど、デスクワークは大嫌いなお兄さんが、Gを駆除しに向かいますぜ!」
声を張り上げる俺の隣で、影本くんは口の端を引き攣らせた。
「……根に持つ男は嫌われますよ」
「ユキくんはそんな俺の性格を含めて愛してくれているから嫌われませんー」
「うっっっざ! せんぺえまじ鬱陶しいわ」
影本くんは嫌悪感丸出しの表情になった。俺は白目を剥いてべえっと舌を出すと、廊下へ続く扉に向かった。
「寝子山」
ドアノブに手をかけた時、雅部長が俺に声をかけた。
「武器を忘れるなよ」
「もちろんですよぉ!」
嬉々として返答した俺は、六階、廊下の突き当たりにある倉庫の扉を開いた。中にはマシンガンやらロケットランチャーやら、はたまた名称が全くわからない歪な武器たちが今か今かと俺を待っていた。
Pじゃない? 能力がない? お荷物? ノンノン。人間には知恵があり、その集大成が時には人命を奪い、時には人命を守る、武器を生み出したのさ。そして俺は、それを誰よりも使いこなし、成果を挙げて、一課の椅子を手に入れた。
「影本くんよぉ、何か言いたいことがあるなら今言っときな。一時間後には俺は死体になってるかもしれないからなぁ」
俺は一番手前にあった手榴弾の詰め込まれたリュックを持ち上げる。後ろから追いかけてきた影本くんは武器を選ぶ俺を見て、大きなため息を吐いた。
「アンタのバディ、本当に疲れる」
しかし2060年にそれは現実となった。大規模な飛翔体が宇宙から太平洋目掛けて激突し、津波が起こって海岸沿いの家や人類は大迷惑を被ったし、なんならたくさん死んだ。
そしてよくある三文小説の内容と同じく、隕石には人知を超えた謎の生命体が引っ付いていた。この生命体は人間以外のあらゆるものに寄生する。例えば昨日のヘリコプターだとか、チンアナゴだとか。横断歩道の白線に寄生してナスカの地上絵を再現していた時は、一課の仲間で撮影大会を開かせていただいた。もちろんその後駆除した(白線を地面ごと粉々に砕いた)が。
まあそんな感じで、謎の生命体は瞬く間に地球中に勢力を拡大させた。そんで謎の生命体を政府は『Gift・from・heven』と命名した。なんだよ天からの贈り物って。こんなご迷惑な贈り物いらねえっての。熨斗付けて返品してやるわ。
ちなみにGFHと略しているが、日本人はみんなGと読んでいる。もちろんゴキブリという意味を込めて。
「寝子山ー、てめぇまた遅刻か」
本庁に出勤した瞬間、部長の雅光一が俺に剣呑な視線を飛ばしてきた。俺は欠伸をしながら「違うっすよ」と弁明する。
「郵便ポストがGに乗っ取られて襲いかかってきたんですよ。あー、朝からついてないっすわ」
「そう言えばそんな通報が入っていたな……」
雅部長は腕を組んで思案した。俺はここぞとばかりに軽口を叩く。だってこれが生きがいなもので。
「ああん部長、ついに認知症っすか? 俺のことは忘れてくれていいですけど、給料のことは忘れないでくださいよぉ?」
「お前、明日から来なくていいぞ」
「はい嘘です調子乗りましたサーセン」
俺は雅部長に平謝りをして、自分のデスクへとそそくさ移動した。ユキくんがくれた、狸の置物が飾ってある、尊いデスクだ。狸はブッサイクなツラで毎日俺を馬鹿にするような目で見てくるが、ユキくんがくれたと言う事実がプライスレスなので許す。
「せんぺえ、郵便ポストのGをどうやって倒したんすか」
椅子に腰掛けたタイミングで、隣のデスクを使っている後輩くんがノートパソコンに視線を固定したまま、声をかけてきた。彼の名前は影本冷。頭は桜色のふわふわとした髪に覆われているのに、性格と表情は名前のとおり冷たい。矛盾を一身に背負った罪な男である。
俺はふふんと鼻を鳴らして腕を組んだ。
「よくぞ聞いてくれた! ポストに追いかけられていた俺は赤信号に行手を阻まれてしまってな……決死の覚悟で信号を無視したのだ!」
そして椅子から立ち上がり、仰々しく両手を広げて影本くんに自慢する。
「俺の予想通り大型トラックがやってきてポストのGと接触し、Gは見事に粉砕した!」
「公安局の職員が信号無視すんな。てかそれ、運転手どうなったんすか」
影本くんがタイピングしながら尋ねてくる。
「あーうん、なんかちょっと怪我してたかな。フロントガラスに突っ込んで顔面血まみれになってたわ」
「ちょっととは」
「細かいことは気にすんなって! トラックの兄ちゃんはGを倒した英雄なんだから!」
俺は影本くんの背中をバシバシ叩いた。影本くんは「クソが! 入力ミスったじゃねーか!」と口汚く俺を罵ってきたが、どこ吹く風と無視してまた椅子に座る。
「寝子山、今の話報告書にまとめて提出するように」
すかさず雅部長が指示を出してきた。俺は「へいへい」と軽く返事をして、デスクの端に寄せてあったノートパソコンを開いた。
「こういうチマチマした作業向いてねぇんだけどなあ」
電源がつくまで暇なので、つい愚痴をぼやいてしまう。
「おしゃべりや外回りは大好きだけど、デスクワークは大嫌い。ほんと仕事できない人間ですね」
先程の恨みも兼ねてか、影本くんが嫌味を言ってくる。俺は「心外だ!」と反論した。
「君は何を聞いていたのかね? 俺は今日Gと死闘を繰り広げて勝利した! つまり職務を全うしたのだよ! 業務時間外に」
「バカっすね。Gを倒したのはトラックの運転手っすよ。せんぺえは無様に逃げてただけじゃないっすか」
「戦略的撤退だ」
「モノは言いようっすね」
影本くんは俺を煽りまくる。彼の態度は非常に目に余るので、ここは先輩らしく後輩に喝をいれなければ!……とは思ったが、結局何もしなかった。だって郵便ポスト(G)を倒したのがトラックの兄ちゃんだというのは、まごうことなき事実だ。影本くんの言う通り、俺は尻尾巻いて逃げてただけである。
「仕方ねぇだろぉ。出勤前で丸腰だったんだからぁ」
俺は立ち上がったノートパソコンを閉じてその上に顔を伏せた。当然だが、職員による犯罪行為を防ぐために、業務時間外での武器の携帯は禁止されている。俺は凡庸な一般人なので、武器がなけりゃ戦えないのさ。
「なんでPじゃないのに一課に所属してんですか。せんぺえお荷物っすよ」
そう言って影本くんがトドメを刺してきた。俺は半泣きになりながら「うるせぇ」となさけなく呟いた。
GFH出現後、政府はある事実に気がついた。GFHは人間には寄生しないのだ。どうしてなのか、お偉いさんや科学者たちは頭を捻らせたが、答えを導き出せず。意外にも正解に辿り着いたのは怪しげな宗教団体お抱えの違法研究所の所長だった。
彼はお茶の間のテレビをハッキングし世に宣言した。「我々人間がGFHの魔の手に脅かされずにすんでいるのは、神が私たち人類にのみ与えた能力のおかげなのです。それすなわち『第六感』。狩りをする猛獣たちが持つ勘などとは全く異なる、人類だけが持つ力です」
と、こんな感じで。そりゃあ最初は誰も信じなかった。第六感? 何それ? 霊感のこと? なんて、あの所長さんは主婦の間じゃ笑い物にされていたし、政府からは逸脱した世論操作の罪でお尋ね者扱いを受けた。
しかし怪しげな宗教団体も所長さんも屈することなく、日夜警察と鬼ごっこを繰り広げ、さらには研究に勤しみ、そしてついに完成させてしまったのだ。人間の『第六感』を目覚めさせる薬を。
怪しげな宗教団体と所長さんは両手を上げて喜んだ。喜ぶだけでは飽き足らず、あろうことか政府に薬を売りつけ、組織としての権限を与えるよう要求した。無論政府のお偉いサマは取り付く島もなく要求を跳ね除けていたが、GFHの被害が広がり死者の数が日に日に増えていくにつれ、意見を揺るがし始め、最終的には承諾してしまった。
そして公安局保安一課が構築され、公安局の職員のみが投薬で『第六感』、すなわちPとしてGFHに対抗する力を得た。──ただ一つ欠点があり、『第六感』を持っているにも関わらず、投薬でPとしての能力を目覚めさせることができない職員もそこそこ存在していた。例えば俺とかね。
そういう職員は戦闘部隊の一課ではなく、調査部隊の二課に配属される。
「俺は特別だからいいの。はぁぁ、影本くんは強い『第六感』を持ってて良いよねぇ」
「サイコキネシスのことですか? まあ戦闘向きですね」
「一課の構成員の半分はサイコキネシス持ちだなんて、俺の肩身は狭いよ」
とほほ、俺は脱力感に苛まれる。影本くんは「ご愁傷様」と冷たくあしらってきた。なんてひどい後輩なんだ!
「おおぉん! 冷酷が人の皮被って隣に座ってるよぉ! 怖い怖い!」
「今すぐ潰されたいみたいっすね。部長、P使用の許可を」
影本くんはお手本のように美しく右手を上げて、雅部長に申し出た。しかしお邪魔虫よろしく黒電話が鳴り響き、雅部長は影本くんを無視して受話器を持ち上げた。
「はい公安局保安一課」
雅部長は律儀に受話器を耳に当てている。まあ発案者本人が受話器を使用していなかったら、今頃一課の職員全員からバッシングを受けまくっていただろう。俺だってこんなクソだるいオプション品を上にかけあった雅部長に、長々と文句を連ねたいのだから。
「寝子山、影本、3番地でGが出た。電信柱のGだそうだ。すでに一般人6名が感電、死亡している。早急に現場に向かえ」
雅部長は簡潔に状況を述べると、また黒電話の向こう側にいる一般人に話しかけた。俺はガバリと身体を起こし椅子から立ち上がる。ふふふ、俺の出番が来たようだ。
「っしゃー! おしゃべりや外回りは大好きだけど、デスクワークは大嫌いなお兄さんが、Gを駆除しに向かいますぜ!」
声を張り上げる俺の隣で、影本くんは口の端を引き攣らせた。
「……根に持つ男は嫌われますよ」
「ユキくんはそんな俺の性格を含めて愛してくれているから嫌われませんー」
「うっっっざ! せんぺえまじ鬱陶しいわ」
影本くんは嫌悪感丸出しの表情になった。俺は白目を剥いてべえっと舌を出すと、廊下へ続く扉に向かった。
「寝子山」
ドアノブに手をかけた時、雅部長が俺に声をかけた。
「武器を忘れるなよ」
「もちろんですよぉ!」
嬉々として返答した俺は、六階、廊下の突き当たりにある倉庫の扉を開いた。中にはマシンガンやらロケットランチャーやら、はたまた名称が全くわからない歪な武器たちが今か今かと俺を待っていた。
Pじゃない? 能力がない? お荷物? ノンノン。人間には知恵があり、その集大成が時には人命を奪い、時には人命を守る、武器を生み出したのさ。そして俺は、それを誰よりも使いこなし、成果を挙げて、一課の椅子を手に入れた。
「影本くんよぉ、何か言いたいことがあるなら今言っときな。一時間後には俺は死体になってるかもしれないからなぁ」
俺は一番手前にあった手榴弾の詰め込まれたリュックを持ち上げる。後ろから追いかけてきた影本くんは武器を選ぶ俺を見て、大きなため息を吐いた。
「アンタのバディ、本当に疲れる」
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